12 / 23
3 ジグソーパズル
3-2
しおりを挟む
「やっぱり蓮はかっこいいなー……」
蓮がバイトの日。
ぴしっとしたスーツ姿を見て、しみじみと言ってしまった。
「へへへ、ありがと」
鏡の前で、ネクタイと髪の毛を最終チェックする。
「19:00までには帰ると思う」
「分かった。気をつけて。何かあったら無理せず帰ってきなよ?」
「うん。じゃあ、行ってきます」
白いドアが閉まると、部屋はひとりきりの静かな空間になった。
スマホがないので、連絡手段はなし。
いつ帰ってくるか不確実なひとを、ぽつんと待つことになる。
今回のバイトは、気鋭の若手建築家たちが共同開催するシンポジウムで、プログラムが土日の2日間に渡る、大きなものらしい。
蓮曰く、会場が広いから案内の頭数が必要とのことで、何か役割を任されているわけではなく、『3~4時間突っ立っているだけ』と言っていた。
正直、やることがない。
外へ出てリハビリをしたり、おいしいご飯を作って待ってるくらいが、いまの俺にできることか。
よっこらせと立ち上がり、のろのろと準備をし、駅に向かうことにした。
バレンタインの街並みを見て、やっぱり蓮に、何か贈り物をしようと思った。
自分はプレゼントなんか渡せる立場じゃない……と思っていたけど、それは結局、自分の自信のなさから目をそらしただけだ。
蓮には日頃の感謝をちゃんと伝えたいし、そこに自分の立場がどうかとかは、関係ない。
バレンタインなんて、ただ企業が商品を買わせるためのイベントだということは重々承知だけど、良い機会ととらえて、勇気を出して何か贈ることにした。
駅ビルを、エスカレーターで1階ずつ上っていく。
予算はないから、本当に、少額のもの。
でも、食べて消えてしまうものじゃなくて、形に残るものがいい。
できれば、ふたりで『遊べる』もの。
お目当の大型の雑貨店に着くと、キラキラした売り場に、場違いな気持ちになった。
元々こういう店とは無縁な暮らしだし、バレンタインなんてもってのほか。
少し怯みつつ進む。
パーティーグッズやボードゲーム、トランプ、ウノ、手品グッズ……遊ぶものは色々あって、目移りしてしまう。
ふたりで盛り上がれて、かつ、蓮が満足しそうな、おしゃれで知的な遊びがいいなと思う。
ぐるぐると見ていると、お店の一番端が、ジグソーパズルのコーナーになっていた。
壁には細かいパズルの完成品が何枚も飾ってあって、絵も、アニメから外国の風景写真まで、色々。
ジグソーパズルなら、頭も使うし、ふたりであーだこーだ言いながら協力できるし、おしゃれな絵柄のものにすれば、壁に飾ってインテリアにできるかもしれない。
蓮が好きそうなのはどんなものだろうと、顔を思い浮かべながらひとつひとつ手に取る。
5分ほどうろうろしてふと手を止めたのは、西洋絵画のもの。
俺でも見たことがあるので、有名な作品だと思う。
赤毛に白いロングドレスを着た女性が、椅子に座って頬杖をついている。
背景は、ステンドグラスみたいな模様で、曲線と星のモチーフがたくさん使われており、タロット占いのカードっぽい。
ミュシャという画家が描いた、『ヒヤシンス姫』という作品らしい。
その名の通り、ヒヤシンスの花をイメージした女性の絵だそうだ。
スマホがないので、ミュシャがどんなひとなのかや、ヒヤシンス姫の意味などを調べることができない。
少し考えて、下のフロアにある本屋に行くことにした。
生まれて初めて、美術書コーナーに足を踏み入れる。
パズルになるくらいだから、きっとミュシャ自身も有名だし、ヒヤシンス姫はその代表作なのだろう。
そして予想通り、すぐに、ミュシャの作品を網羅した大きな図録を発見した。
ぱらぱらとめくり、お目当てのページへ。
ヒヤシンス姫は、劇のポスターらしい――というか、ミュシャ自身が、普通の芸術家じゃなくて、ポスターや挿絵を描くひとだということが分かった。
手に持っている白い輪や洋服は、ヒヤシンスの模様で装飾されていて、女性の赤毛も、花の色を表している。
ヒヤシンスの花自体はギリシャ神話からきているそうで、その関連についても少し解説されていた。
説明を読みながら、ふと思い浮かぶ。
ヒヤシンス、神話……花言葉?
バレンタインの贈り物と言ったら、チョコレートもだけど、お花もよくあるものじゃないかと気づいた。
ヒヤシンスの花にどんな意味があるのか、今度は植物の棚へ向かった。
花言葉辞典をパラパラめくる。
小さなラッパのような花がたくさんかたまって、ひとつのアイスキャンディーのようになった形。
色は、代表的なものは紫らしいけど、ちゃんとミュシャの絵にあるような赤いものもあった。
大きく書かれた、ヒヤシンスの花言葉。
「えっ……」
思わず、小さく声が漏れてしまった。
男のくせにこんなロマンチックな思考をするのはどうかと思うけど、この花は、俺と蓮のためにあるのではないかと思ってしまった。
そのくらい、いまの俺たちにぴったりな花言葉。
その花をモチーフにした綺麗な絵のパズルで、ふたりで遊べる。
贈り物として完璧なのではと、何か運命めいたものさえ感じてしまった。
ただ、花言葉としてはパーフェクトだけど、ヒヤシンスの由来になったギリシャ神話自体は、あまり良い話ではなかった。
ふたりの神様の寵愛を受ける、美少年。
ひとりの神様がその美少年と円盤投げをしていたところ、嫉妬したもうひとりの神様の力で円盤の軌道がそれて、少年に当たり、そのまま死んでしまった。
その血の色がヒヤシンスの色である……という。
力を持った神様に翻弄されて死ぬ美少年と、大人の思惑に翻弄されて体を壊した蓮……。
どうしても重ね合わせてしまって、これでいいのかと悩み始めた。
そして、悩むこと20分。
他の花言葉辞典も色々見て、結局、良い解釈をすることにした。
神話では美少年が死んで終わったかもしれないけど、花言葉は前向きだ。
蓮は死んでないし、俺たちにぴったりだと思う。
直感を信じよう。
雑貨屋に戻り、ジグソーパズルを買って、帰路についた。
「ただいまー」
蓮が帰ってきたのは、18:00すぎ。予定より1時間ほど早い。
「おかえり、早かったね」
「あしたもあるし、すぐ解散になったから」
コートをハンガーにかけ、スーツのジャケットを脱ごうとしたところを、ほぼ体当たりに近い形で抱きついて止めた。
「うわっ、なんだよ」
「待って、蓮。脱がないで」
「え? 何?」
「かっこいいレアな姿、もうちょっと拝んでたくて」
ぎゅうぎゅう抱きついたまま言ったら、めちゃめちゃ笑われた。
そのままキスされて、たまらずため息を漏らしたら、蓮に火を注いでしまったらしく、だいぶいやらしいキスを長い時間することになってしまった。
そしてまた、めちゃめちゃ笑われた。
夕食は、蓮が好きな和風きのこハンバーグにしたので、すぐに食卓に並べた。
蓮は、分かりやすく目をきらきらさせる。
「うわーやば。いただきます」
もぐもぐと頬張る。
「バイト、どうだった?」
「ほぼ立ってるだけだったから、楽だったよ。咳のこと知ってるひとが配慮してくれて、室内だったし。きょうはただの講演だから、会の間はなーんにもせずに、話聞いてただけ」
「良かった。外でずっと案内してるんじゃ、寒すぎるもんね」
「うん。良い話が聞けて、しかもバイト代ももらえるなんて、お得な感じ」
機嫌良く話しているを見て、こちらもうれしくなる。
「知り合いには会ったの?」
「うん、何人か。呼んでくれた先輩にはすぐあいさつして、他にも顔見知り何人か」
休学中に知り合いに会うのは気が滅入るのではと心配していたけど、そんなことはなさそうなので良かった。
食事を終え、お風呂に入り、あしたもバイトだからということで早めに寝ることにした。
「おやすみ」
電気を消すと、いつもどおり抱き枕のようにかかえられたので、俺も自然に、蓮の胸へ顔を埋める。
きょうは外を長時間歩いて、疲れた。
あしたは休憩日ということで、家でのんびりしよう……そんなことをうとうと考えていた、そのとき。
「コホッ……コホッ」
蓮の咳が始まった。
「蓮? 平気?」
「ん、平気。どうしたんだろ。コホッ」
背中をさすってみるけど、空咳は止まらない。
「水と薬持ってくる」
「ごめん」
ゴホゴホと徐々にきつくなる様子を聞きながら、焦ってパソコンデスクの引き出しを開けた。
蓮がバイトの日。
ぴしっとしたスーツ姿を見て、しみじみと言ってしまった。
「へへへ、ありがと」
鏡の前で、ネクタイと髪の毛を最終チェックする。
「19:00までには帰ると思う」
「分かった。気をつけて。何かあったら無理せず帰ってきなよ?」
「うん。じゃあ、行ってきます」
白いドアが閉まると、部屋はひとりきりの静かな空間になった。
スマホがないので、連絡手段はなし。
いつ帰ってくるか不確実なひとを、ぽつんと待つことになる。
今回のバイトは、気鋭の若手建築家たちが共同開催するシンポジウムで、プログラムが土日の2日間に渡る、大きなものらしい。
蓮曰く、会場が広いから案内の頭数が必要とのことで、何か役割を任されているわけではなく、『3~4時間突っ立っているだけ』と言っていた。
正直、やることがない。
外へ出てリハビリをしたり、おいしいご飯を作って待ってるくらいが、いまの俺にできることか。
よっこらせと立ち上がり、のろのろと準備をし、駅に向かうことにした。
バレンタインの街並みを見て、やっぱり蓮に、何か贈り物をしようと思った。
自分はプレゼントなんか渡せる立場じゃない……と思っていたけど、それは結局、自分の自信のなさから目をそらしただけだ。
蓮には日頃の感謝をちゃんと伝えたいし、そこに自分の立場がどうかとかは、関係ない。
バレンタインなんて、ただ企業が商品を買わせるためのイベントだということは重々承知だけど、良い機会ととらえて、勇気を出して何か贈ることにした。
駅ビルを、エスカレーターで1階ずつ上っていく。
予算はないから、本当に、少額のもの。
でも、食べて消えてしまうものじゃなくて、形に残るものがいい。
できれば、ふたりで『遊べる』もの。
お目当の大型の雑貨店に着くと、キラキラした売り場に、場違いな気持ちになった。
元々こういう店とは無縁な暮らしだし、バレンタインなんてもってのほか。
少し怯みつつ進む。
パーティーグッズやボードゲーム、トランプ、ウノ、手品グッズ……遊ぶものは色々あって、目移りしてしまう。
ふたりで盛り上がれて、かつ、蓮が満足しそうな、おしゃれで知的な遊びがいいなと思う。
ぐるぐると見ていると、お店の一番端が、ジグソーパズルのコーナーになっていた。
壁には細かいパズルの完成品が何枚も飾ってあって、絵も、アニメから外国の風景写真まで、色々。
ジグソーパズルなら、頭も使うし、ふたりであーだこーだ言いながら協力できるし、おしゃれな絵柄のものにすれば、壁に飾ってインテリアにできるかもしれない。
蓮が好きそうなのはどんなものだろうと、顔を思い浮かべながらひとつひとつ手に取る。
5分ほどうろうろしてふと手を止めたのは、西洋絵画のもの。
俺でも見たことがあるので、有名な作品だと思う。
赤毛に白いロングドレスを着た女性が、椅子に座って頬杖をついている。
背景は、ステンドグラスみたいな模様で、曲線と星のモチーフがたくさん使われており、タロット占いのカードっぽい。
ミュシャという画家が描いた、『ヒヤシンス姫』という作品らしい。
その名の通り、ヒヤシンスの花をイメージした女性の絵だそうだ。
スマホがないので、ミュシャがどんなひとなのかや、ヒヤシンス姫の意味などを調べることができない。
少し考えて、下のフロアにある本屋に行くことにした。
生まれて初めて、美術書コーナーに足を踏み入れる。
パズルになるくらいだから、きっとミュシャ自身も有名だし、ヒヤシンス姫はその代表作なのだろう。
そして予想通り、すぐに、ミュシャの作品を網羅した大きな図録を発見した。
ぱらぱらとめくり、お目当てのページへ。
ヒヤシンス姫は、劇のポスターらしい――というか、ミュシャ自身が、普通の芸術家じゃなくて、ポスターや挿絵を描くひとだということが分かった。
手に持っている白い輪や洋服は、ヒヤシンスの模様で装飾されていて、女性の赤毛も、花の色を表している。
ヒヤシンスの花自体はギリシャ神話からきているそうで、その関連についても少し解説されていた。
説明を読みながら、ふと思い浮かぶ。
ヒヤシンス、神話……花言葉?
バレンタインの贈り物と言ったら、チョコレートもだけど、お花もよくあるものじゃないかと気づいた。
ヒヤシンスの花にどんな意味があるのか、今度は植物の棚へ向かった。
花言葉辞典をパラパラめくる。
小さなラッパのような花がたくさんかたまって、ひとつのアイスキャンディーのようになった形。
色は、代表的なものは紫らしいけど、ちゃんとミュシャの絵にあるような赤いものもあった。
大きく書かれた、ヒヤシンスの花言葉。
「えっ……」
思わず、小さく声が漏れてしまった。
男のくせにこんなロマンチックな思考をするのはどうかと思うけど、この花は、俺と蓮のためにあるのではないかと思ってしまった。
そのくらい、いまの俺たちにぴったりな花言葉。
その花をモチーフにした綺麗な絵のパズルで、ふたりで遊べる。
贈り物として完璧なのではと、何か運命めいたものさえ感じてしまった。
ただ、花言葉としてはパーフェクトだけど、ヒヤシンスの由来になったギリシャ神話自体は、あまり良い話ではなかった。
ふたりの神様の寵愛を受ける、美少年。
ひとりの神様がその美少年と円盤投げをしていたところ、嫉妬したもうひとりの神様の力で円盤の軌道がそれて、少年に当たり、そのまま死んでしまった。
その血の色がヒヤシンスの色である……という。
力を持った神様に翻弄されて死ぬ美少年と、大人の思惑に翻弄されて体を壊した蓮……。
どうしても重ね合わせてしまって、これでいいのかと悩み始めた。
そして、悩むこと20分。
他の花言葉辞典も色々見て、結局、良い解釈をすることにした。
神話では美少年が死んで終わったかもしれないけど、花言葉は前向きだ。
蓮は死んでないし、俺たちにぴったりだと思う。
直感を信じよう。
雑貨屋に戻り、ジグソーパズルを買って、帰路についた。
「ただいまー」
蓮が帰ってきたのは、18:00すぎ。予定より1時間ほど早い。
「おかえり、早かったね」
「あしたもあるし、すぐ解散になったから」
コートをハンガーにかけ、スーツのジャケットを脱ごうとしたところを、ほぼ体当たりに近い形で抱きついて止めた。
「うわっ、なんだよ」
「待って、蓮。脱がないで」
「え? 何?」
「かっこいいレアな姿、もうちょっと拝んでたくて」
ぎゅうぎゅう抱きついたまま言ったら、めちゃめちゃ笑われた。
そのままキスされて、たまらずため息を漏らしたら、蓮に火を注いでしまったらしく、だいぶいやらしいキスを長い時間することになってしまった。
そしてまた、めちゃめちゃ笑われた。
夕食は、蓮が好きな和風きのこハンバーグにしたので、すぐに食卓に並べた。
蓮は、分かりやすく目をきらきらさせる。
「うわーやば。いただきます」
もぐもぐと頬張る。
「バイト、どうだった?」
「ほぼ立ってるだけだったから、楽だったよ。咳のこと知ってるひとが配慮してくれて、室内だったし。きょうはただの講演だから、会の間はなーんにもせずに、話聞いてただけ」
「良かった。外でずっと案内してるんじゃ、寒すぎるもんね」
「うん。良い話が聞けて、しかもバイト代ももらえるなんて、お得な感じ」
機嫌良く話しているを見て、こちらもうれしくなる。
「知り合いには会ったの?」
「うん、何人か。呼んでくれた先輩にはすぐあいさつして、他にも顔見知り何人か」
休学中に知り合いに会うのは気が滅入るのではと心配していたけど、そんなことはなさそうなので良かった。
食事を終え、お風呂に入り、あしたもバイトだからということで早めに寝ることにした。
「おやすみ」
電気を消すと、いつもどおり抱き枕のようにかかえられたので、俺も自然に、蓮の胸へ顔を埋める。
きょうは外を長時間歩いて、疲れた。
あしたは休憩日ということで、家でのんびりしよう……そんなことをうとうと考えていた、そのとき。
「コホッ……コホッ」
蓮の咳が始まった。
「蓮? 平気?」
「ん、平気。どうしたんだろ。コホッ」
背中をさすってみるけど、空咳は止まらない。
「水と薬持ってくる」
「ごめん」
ゴホゴホと徐々にきつくなる様子を聞きながら、焦ってパソコンデスクの引き出しを開けた。
2
あなたにおすすめの小説
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
撮り残した幸せ
海棠 楓
BL
その男は、ただ恋がしたかった。生涯最後の恋を。
求められることも欲されることもなくなってしまったアラフィフが、最後の恋だと意気込んでマッチングアプリで出会ったのは、二回り以上年下の青年だった。
歳を重ねてしまった故に素直になれない、臆病になってしまう複雑な心情を抱えながらも、二人はある共通の趣味を通じて当初の目的とは異なる関係を築いていく。
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
有能課長のあり得ない秘密
みなみ ゆうき
BL
地方の支社から本社の有能課長のプロジェクトチームに配属された男は、ある日ミーティングルームで課長のとんでもない姿を目撃してしまう。
しかもそれを見てしまったことが課長にバレて、何故か男のほうが弱味を握られたかのようにいいなりになるはめに……。
宵にまぎれて兎は回る
宇土為名
BL
高校3年の春、同級生の名取に告白した冬だったが名取にはあっさりと冗談だったことにされてしまう。それを否定することもなく卒業し手以来、冬は親友だった名取とは距離を置こうと一度も連絡を取らなかった。そして8年後、勤めている会社の取引先で転勤してきた名取と8年ぶりに再会を果たす。再会してすぐ名取は自身の結婚式に出席してくれと冬に頼んできた。はじめは断るつもりだった冬だが、名取の願いには弱く結局引き受けてしまう。そして式当日、幸せに溢れた雰囲気に疲れてしまった冬は式場の中庭で避難するように休憩した。いまだに思いを断ち切れていない自分の情けなさを反省していると、そこで別の式に出席している男と出会い…
大人な貴方とはじめてを
すずかけあおい
BL
整った外見と穏やかな性格で、全社員が憧れているのではというほどに人気の崎森。
地味で平凡な松田にとっては遠い世界の人だったのに、突然崎森から告白されて――。
〔攻め〕崎森 志眞
〔受け〕松田 幸成
外部サイトでも同作品を投稿しています。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
縁結びの神様は仕事が早い
松山あき
BL
※1/4 悠太編 エピローグ更新※
「ちさちゃん以外の、誰かいい人と縁を結んでください!」
お人好しで断れない性格のサラリーマン・航平は、友人の顔を立てるために好きでもない女子と初詣に来ていた。切実な祈りが通じたのか、その日の夜、神様はさっそく「縁」を運んでくる。
だが、現れたのは強面でタトゥー入りの店主・悠太。
「格好つけすぎ」と自分の弱さをあっさり見抜かれ、手慣れた甘やかしと強引な手綱さばきに、航平は一夜にして心も身体も解きほぐされてしまい……。
お人好しサラリーマン×「ダメ男製造機」の店主。
新春の夜に始まる、不器用な男たちの育成(?)ラブ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる