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第1章 雨宮凛
怪我の功名
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翌日、背中の痛みに何とか耐えながら、俺は学校で授業を受けていた。
原因は、もちろん昨日の町での凛救出作戦だ。しゃがんで凛を人ごみから引っ張り出していた際、凛を庇いながら移動していたせいか、背中に予想以上のダメージを受けていた。人間の膝ってのはどうしてあんなに硬いのか、謎だ。
逃げていた時はあまり気にならなかったが、電車に乗ったあたりから徐々に痛みが強く出てきて、家に帰った頃には愛想笑いすらできなかった。鏡で背中を見てみると、青あざがたくさんできていて、至るところが内出血している。幸い切り傷はないので出血はしていないが、かなり痛い。
(そりゃあんだけ踏みつけられたらなぁ)
人生であれだけ踏まれる経験もないので、貴重と言えば貴重な体験なのだが、生憎と俺には踏まれて喜ぶ性癖はなかったらしい。ただただ痛いだけだった。
とりあえず、凛の細い身体ならどんな怪我を負っていたかわからない。痛い目に遭ったのが俺なのなら、よかったと考えるべきだろう。
それにしても、風呂ではシャワーだけで激痛、寝る時ですら、背中をベッドにつけれず、横向きでないと寝れない。うっかり寝返りしてしまった時に激痛で起きてしまって、ろくに眠れなかった。結構な重症だ。椅子の背もたれなんて言語道断。使用できたもんじゃない。
全く……お姫様を守るのも、楽な仕事じゃないな、と呆れる他ない。
「……翔くん、どうして今日はそんなに姿勢がいいの?」
三限目終わりの休み時間だった。隣の席の凜が不思議そうにそう訊いてきた。
「え? 別に、俺はいつも姿勢いいだろ?」
慌てて俺はそう返した。
もし俺が自分のせいで背中に怪我を負っているなんて知ったら、きっと彼女は罪悪感に苛まれるだろう。雨宮凛とは、そういう女の子なのだ。
「良くねーだろ。いつもぐでーって背もたれにもたれかかってるか、ぐでーって机に突っ伏してるじゃねーか」
横から純哉が口を挟んできた。
余計な事を……それに、その、俺がいつでもぐでーっとしているような言い草はやめてほしい。決してそんなはずはない。
「あ、それあたしも気になってた。背もたれ使ってないでずっと背筋伸ばしてるから、なんか見てて不自然だったんだよ」
愛梨がそんな俺達の会話に入ってくる。三人の視線が俺に集中する。
「なんか怪しいんだよな……猫背矯正スーツでも着けてんのか?」
「なんか隠してない?」
純哉と凛が訝しむように俺を見る。
「なわけないだろ。俺はいつも通り──いってぇぇぇぇぇ!」
俺が話している最中に、背中に激痛が走った。
愛梨がこっそり後ろに回って、俺の背中をバチーンと引っ叩いたのだ。
「な、なにしやがんだ、愛梨! テメ―!」
「いや、背中になんかあるのかと思ったんだけど……どうした? あたし、そんなに強く叩いてないぞ」
嘘だろ。全力で引っぱたかれたのかと思ったくらい痛かったのに。
「……背中?」
そこで、凛が何かに気付いたように、そう呟いた。
あ、やば……バレた?
「翔くん、ちょっと来て」
「いや、もう授業始まるし……」
「いいから!」
凛が思ったより凄んで言うので、俺も「はい……」と返事するしかない。
凛は俺の手を取ると、手を引いたまま、ずるずると引きずられる。廊下では色んな人からその光景を興味深そうに見られていた。
あの有名モデルにして転校生の雨宮凛が、男子生徒を引っ張っている。これが人の興味を引かないわけがない。
「あの、凛? 手、離してくれない?」
「ダメ」
一言で一蹴されてしまい、大人しく俺は連行される事となった。
原因は、もちろん昨日の町での凛救出作戦だ。しゃがんで凛を人ごみから引っ張り出していた際、凛を庇いながら移動していたせいか、背中に予想以上のダメージを受けていた。人間の膝ってのはどうしてあんなに硬いのか、謎だ。
逃げていた時はあまり気にならなかったが、電車に乗ったあたりから徐々に痛みが強く出てきて、家に帰った頃には愛想笑いすらできなかった。鏡で背中を見てみると、青あざがたくさんできていて、至るところが内出血している。幸い切り傷はないので出血はしていないが、かなり痛い。
(そりゃあんだけ踏みつけられたらなぁ)
人生であれだけ踏まれる経験もないので、貴重と言えば貴重な体験なのだが、生憎と俺には踏まれて喜ぶ性癖はなかったらしい。ただただ痛いだけだった。
とりあえず、凛の細い身体ならどんな怪我を負っていたかわからない。痛い目に遭ったのが俺なのなら、よかったと考えるべきだろう。
それにしても、風呂ではシャワーだけで激痛、寝る時ですら、背中をベッドにつけれず、横向きでないと寝れない。うっかり寝返りしてしまった時に激痛で起きてしまって、ろくに眠れなかった。結構な重症だ。椅子の背もたれなんて言語道断。使用できたもんじゃない。
全く……お姫様を守るのも、楽な仕事じゃないな、と呆れる他ない。
「……翔くん、どうして今日はそんなに姿勢がいいの?」
三限目終わりの休み時間だった。隣の席の凜が不思議そうにそう訊いてきた。
「え? 別に、俺はいつも姿勢いいだろ?」
慌てて俺はそう返した。
もし俺が自分のせいで背中に怪我を負っているなんて知ったら、きっと彼女は罪悪感に苛まれるだろう。雨宮凛とは、そういう女の子なのだ。
「良くねーだろ。いつもぐでーって背もたれにもたれかかってるか、ぐでーって机に突っ伏してるじゃねーか」
横から純哉が口を挟んできた。
余計な事を……それに、その、俺がいつでもぐでーっとしているような言い草はやめてほしい。決してそんなはずはない。
「あ、それあたしも気になってた。背もたれ使ってないでずっと背筋伸ばしてるから、なんか見てて不自然だったんだよ」
愛梨がそんな俺達の会話に入ってくる。三人の視線が俺に集中する。
「なんか怪しいんだよな……猫背矯正スーツでも着けてんのか?」
「なんか隠してない?」
純哉と凛が訝しむように俺を見る。
「なわけないだろ。俺はいつも通り──いってぇぇぇぇぇ!」
俺が話している最中に、背中に激痛が走った。
愛梨がこっそり後ろに回って、俺の背中をバチーンと引っ叩いたのだ。
「な、なにしやがんだ、愛梨! テメ―!」
「いや、背中になんかあるのかと思ったんだけど……どうした? あたし、そんなに強く叩いてないぞ」
嘘だろ。全力で引っぱたかれたのかと思ったくらい痛かったのに。
「……背中?」
そこで、凛が何かに気付いたように、そう呟いた。
あ、やば……バレた?
「翔くん、ちょっと来て」
「いや、もう授業始まるし……」
「いいから!」
凛が思ったより凄んで言うので、俺も「はい……」と返事するしかない。
凛は俺の手を取ると、手を引いたまま、ずるずると引きずられる。廊下では色んな人からその光景を興味深そうに見られていた。
あの有名モデルにして転校生の雨宮凛が、男子生徒を引っ張っている。これが人の興味を引かないわけがない。
「あの、凛? 手、離してくれない?」
「ダメ」
一言で一蹴されてしまい、大人しく俺は連行される事となった。
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