秋嵐の獄、狐狗狸けらけら

終戦後、目まぐるしくうつろう世の中、復興に沸く巷にあって、
連日新聞紙面を賑わせていたのが、とある大店の蔵の床下から大量に発見された人骨のこと。
数、膨大にして推定二百体ほど。そのほとんどが赤子の骨。
どうやらここの女房の仕業らしい。
だが当人は行方をくらませており、当局の懸命な捜索にもかかわらず、
いまもって消息は不明であった。

そんなおり、ラジオが告げたのは季節外れの台風が列島を縦断するという情報。
ちょうど進路上に重なった和良簾村は、直撃を喰らい孤立することになる。
だが東北の山間部の深奥、僻地にあったこの村にとっては慣れたこと。
ゆえに慌てることもなくいつも通り。粛々と嵐が過ぎるのを待つばかり。
だがしかし、今回の嵐はいつもとはちがっていた。
村が嵐に閉ざされる前に、魔が入り込んでいたのである。

遠い対岸の火事であったことがなんら前触れもなく、
ふと我が身に降りかかってくることになったとき……。
仮面は剥され、克明に浮き彫りにされるのは人の本性。

嵐の夜、うっかり魔を招き入れてしまった駐在が味わう恐怖の一夜。
けれどもそれすらもが真の恐怖の序章に過ぎない。
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