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従者
従者4
しおりを挟むその日、自宅に戻ってから東雲さんにメールを送った。
今回の謝罪とそして二人で会って話しをさせて欲しいと。
彼女からのメールの返信が来たのは夜遅くだった。
返信が遅くなった事への謝罪と会う事への承諾の返信にほっとする。
9月の学校が始まる前に会いたいことを伝え、数日後いつもの部屋で会うことになった。
「失礼します」
「お待ちしていました」
もっと自分に向けられるものは嫌悪とかかと思っていたのに、社会科準備室のこの部屋に入ってきた彼女は、驚くほど普通で拍子抜けしてしまう。
そんな事を悟られないように、紅茶の準備を始めた。
背中に彼女の視線を感じる。
これから何を言われるのか、私はやはり不安に駆られていた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
彼女の前に紅茶の入ったマグカップを置き、私が向かい側の席に座ると、彼女が何か袋から取り出し私の前に置いた。
「ディズニーランドのお土産なんです、どうぞ」
「・・・・・お友達と行ったんですか?」
急に差し出された品に途惑う。
あんな事をしていて、私にお土産なんて。
「えっと、藤原と行ったんです」
思わず目を見開く。
少し恥ずかしそうに話す彼女に、自分が思うより遙かに二人の距離が近づいた事を理解した。
もう私の知っていた時の二人の関係では無いのだろう。
「・・・・・ありがとうございます、頂きます」
受け取りながら涙が出そうになる。
良かった。
彼女をあの夜、光明に会わせた私の判断は間違ってはいなかった。
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