魔王でした。自分を殺した勇者な婚約者などお断りです。

一零

文字の大きさ
4 / 18

勇者の子孫なんかお断り!7歳

しおりを挟む

リヨネッタ7歳

「おまえも年貢のおさめどきと言うものだな!」

 会うなりそう言ってきて、手の甲に挨拶のキスをしてくるスティーブを、死んだ魚のような目で見つめる。
 彼は内密に婚約してから接触が大胆になり、手を握る、腕を組ませるに続いて、手の甲にキスをしてくるようになった。
 リヨネッタ遺憾である。

「なんかうれしそうですね。ヤモリ王子。」
「だれがヤモリ王子だ!おまえこそヤモリ女だろ!ゲテモノ食いのおまえとキ、キスできるのは、僕だけなんだぞ!感謝するがいい。」
「嫌なら結構ですよ。」

 ふんぞり返って、小さな胸を張るスティーブから後ずさって距離をとった。彼女は手をゴシゴシとハンカチで拭きながら、会うたびに恒例の挨拶になりつつある行為を回避できないものかと、思案した。

(全く忌々しい勇者の子孫だ。何とかキスを回避できないものか。いっそ嫌いな虫でも握って仕込んでみるか?泣き虫なこいつのことだ、それでこりるじゃろ…。)

 後にこの作戦は、リヨネッタを更に困らせるが、それはまだ先のこと。

(ふん、せめてこの先も魔王らしく、もっと勇者の子孫を泣かせて困らせてやろうではないか。あわよくば、そのまま婚約破棄だ!)

 ニヤリと意地悪く笑うリヨネッタを、王妃が何か思案する顔で見つめていることに、彼女は気が付いていなかった。



リヨネッタ7歳と半年

 王妃教育を受けた後に、彼女は王妃に呼び出されていた。華やかな王妃の私室に呼び出されたが、公爵家出身の王妃のことを何も警戒していなかった。

 だか、彼女が入室するなり、王妃は全員下がらせて内鍵をかけ、不敵な笑顔になったことで、警戒をMAXにした。
 急に抱っこされた野良猫の様に背中をいからせ、髪をブワッと魔力で膨らませて様子を伺う。

「な、なぜ二人きりになど…?」
「やぁっと2人きりね、リヨネッタちゃん。それとも前世の名前を聞いた方がいいかしら?」
「ひっ、なななな何のことかえ…」

 王妃はきつめの顔立ちを、悪役顔というにふさわしい極悪笑顔に変えた。リヨネッタの心臓が飛び出しそうなほどはねる。

(ばれた?公爵家には王家の血筋は薄いから、勇者の子孫として数えていなかったが、見誤ったか!?)

「おーほっほっほっほ。隠さなくていいのよ。同じ前世の記憶を持つ悪役令嬢同士で仲良くしましょう!!」

 王妃が高笑いを上げて、怖い笑顔のままソファに誘導してきた。

「…む?あくやく令嬢??」
「わたくしの代で乙女ゲームの舞台は3作目まで進んでいたから、息子たちが4作目の舞台になることはわかっていたのよ!!スティーブに対して、ゲームのストーリーとあなたは違うことをしていたわ。わたくしもゲーム通りにならない様にお茶会を変えたりして動いていたけど、あなたも破滅の道をいかないように動いているのでしょう?わたくし半年間あなたを観察してたのよ。」
「え?すまぬ、何を言っているのか本気でわからぬ…オ、ゲー、…なんじゃって?」

 動揺したリヨネッタは魔王だったころの口調がでてしまっていることに気が付かなかった。
 王妃もリヨネッタの反応に首を傾げている。

「動揺していたから前世の記憶はあるのよね??」
「う、うむ。殺された記憶なら…?あっ、ちが…」
「…え、殺された!?あ、ももももしかして、時間巻き戻り系の復讐令嬢もの小説トリップかしら!??だとしたらこのままだとよく見た展開なら王家は滅亡する??それともスティーブだけ廃嫡の流れになるのかしら??」

 リヨネッタには聞き覚えがない単語ばかりで、警戒をといて首を傾げた。

「はて、どういう暗喩だ?妾はとくにスティーブ自身には何も復讐することはないが…」
「え?」
「え?」

(婚約は不服ゆえにスティーブに婚約破棄させようと嫌がらせはするが、復讐とはちと違うな?王妃は何を言っている??)


 いまいち噛み合わない王妃との会話にリヨネッタは首を傾げた。

 その後、王妃は彼女に「タイム!タイムタイム!」と謎の言葉を叫び、ブツブツと「記憶が曖昧?」「わたくしが3作品までストーリーを変えたから影響が…?」「ニホンジンじゃあないの?」などとわけのわからない独り言を言った後に、リヨネッタに優しい微笑みを向けた。

「わたくしは何があってもあなたの味方よ。何かあればあなたのことを真っ先に信じる人間がここにいることを覚えていてちょうだい…?」
「う、うむ??わかった??」

(こやつ、もしやかつては魔族の部下の誰かなのか?最初の極悪笑顔は確かに妾の支配下たちに通じる邪悪なものであったが、…だれだえ??)

 何かが決定的に勘違いであり、すれ違いが起きていることはわかったが、自分に敵意が無いことがわかったリヨネッタは取り敢えず頷いておいた。

 リヨネッタは魔王で悪だから、使えるものは使うのだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたので、慰謝料で「国」を買うことにしました。~知識ゼロの私ですが、謎の魔導書(AI)に従ったら、いつの間にか王家のオーナーに~

ジョウジ
ファンタジー
「セレスティア、貴様との婚約を破棄する!」 卒業パーティーで王子に断罪された公爵令嬢セレスティア。 慰謝料も貰えず、腹いせに立ち寄った古道具屋のワゴンセール。 そこでたった銅貨数枚(100円)で買った「黒い手鏡(スマホ)」を起動した瞬間、運命が変わる。 『警告。3年後の国家破綻およびマスターの処刑確率は99.9%です』 「はあ!? 死ぬのは嫌! それに、戦争が起きたら推し(アルド様)が死んじゃうじゃない!」 知識ゼロ、あるのは魔力と行動力、そして推しへの愛だけ。 パニックになった彼女は、スマホに宿るAI(ジェミニ)の極悪な経済作戦を、自分に都合よく「超訳」して実行に移す。 「敵対的買収……? 要するに、お店の借金を肩代わりして『オーナー』になれば、商品は全部タダ(私のもの)ってことね!?」 これは、内心ガクブルの悪役令嬢が、AIの指示を「素敵なお買い物」と勘違いしたまま国を経済支配し、 結果的に「慈悲深い聖女」「経営の天才」と崇められていく、痛快・勘違い無双コメディ! ※全10話の短期集中連載です。お正月のお供にどうぞ! ※テンポを重視してダイジェスト10話版となります。反響があれば長編の執筆を開始します! ※本作は、物語の構想・執筆補助にAI技術を活用し制作されました。 ※小説家になろう・カクヨムにも投稿

お掃除侍女ですが、婚約破棄されたので辺境で「浄化」スキルを極めたら、氷の騎士様が「綺麗すぎて目が離せない」と溺愛してきます

咲月ねむと
恋愛
王宮で侍女として働く私、アリシアは、前世の記憶を持つ転生者。清掃員だった前世の知識を活かし、お掃除に情熱を燃やす日々を送っていた。その情熱はいつしか「浄化」というユニークスキルにまで開花!…したことに本人は全く気づいていない。 ​そんなある日、婚約者である第二王子から「お前の周りだけ綺麗すぎて不気味だ!俺の完璧な美貌が霞む!」という理不尽な理由で婚約破棄され、瘴気が漂うという辺境の地へ追放されてしまう。 ​しかし、アリシアはへこたれない。「これで思う存分お掃除ができる!」と目を輝かせ、意気揚々と辺境へ。そこで出会ったのは、「氷の騎士」と恐れられるほど冷徹で、実は極度の綺麗好きである辺境伯カイだった。 ​アリシアがただただ夢中で掃除をすると、瘴気に汚染された土地は浄化され、作物も豊かに実り始める。呪われた森は聖域に変わり、魔物さえも彼女に懐いてしまう。本人はただ掃除をしているだけなのに、周囲からは「伝説の浄化の聖女様」と崇められていく。 ​一方、カイはアリシアの完璧な仕事ぶり(浄化スキル)に心酔。「君の磨き上げた床は宝石よりも美しい。君こそ私の女神だ」と、猛烈なアタックを開始。アリシアは「お掃除道具をたくさんくれるなんて、なんて良いご主人様!」と、これまた盛大に勘違い。 ​これは、お掃除大好き侍女が、無自覚な浄化スキルで辺境をピカピカに改革し、綺麗好きなハイスペックヒーローに溺愛される、勘違いから始まる心温まる異世界ラブコメディ。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

溺愛王子の甘すぎる花嫁~悪役令嬢を追放したら、毎日が新婚初夜になりました~

紅葉山参
恋愛
侯爵令嬢リーシャは、婚約者である第一王子ビヨンド様との結婚を心から待ち望んでいた。けれど、その幸福な未来を妬む者もいた。それが、リーシャの控えめな立場を馬鹿にし、王子を我が物にしようと画策した悪役令嬢ユーリーだった。 ある夜会で、ユーリーはビヨンド様の気を引こうと、リーシャを罠にかける。しかし、あなたの王子は、そんなつまらない小細工に騙されるほど愚かではなかった。愛するリーシャを信じ、王子はユーリーを即座に糾弾し、国外追放という厳しい処分を下す。 邪魔者が消え去った後、リーシャとビヨンド様の甘美な新婚生活が始まる。彼は、人前では厳格な王子として振る舞うけれど、私と二人きりになると、とろけるような甘さでリーシャを愛し尽くしてくれるの。 「私の可愛い妻よ、きみなしの人生なんて考えられない」 そう囁くビヨンド様に、私リーシャもまた、心も身体も預けてしまう。これは、障害が取り除かれたことで、むしろ加速度的に深まる、世界一甘くて幸せな夫婦の溺愛物語。新婚の王子妃として、私は彼の、そして王国の「最愛」として、毎日を幸福に満たされて生きていきます。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

【完結】私が誰だか、分かってますか?

美麗
恋愛
アスターテ皇国 時の皇太子は、皇太子妃とその侍女を妾妃とし他の妃を娶ることはなかった 出産時の出血により一時病床にあったもののゆっくり回復した。 皇太子は皇帝となり、皇太子妃は皇后となった。 そして、皇后との間に産まれた男児を皇太子とした。 以降の子は妾妃との娘のみであった。 表向きは皇帝と皇后の仲は睦まじく、皇后は妾妃を受け入れていた。 ただ、皇帝と皇后より、皇后と妾妃の仲はより睦まじくあったとの話もあるようだ。 残念ながら、この妾妃は産まれも育ちも定かではなかった。 また、後ろ盾も何もないために何故皇后の侍女となったかも不明であった。 そして、この妾妃の娘マリアーナははたしてどのような娘なのか… 17話完結予定です。 完結まで書き終わっております。 よろしくお願いいたします。

転生したら、乙女ゲームの悪役令嬢だったので現実逃避を始めます

山見月あいまゆ
恋愛
私が前世を思い出したのは前世のことに興味を持った時だった 「えっ!前世って前の人生のことなの。私の前の人生はなんだろう?早く思い出したい」 そう思った時すべてを思い出した。 ここは乙女ゲームの世界 そして私は悪役令嬢セリーナ・グランチェスタ 私の人生の結末はハーッピーエンドなんて喜ばしいものじゃない バットエンド処刑されて終わりなのだ こんなことを思い出すなら前世を思い出したくなかった さっき言ったこととは真逆のことを思うのだった…

辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~

香木陽灯
恋愛
 「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」  実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。  「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」  「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」  二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。 ※ふんわり設定です。 ※他サイトにも掲載中です。

処理中です...