死ぬくらいなら

御堂どーな

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3 ジグソーパズル

3-3

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 薬を飲んだ蓮は、ベッドの縁に腰掛けたまま、黙っていた。
 すぐにはおさまらないから、暗闇の中で、沈黙と咳。

 俺も黙って横に座っていると、蓮が、ぽつりとつぶやいた。
「なんで咳してんだろ。きょう別にストレスとかなかったし、弓弦と一緒に寝てんのに。ゴホッ」
「蓮のせいじゃないんだから。おさまるまでちょっと待ってよ?」
 手を取って握ると、蓮も、ゆるっと握り返してくれた。

「ただ好きなことがしたいだけなのになあ」
「うん」

「本当はさ、建築のこと勉強すんのが大好きだし楽しいし、自覚としては、シンプルにそれだけなんだよ。なのに、ゴホッ……体は勝手にストレス溜めて、オレの思い通りにさせてくれない。寝かせてくれよ。そしたら普通に学校行けるんだから」

 自分の気持ちとズレた体調の悪化に、いら立っているようだった。

「そんな風に自分を責めないで」
「嫌になる……ゴホゴホッ」
 うつむいて咳き込む蓮の背中をさする。
 咳してるところに口をふさいだら苦しいかなとも思ったけど、触れるだけのキスをしてみた。

「少し安心する?」
「ん。する。もうちょっと」
 ちゅ、ちゅ、と音を立てながら口づけると、蓮の手が、俺の背中を探り出した。
「弓弦と繋がったら安心するかな」
「試したらいいよ」
「ケホッ……」
 咳はしつつ、蓮の手は明確に、オレの体温を上げようとしていた。

 準備のため、一旦離れてお風呂に向かう。
 結局、いま蓮のために俺ができることと言えば、こんな風に触れ合って、安心させてあげることくらいかなと思う。



 お互い何も身につけていない状態で、ベッドの上で向かい合った。
 蓮には横になってもらって、俺が蓮のペニスをなめることにする。
 まずは口に含んで何も力入れずにそっと頭を上下してみると、蓮は俺の頭をなでてきた。

「気持ちいい?」
「ん。あったかい。コホッ……ん」
 咳と吐息が混じっていて、大丈夫かなと心配になる。
 苦しかったら言ってと伝えてあるので、とりあえず、止めることなく口淫を続ける。

「弓弦、こっちにお尻向けて」
「え?」
「指でほぐしてあげる」

 されるところを想像して死ぬほど恥ずかしくなったけど、蓮の好きなようにしたいと思い、体の向きを変えて、蓮の顔の前にお尻を突き出した。

「かわい」
「んん……っ」

 たっぷりローションを塗られ、クチュクチュと音を立てながら中を探られる。
「んん、んッ、はあ、……んん、」
 必死で口での愛撫を繰り返しながら、与えられる快感を受け止める。

 咳き込むたびに手は止まるけど、良いところを押されるとどうしても甘ったるい声が漏れて、恥ずかしさもあいまって、かなり興奮してきてしまった。

「もういいよ。中、やわらかくなった」
 蓮に告げられ、体勢を戻すと、そのままゴロンと寝転がされた。
 正面、顔を合わせながら、蓮の侵入を感じる。
「ん……ぁあ」
「ゆづ、コホッ」
 少し苦しそうな表情の蓮の頬をするりとなでて、そのまま首の後ろへ手を回す。

 ゆるゆると動き出した蓮は、しばらくして、ピタリと止まった。

「蓮? 大丈夫? 苦しい?」
 心配して聞いたけど、蓮は返事をしなかった。
 繋がったまま腕のあたりをなでていると、蓮が、絞り出すような声で言った。

「咳止めるためにエッチしても、全然優しい気持ちになれない」
「蓮?」
「弓弦のこと道具か薬みたいに扱うのは、大事にできてない気がしてやだ」
 そして、ゴホゴホと咳き込む。

「俺、大事にされてないなんて思ってないよ? 蓮が安心してくれたらうれしいし、俺だってちゃんと気持ちいい」
 両手を広げると、蓮は体を倒して折り重なってきた。
 そっと背中に手を回し、抱きしめる。

「俺、自分のことでいっぱいいっぱいで、現状何もできてないじゃん。蓮の安心材料になれてることだけが、生きてる救い。だから、俺のこと抱き潰して、疲れて寝たらいいよ。俺はそれで本望。どう?」

 蓮は体を起こした。
「いいの?」
「うん」

 俺がうなずくと、蓮は、中指と人差し指を俺の口の中に入れた。
 唾液を含ませて、絡みつくようになめる。
 口から抜くと、ぬるぬるとした指を俺の乳首に当てて、こねはじめた。

「ん……」
 うっすら目を開けると、蓮は、切なそうな目をしながら、ゆるゆると腰を動かし始めた。
 手つきのいやらしさと中の質量で、ぱっと顔が熱くなる。
 蓮が、かすれ声で言った。
「気持ちよくしてあげる」

 乳首をつまんだりぐりぐりといじりながら、中を突いてくる。
「ん、……はぁ、あ……」
「これ気持ちいい?」
 中をかき回すような腰つき。
「ぁあ、んン……ッはあ」
「気持ちよさそう……コホ、」
 知らない感触で混ぜられると、だんだん息が上がってくる。

 蓮の手が、そろそろと下に伸びてくる。どこを触られるのか――中心に触れて欲しいと期待してしまう。
 ねだるように腰を浮かせると、両手で腰骨をがっちりホールドされた。
「ぅあ……れん、ん、はぁ」
「なあに?」
「ん、んっ」
 言葉にするのは恥ずかしくて、ちょっと顔を背ける。

 蓮は、少しスピードを早めて、奥を突いてきた。
「っあ、はあっ、ん……きもちい」
 控えめな空咳を繰り返す蓮の目は、少し熱がこもっていた。
「前、触っていい?」
 こくこくとうなずく。
 やんわりと握られたら、そのあたたかさだけで、あられもない声が出た。

 中を規則正しく突きながら、前は、粘土をいじるようにぐにぐにと扱いたり少し潰したり。
「弓弦、気持ちよさそう、ケホッ……ケホ」
「はぁ……っ、ん」
「先走りこぼれてる」
「ん、はずかし、ぁあっ」
「可愛い」

 扱く手が強く、速まってきた。
「可愛くイくとこ見せて」
「はっ、ん、……んっ、はぁ」
「オレも気持ちよくなりたいな」
 入口の良いところをえぐりなら奥へ。
「ぁああっ、んッ……はぁ」
「弓弦イくとき、中がひくひくしてすごい気持ちいいんだ」
「あ……ん、れ、蓮っ…」
 呼ぶ声が上ずって、勝手に背中が弓なりになる。
「ぁああっ」
 良いところに当たって、訳が分からなくなってくる。

 咳払いをひとつして、手の中のものをゴリゴリとこすりつつ、奥へガンガン当ててくる。
 ぶわっと熱がせり上がって、我慢ができない。
「んぁっ、やだ、あッ……イッ、ちゃ、ああああっ……!…………んああッ…!……!」
 ビクッビクッと体が跳ねて、濁った液が飛び散る。
「……、イク…………ッ……」
 骨が折れるんじゃないかというくらい強く抱きしめられて、蓮も熱を放った。

 蓮は、ずるっと抜いたあと、コンドームを結んでゴミ箱へ投げる。
 そして、箱に手を伸ばした。
「まだ眠れない」
「いいよ」
「勃たせて」

 寝転んだままの俺の顔のところにまたがる。
「なめたらいい?」
「うん」
 言われるままに口を開くと、蓮は俺の口にペニスを差し込んで、小さくうめいた。

 ぺろぺろと、あめをなめるように舌を動かす。蓮は長くため息をついた。
 見下ろす目線が艶かしい。舌に触れているそれが、徐々に固くなってきた。
 目をつぶると、蓮は、俺の口に突っ込んだまま、ゆるゆると腰を動かし始めた。
 ちょっと苦しいけど、興奮する。
 太ももにしがみついて、夢中でしゃぶった。

「ん……弓弦。挿れたい。いい?」
「うん。して」
 口から抜くと、するりとコンドームをつけ、やわらかい後孔へ。
「ああ」
「すごい。吸い付いてくる」
「ん、きもち…いい……」

 首の後ろに手を回してキスをねだると、期待以上に熱っぽい、深いキスをしてくれる。
「ん、んんっ」
「はぁ……っ、弓弦、」

 蓮の咳は止まっていて、あとはもう満たし合うだけだと思う。
 奥深くで繋がったまま、胸をなめられ、ペニスを扱かれる。

「ん、……蓮も気持ちよくなること、……して」
「見てたら興奮する」
「……んッ、はぁっ、はずかしい…ッあ」
「弓弦の乳首、可愛いよ。敏感で」
 きつく吸われて、声が裏返った。
「や、んン…っ」

 だんだん、気持ちいいしか考えられなくなってくる。
 体が小刻みにピクピクと跳ねて、蓮にしがみつく指先は、力を込めすぎて白くなっている。

「動くよ」
 蓮が、腰を大きくグラインドした。
「ぁああッ」
「……っ、やっば…」
 蓮は味わうように、何度も同じ動きを繰り返した。
 ひとりでに口からこぼれていく声を、止めることができない。

「ぁああ、あん、はぁっ、…ぁッ、はあ」
 達してしまいたい感覚が沸き起こってきて、呼吸が浅くなる。
「蓮、イキたい……」
「ここがいい?」
 ペニスを握られ、体がビクッと揺れた。
 奥を突かれつつ、前は確実な刺激が与えられていて、変になりそうなほど気持ちよかった。

「……あぁ、もうだめ、ん、んっ、イッちゃう…、」
「オレも。先にイッて」
 パンパンと肌がぶつかる音、俺の嬌声、蓮の荒い息遣い。

「はぁ、ん、…イッ、イク……っイッ……っ!ぁあああん!……ぁあっ…!……ッ……!」
「弓弦、……弓弦っ、ぅあ……ッ」
 
 2度達した俺たちは、全てを放り出して、そのまま眠りに落ちた。
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