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勇者なんかお断り!!11歳
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リヨネッタ11歳
アイーシャとの関係が良好になる反面、スティーブとの関係をあまり進展させてこなかった彼女は、強制的に大人たちの手によって感動の再会を演出させられていた。
彼女の血の様に真っ赤な髪は可愛らしく巻かれた。
全体をゆるくウェーブさせて毛先だけコロコロと横に丸まるその髪型は、いつもの彼女を少し大人びてみせた。赤色に合わせるように薄紅色のドレスがさらに際立たせる。
スティーブと初めてあった城の庭園にたまたま両親の仕事の都合で連れてこられた彼女が置き去り(護衛と見張りつき)にされて、たまたま王妃様にお散歩に連れ出されたスティーブと顔を合わせる形となった。
「…あっ…リヨネッ…なんの目的で現れた魔王!?そんな可愛い格好で何を企んでいる!?」
彼女の姿が見えるなり王妃と繋いでいた手を放して駆け寄ってきたスティーブだったが、久しぶりに会うリヨネッタに顔を真っ赤にして動揺していた。
それに対してリヨネッタは母親のスカートに隠れようとしたが、母親に前に差し出される形になった。駆け寄ってくるスティーブと差し出されるリヨネッタは、急な近距離となる。
綺麗にまかれたリヨネッタの髪がスティーブの鼻先をかすめる。それはふわりと舞って彼の気をひくに十分だった。
今までと違う彼女の髪型に硬直して、彼は動きとめた。
「お久しぶりです。殿下、お元気そうで何よりです。」
王妃と母親の手前、リヨネッタは猫をかぶって丁寧なあいさつをした。
「あ、あぁ…今日は忙しいところきてくれて感謝する。ゆっくりしていってくれ。」
少し顔を赤くそめたスティーブは、顔をそらしてそれらしい返答を返した。双方、教育をしっかり受けているので両親の手前は挨拶も普通のものだ。
穏やかな庭園の風が二人の間をする抜けていく。
王妃とリヨネッタの母がゆっくりと距離をとって離れていった。
2人が距離をとっていくのを確認してからスティーブがリヨネッタに近づいてくる。
「余に怖気づくとは、魔王も大したことないな。どうしたキスごときで鈍ったか?」
「当時ならいざ知らず、未婚の女児に手を出すとは勇者も落ちたものよなぁ。」
「俺は婚約者だから良いんだよ。」
綺麗にまかれたリヨネッタの髪を掬ってしげしげと眺め、その毛先に口づけを落とすかに見えた。
「ギャッ!!」
リヨネッタからこわばった悲鳴がこぼれる。その視線の先ではスティーブに大半を喰われた髪の束があった。
「何だ甘くないのか…」
「当たり前じゃろ!そなた何を考えているのじゃ!!」
「お前は飴細工でできた人形みたいだから、全部甘いのかと思った。」
「はぁ?」
引きつった顔で食われている髪の束を取り戻そうともがくリヨネッタと、納得いかない顔をしているスティーブの元へ離れていったはずの王妃とリヨネッタの母親が急いで駆けつけていく。
王妃は慣れた手つきでスティーブに拳骨を落とし、リヨネッタの母親はこれまた慣れた動きで彼女を抱っこして引き離した。
2人の育った環境が顕著に出た瞬間だった。
その後
偶然のお茶会や偶然の勉強会、偶然とは言いづらくなったお昼寝の鉢合わせなど偶然を装った2人の再会が何回も準備されたが、2人の関係が悪化することはあっても近づくことはなかった。
ただ、リヨネッタは両親の苦労を汲んでスティーブを露骨に避けることを諦める結果には繋がった。
「妾が勇者から身を守る術を増やせば良いだけのこと。これ以上、逃げるのも癪じゃしなぁ。」
何とかスティーブたちの仲を持とうとする両親たちから思いやりを学び、リヨネッタは人として少し成長した。
再びスティーブと張り合うようになり、頻繁に会っては口論する彼女は口喧嘩も強くなり、防御魔法にも特化していくきっかけを得たのだった。
リヨネッタ11歳と半年
無事?にスティーブとの関係が元に戻ったリヨネッタは王妃教育の後に、王城にわざわざ残っていた。
せまる王立学園貴族科の入試に向けてリヨネッタ、スティーブ、ダヴィデの3人は王城の一室で勉強をしているのだ。
何故なら12歳から16歳になるまでの4年間だけは国中の子供がそれぞれの将来のための学校へいく法律があるから。
「リヨネッタ様、そこは距離をかけてください。このままですと砲弾の射程距離が―。」
「ふむ?角度ではなかったか。では―」
向かい合ったダヴィデとリヨネッタの顔の距離がたまに近くなる。その度にリヨネッタの隣に座るスティーブの眉間にしわがよった。
勉強に夢中になっている二人は、方程式がどうのと熱く議論していて全く王子の不機嫌に気が回っていない。
剣の腕は一流だが、勉強は中の上だったスティーブは若干2人より理解に時間がかかっていた。
ただし、王侯貴族の集めた天才の中では中の上という話しだ。世間一般と比べればトップクラスの頭なので、彼の頭が悪いという訳ではない。
また周囲の人間が2人を止めないのにも訳があった。
ダヴィデの足は治り体質改善はできたが、まだ毒を作成する体内の呪いは治っていないのでダヴィデの顔はカエル顔のまま。
カエル顔の男と勇者そっくりな王子では、普通の女の子なら王子に恋をすると思っていたからである。
対して婚約破棄、解消したいリヨネッタは婚約者への気遣いなんてしない。
むしろ、ダヴィデともっと親しくなってあわよくば齧りたいと、密かに距離が縮まることを望んでいた。
結果
ムカムカしたスティーブは思いのままに‟ムシャムシャ“した。
リヨネッタは夢中で勉強していたが、スティーブが静かになったことに違和感を覚えた。
(なんだぇ?いつもなら距離が近い!!とそろそろ怒鳴り声が飛んできた気がするのだが…)
ふと横をみれば横髪の半分がムシャムシャされていた。険しい顔のスティーブの口に彼女の髪が消えている。
「…???」
(勇者が妾の髪を食らっている…?)
一拍置いて、リヨネッタは覚えたての防御魔法を発動させた。間髪入れずにスティーブはそれを叩き壊して席を立つ。
「やっとこちらに気づいたか魔王!!」
「何をしておるのじゃ、お主はー!?」
よだれでべっとりした髪におぞけを感じ、鳥肌を立てた彼女は自身の周りに防御結界を展開した。それを喜々とした顔で壊しながら、スティーブは臨戦態勢になった。
先ほどと違って生き生きとした顔で剣を片手にリヨネッタに飛び掛かろうとしたが、彼女も彼女で強固な拘束結界、攻撃そらしの魔法をスティーブにかけようと魔法を発動させた。
「お二人とも待ってください、王城が壊れてしまいす!!やめて下さ…」
「一度ならず二度までも!妾の髪は食料ではないわ!」
「ふん、そこにお前が(ダヴィデと)いるから悪いんだ!」
「(妾という魔王の)存在が悪いだと?!そうじゃろうとも!」
悲しきかな、足りない言葉により未だにすれ違っている2人は自分たちしか見えなくなっていった。
ダヴィデの制しの声も届かず、2人の喧嘩はどんどん派手になっていく。
教師たちはもちろん、ダヴィデも侍女も護衛たちですら2人を止められなくなっていった。
結果
王城の一部を破壊した。
それぞれの両親が駆けつけ、きつく怒られるまで2人の喧嘩は続いた。
この後も二人はことあるごとに、城の一部を破壊したため、王城の隅に最速で作られた勉強の棟に3人で移動されられることとなった。
所謂、隔離というものだ。
ダヴィデ、完全なとばっちりである。
巻き込まれ不憫枠となった彼だが、宰相の息子なだけありそれで終わらなかった。
危険察知能力ならびに喧嘩の仲裁が上手くなっていき、攻撃と防御をそれぞれ2人から学んだ彼は、この2人に唯一ついていける人物へと成長していった。
アイーシャとの関係が良好になる反面、スティーブとの関係をあまり進展させてこなかった彼女は、強制的に大人たちの手によって感動の再会を演出させられていた。
彼女の血の様に真っ赤な髪は可愛らしく巻かれた。
全体をゆるくウェーブさせて毛先だけコロコロと横に丸まるその髪型は、いつもの彼女を少し大人びてみせた。赤色に合わせるように薄紅色のドレスがさらに際立たせる。
スティーブと初めてあった城の庭園にたまたま両親の仕事の都合で連れてこられた彼女が置き去り(護衛と見張りつき)にされて、たまたま王妃様にお散歩に連れ出されたスティーブと顔を合わせる形となった。
「…あっ…リヨネッ…なんの目的で現れた魔王!?そんな可愛い格好で何を企んでいる!?」
彼女の姿が見えるなり王妃と繋いでいた手を放して駆け寄ってきたスティーブだったが、久しぶりに会うリヨネッタに顔を真っ赤にして動揺していた。
それに対してリヨネッタは母親のスカートに隠れようとしたが、母親に前に差し出される形になった。駆け寄ってくるスティーブと差し出されるリヨネッタは、急な近距離となる。
綺麗にまかれたリヨネッタの髪がスティーブの鼻先をかすめる。それはふわりと舞って彼の気をひくに十分だった。
今までと違う彼女の髪型に硬直して、彼は動きとめた。
「お久しぶりです。殿下、お元気そうで何よりです。」
王妃と母親の手前、リヨネッタは猫をかぶって丁寧なあいさつをした。
「あ、あぁ…今日は忙しいところきてくれて感謝する。ゆっくりしていってくれ。」
少し顔を赤くそめたスティーブは、顔をそらしてそれらしい返答を返した。双方、教育をしっかり受けているので両親の手前は挨拶も普通のものだ。
穏やかな庭園の風が二人の間をする抜けていく。
王妃とリヨネッタの母がゆっくりと距離をとって離れていった。
2人が距離をとっていくのを確認してからスティーブがリヨネッタに近づいてくる。
「余に怖気づくとは、魔王も大したことないな。どうしたキスごときで鈍ったか?」
「当時ならいざ知らず、未婚の女児に手を出すとは勇者も落ちたものよなぁ。」
「俺は婚約者だから良いんだよ。」
綺麗にまかれたリヨネッタの髪を掬ってしげしげと眺め、その毛先に口づけを落とすかに見えた。
「ギャッ!!」
リヨネッタからこわばった悲鳴がこぼれる。その視線の先ではスティーブに大半を喰われた髪の束があった。
「何だ甘くないのか…」
「当たり前じゃろ!そなた何を考えているのじゃ!!」
「お前は飴細工でできた人形みたいだから、全部甘いのかと思った。」
「はぁ?」
引きつった顔で食われている髪の束を取り戻そうともがくリヨネッタと、納得いかない顔をしているスティーブの元へ離れていったはずの王妃とリヨネッタの母親が急いで駆けつけていく。
王妃は慣れた手つきでスティーブに拳骨を落とし、リヨネッタの母親はこれまた慣れた動きで彼女を抱っこして引き離した。
2人の育った環境が顕著に出た瞬間だった。
その後
偶然のお茶会や偶然の勉強会、偶然とは言いづらくなったお昼寝の鉢合わせなど偶然を装った2人の再会が何回も準備されたが、2人の関係が悪化することはあっても近づくことはなかった。
ただ、リヨネッタは両親の苦労を汲んでスティーブを露骨に避けることを諦める結果には繋がった。
「妾が勇者から身を守る術を増やせば良いだけのこと。これ以上、逃げるのも癪じゃしなぁ。」
何とかスティーブたちの仲を持とうとする両親たちから思いやりを学び、リヨネッタは人として少し成長した。
再びスティーブと張り合うようになり、頻繁に会っては口論する彼女は口喧嘩も強くなり、防御魔法にも特化していくきっかけを得たのだった。
リヨネッタ11歳と半年
無事?にスティーブとの関係が元に戻ったリヨネッタは王妃教育の後に、王城にわざわざ残っていた。
せまる王立学園貴族科の入試に向けてリヨネッタ、スティーブ、ダヴィデの3人は王城の一室で勉強をしているのだ。
何故なら12歳から16歳になるまでの4年間だけは国中の子供がそれぞれの将来のための学校へいく法律があるから。
「リヨネッタ様、そこは距離をかけてください。このままですと砲弾の射程距離が―。」
「ふむ?角度ではなかったか。では―」
向かい合ったダヴィデとリヨネッタの顔の距離がたまに近くなる。その度にリヨネッタの隣に座るスティーブの眉間にしわがよった。
勉強に夢中になっている二人は、方程式がどうのと熱く議論していて全く王子の不機嫌に気が回っていない。
剣の腕は一流だが、勉強は中の上だったスティーブは若干2人より理解に時間がかかっていた。
ただし、王侯貴族の集めた天才の中では中の上という話しだ。世間一般と比べればトップクラスの頭なので、彼の頭が悪いという訳ではない。
また周囲の人間が2人を止めないのにも訳があった。
ダヴィデの足は治り体質改善はできたが、まだ毒を作成する体内の呪いは治っていないのでダヴィデの顔はカエル顔のまま。
カエル顔の男と勇者そっくりな王子では、普通の女の子なら王子に恋をすると思っていたからである。
対して婚約破棄、解消したいリヨネッタは婚約者への気遣いなんてしない。
むしろ、ダヴィデともっと親しくなってあわよくば齧りたいと、密かに距離が縮まることを望んでいた。
結果
ムカムカしたスティーブは思いのままに‟ムシャムシャ“した。
リヨネッタは夢中で勉強していたが、スティーブが静かになったことに違和感を覚えた。
(なんだぇ?いつもなら距離が近い!!とそろそろ怒鳴り声が飛んできた気がするのだが…)
ふと横をみれば横髪の半分がムシャムシャされていた。険しい顔のスティーブの口に彼女の髪が消えている。
「…???」
(勇者が妾の髪を食らっている…?)
一拍置いて、リヨネッタは覚えたての防御魔法を発動させた。間髪入れずにスティーブはそれを叩き壊して席を立つ。
「やっとこちらに気づいたか魔王!!」
「何をしておるのじゃ、お主はー!?」
よだれでべっとりした髪におぞけを感じ、鳥肌を立てた彼女は自身の周りに防御結界を展開した。それを喜々とした顔で壊しながら、スティーブは臨戦態勢になった。
先ほどと違って生き生きとした顔で剣を片手にリヨネッタに飛び掛かろうとしたが、彼女も彼女で強固な拘束結界、攻撃そらしの魔法をスティーブにかけようと魔法を発動させた。
「お二人とも待ってください、王城が壊れてしまいす!!やめて下さ…」
「一度ならず二度までも!妾の髪は食料ではないわ!」
「ふん、そこにお前が(ダヴィデと)いるから悪いんだ!」
「(妾という魔王の)存在が悪いだと?!そうじゃろうとも!」
悲しきかな、足りない言葉により未だにすれ違っている2人は自分たちしか見えなくなっていった。
ダヴィデの制しの声も届かず、2人の喧嘩はどんどん派手になっていく。
教師たちはもちろん、ダヴィデも侍女も護衛たちですら2人を止められなくなっていった。
結果
王城の一部を破壊した。
それぞれの両親が駆けつけ、きつく怒られるまで2人の喧嘩は続いた。
この後も二人はことあるごとに、城の一部を破壊したため、王城の隅に最速で作られた勉強の棟に3人で移動されられることとなった。
所謂、隔離というものだ。
ダヴィデ、完全なとばっちりである。
巻き込まれ不憫枠となった彼だが、宰相の息子なだけありそれで終わらなかった。
危険察知能力ならびに喧嘩の仲裁が上手くなっていき、攻撃と防御をそれぞれ2人から学んだ彼は、この2人に唯一ついていける人物へと成長していった。
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