想い出と君の狭間で

九条蓮@㊗再重版㊗書籍発売中

文字の大きさ
72 / 192
第2章 久瀬玲華

玲華③

しおりを挟む
「少なくとも中学の時の凛ならそんなこと言わなかった。立ち向かってた……だから私は、あなたの方がこの仕事に向いてると思った」

 凛が驚いた様に顔を上げる。
 玲華の真意は読み取れない。だが、もしかすると……玲華がモデルをやめたのは、凛に対する情けなんかではなかったのかもしれない。暇潰しで仕事をこなしていた玲華と、一生懸命取り組んでいた凛……玲華は玲華なりに、そんな凛を評価していたのだろうか。

「でも、まあ……私の見当違いだったみたい。あなたには向いてないみたいだから辞めて正解だったかもね。プロ意識なんて何も持ってない……私、ずっと言ってなかった? 自覚を持てって」

 とことん見下した言い方。きっと、誰が見ても玲華の言う事は正しい。凛のやった事で、会社が傾いたのも事実なのだろう。たくさんの人が迷惑を被ったのもおそらく事実だ。
 だが、そんな言い方しかできない玲華に沸々と怒りが沸いてきた。こいつはこんなに嫌な奴だっただろうか? 少なくとも……こんなに人を故意で傷つける奴じゃなかった。
 凛は反論するでもなく、弱々しく玲華を見つめた。

「そう、その瞳。あなた、いつからそんな弱くなったの? ここまで言われて、どうして黙ってるの? 何でそんな媚びる様な顔してるの……? 最低。あり得ない。まさかリンが私の一番嫌いなタイプの人間だったなんて」
「……ごめん」

 凛は顔を伏せてうなだれる。

「謝るな!」

 そんな凛に怒りを抑えられなかったのか、玲華の声が荒くなる。

「自分に自信無いくせに、何でこの仕事やってたの? 何なの? 何がしたかったの?」
「やめろ、玲華」

 玲華がつかみかからん勢いだったので、再び凛の間に入る。
 死体に鞭を打っているようで、もう見ていられなかった。もう勝負はついている。どっちが正しいかなんて、凛自身もよく解っているのだ。

「そういうショーは? どうして長野県なんかに?」

 詰問するかの様な口調で玲華はこちらに視線を向けた。
 厳しい目つきだった。
 玲華のこんな目は見たことが無かった。

「親の転勤で。俺の意思じゃない」

 嘘だ。俺の意思だった。

「……ほー?」

 呆れたような、拗ねたような……彼女が機嫌が悪くなった時にする表情をこちらに向けた。
 凛に向けていた敵意があるものとは違っていた。それが耐えられなくて、俺も視線を玲華から外した。
 なんでこうなってしまったのだろうか。俺達は絶対に会うべきじゃなかったのに。

「お似合いね……あなた達」
「え……?」

 意外な言葉に、凛が顔を恐る恐る上げる。

「嫌な事から逃げて、戦う事から逃げて……本当にお似合い」

 そこに嘲笑の響きは無かった。むしろ、憐れみと落胆の視線。
 ──じゃあ、逃亡者同盟結ぶ?
 凛のそんな言葉が脳裏にふと蘇った。そういえば、俺達は出会った時から、逃亡者だった。

「私が好きだったリンもショーも、もう居ないんだね」

 悲しそうに呟いた。

「二人共上を向いてた。前を見てた。私なんかより、よっぽど努力家だった。リンもショーも……私は尊敬してた」

 違う。俺達は上を向いていたわけでも、前を見ていたわけでもない。
 お前を越えたかっただけだ。お前を見ていただけだ。
 そして俺は、そして凛は、お前を越える事を諦めた。
 それだけだ。

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません

竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

失恋中なのに隣の幼馴染が僕をかまってきてウザいんですけど?

さいとう みさき
青春
雄太(ゆうた)は勇気を振り絞ってその思いを彼女に告げる。 しかしあっさりと玉砕。 クールビューティーで知られる彼女は皆が憧れる存在だった。 しかしそんな雄太が落ち込んでいる所を、幼馴染たちが寄ってたかってからかってくる。 そんな幼馴染の三大女神と呼ばれる彼女たちに今日も翻弄される雄太だったのだが…… 病み上がりなんで、こんなのです。 プロット無し、山なし、谷なし、落ちもなしです。

処理中です...