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第2章 久瀬玲華
それぞれの決意②
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「凛はさ、初めて向き合ったんだよ。自分の弱さに。今はまだ受け入れたくなくて自分を責めてるんだろうけど……何も、玲華みたいな強さだけが強さじゃない。今までの凛みたいに強がって自分を叱咤激励していくのだけが強さじゃない……自分の弱さを受け入れてから進むのも、強さの一つ」
だから。
「お互い支え合って縋り合ってたけどさ……俺は、もういい」
俺は支えてもらわなくていい。
「俺が一方的に凛を支えたい」
俺には凛が必要で、凛には俺が必要……もうそんな考え方はやめよう。
縋り合いは何も産まない。
そうではなく……もっと建設的な関係でいたい。俺が凛を支えることが、俺にとっての強さの証なのかもしれない。そんな考えだった。
凛は瞳を伏せて下を向いたかと思うと、俺の胸に軽く自らの額をぶつけてきた。
「……何よ、それ」
鼻を鳴らして、少し可笑しそうに笑った。
「そんなのただのお荷物じゃない……そんなの嫌」
「凛……」
「私だってちゃんと自分の足で立ちたい。私だって翔くんを支えたい」
髪を撫でる。
凛の髪は柔らかくて、サラサラで、良い匂いがするから好きだ。
「私も頑張るからさ……こんなかっこ悪いとこ見せたまま終わらないから」
ぎゅっと、凛は俺の服を掴んで、俺を見上げてくる。
その瞳には迷いはなく、先ほどの弱さや怯えはなかった。
「翔くんは知らないかもしれないけどさ……私、本当はもっとかっこいい女なんだぞ」
冗談っぽく、笑って彼女は言った。
素敵な笑顔だった。
今までの様に弱々しい笑顔でもなく、いつか純哉に借りた雑誌で見たことがある様な笑顔ではなく……きっと、心の底から浮かんだ笑顔。彼女の本音。
「別に俺はどっちでもいいよ」
凛は凛だから。
強がろうが弱かろうが、かっこよかろうがかっこわるかろうが、変わらない。
「ありがとう……」
凛は首に腕を回して抱きついてきた。
ふわりと全身に凛の香りが覆う。
「ねえ、一つだけ教えて」
「なに?」
「玲華の事……好き?」
予想外の質問だった。
「好きだったよ」
昔は、凄く好きだった。きっと、世界で誰よりも彼女の事が好きだった。
「でも、今は違うかな。昔の感情とか思い出とか混じってくるから解らなくなる時もあるんだけど……今好きかどうかって訊かれると、多分、好きじゃない」
今は凛が好きだから。心の中でそう付け足す。
「そっか……じゃあ、信じる」
見つめ合って、お互いにくすりと笑って、どちらともなく唇を合わせて、またお互い照れ笑い。
「もし、中学の時塾で私と出会ってたらどうだった?」
「あー……」
多分、その時だったら見向きもしなかったんじゃないかな、と思う。
当時の俺は残念なくらいに玲華しか見てなかった。
「あっ、今『その時だと好きにならなかった』って思ったでしょ!?」
「…………」
だからその鋭さは発揮しないでくれ。
「いいよ、知ってたから」
言って、お互いに笑う。
どうやら見抜かれてしまったようだ。こういう鋭さが戻ってきたあたり、凛も大分復活してきたのかもしれない。
「愛梨と純哉君はなにしてるかな?」
「あの二人? 多分俺の部屋で暇してるよ」
「じゃあ、今から行かない?」
「そうだな。二人共心配してるだろうし」
「あ、ちょっと待って」
凛は立ち上がって鞄の前でしゃがみこんで、中から手鏡を取り出し、自分の顔をチェックし始めた。「あちゃー、目が赤くなってる」とかぶつぶつ文句を言っていたが、元気そうなので微笑ましくなる。さっき部屋で沈み込んでいた凛と同一人物とは思えない。
(……まあ)
本音を言うと、もう少しこうして凛と二人きりでイチャつきたかったのだけど。
「よし、行こっ」
凛が準備万端という感じで立ち上がったので、俺も頷き、立ち上がって部屋を出た。
「あっ。もしかして、もっと二人でいたかった?」
鍵を掛けている最中、不意に凛は言った。
図星過ぎて「うっ」と変な声が出たのを聞くと、彼女は悪戯気に笑っていた。
「だーめ。せっかくの修学旅行だしさ、皆とも思い出作りしたいじゃん?」
まあ、俺もそう思ったから異議申し立てをしなかったのだけれど。
「だから……また今度ね♪」
パチリとウィンクして、凛は軽い足取りで廊下を歩いていく。
なんか立場逆転してないか。いや、構わないんだけど。
なにより凛が元気になってくれて良かった。
苦笑しつつ、俺は凛を追った。
だから。
「お互い支え合って縋り合ってたけどさ……俺は、もういい」
俺は支えてもらわなくていい。
「俺が一方的に凛を支えたい」
俺には凛が必要で、凛には俺が必要……もうそんな考え方はやめよう。
縋り合いは何も産まない。
そうではなく……もっと建設的な関係でいたい。俺が凛を支えることが、俺にとっての強さの証なのかもしれない。そんな考えだった。
凛は瞳を伏せて下を向いたかと思うと、俺の胸に軽く自らの額をぶつけてきた。
「……何よ、それ」
鼻を鳴らして、少し可笑しそうに笑った。
「そんなのただのお荷物じゃない……そんなの嫌」
「凛……」
「私だってちゃんと自分の足で立ちたい。私だって翔くんを支えたい」
髪を撫でる。
凛の髪は柔らかくて、サラサラで、良い匂いがするから好きだ。
「私も頑張るからさ……こんなかっこ悪いとこ見せたまま終わらないから」
ぎゅっと、凛は俺の服を掴んで、俺を見上げてくる。
その瞳には迷いはなく、先ほどの弱さや怯えはなかった。
「翔くんは知らないかもしれないけどさ……私、本当はもっとかっこいい女なんだぞ」
冗談っぽく、笑って彼女は言った。
素敵な笑顔だった。
今までの様に弱々しい笑顔でもなく、いつか純哉に借りた雑誌で見たことがある様な笑顔ではなく……きっと、心の底から浮かんだ笑顔。彼女の本音。
「別に俺はどっちでもいいよ」
凛は凛だから。
強がろうが弱かろうが、かっこよかろうがかっこわるかろうが、変わらない。
「ありがとう……」
凛は首に腕を回して抱きついてきた。
ふわりと全身に凛の香りが覆う。
「ねえ、一つだけ教えて」
「なに?」
「玲華の事……好き?」
予想外の質問だった。
「好きだったよ」
昔は、凄く好きだった。きっと、世界で誰よりも彼女の事が好きだった。
「でも、今は違うかな。昔の感情とか思い出とか混じってくるから解らなくなる時もあるんだけど……今好きかどうかって訊かれると、多分、好きじゃない」
今は凛が好きだから。心の中でそう付け足す。
「そっか……じゃあ、信じる」
見つめ合って、お互いにくすりと笑って、どちらともなく唇を合わせて、またお互い照れ笑い。
「もし、中学の時塾で私と出会ってたらどうだった?」
「あー……」
多分、その時だったら見向きもしなかったんじゃないかな、と思う。
当時の俺は残念なくらいに玲華しか見てなかった。
「あっ、今『その時だと好きにならなかった』って思ったでしょ!?」
「…………」
だからその鋭さは発揮しないでくれ。
「いいよ、知ってたから」
言って、お互いに笑う。
どうやら見抜かれてしまったようだ。こういう鋭さが戻ってきたあたり、凛も大分復活してきたのかもしれない。
「愛梨と純哉君はなにしてるかな?」
「あの二人? 多分俺の部屋で暇してるよ」
「じゃあ、今から行かない?」
「そうだな。二人共心配してるだろうし」
「あ、ちょっと待って」
凛は立ち上がって鞄の前でしゃがみこんで、中から手鏡を取り出し、自分の顔をチェックし始めた。「あちゃー、目が赤くなってる」とかぶつぶつ文句を言っていたが、元気そうなので微笑ましくなる。さっき部屋で沈み込んでいた凛と同一人物とは思えない。
(……まあ)
本音を言うと、もう少しこうして凛と二人きりでイチャつきたかったのだけど。
「よし、行こっ」
凛が準備万端という感じで立ち上がったので、俺も頷き、立ち上がって部屋を出た。
「あっ。もしかして、もっと二人でいたかった?」
鍵を掛けている最中、不意に凛は言った。
図星過ぎて「うっ」と変な声が出たのを聞くと、彼女は悪戯気に笑っていた。
「だーめ。せっかくの修学旅行だしさ、皆とも思い出作りしたいじゃん?」
まあ、俺もそう思ったから異議申し立てをしなかったのだけれど。
「だから……また今度ね♪」
パチリとウィンクして、凛は軽い足取りで廊下を歩いていく。
なんか立場逆転してないか。いや、構わないんだけど。
なにより凛が元気になってくれて良かった。
苦笑しつつ、俺は凛を追った。
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