月曜日の巫女

桜居かのん

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一輪の薔薇

一輪の薔薇16

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見上げていた冷たかった瞳が、わかりやすいほどに揺らいでいる。

私に向けられていた顔が、すっと反らされ、辛そうに瞳を閉じ、唇をぎゅっと結びながら、何かに抗っているかのようだった。

少しの間だったか、それとももっと長かったのかわからない。

ゆっくりと、私の両手が解放された。


「お前は、本当に・・・・・・馬鹿だな」


目の前には、涙をためた、綺麗な瞳が私を見下ろしていた。

私は、まだ少し痛みの残る自由になったその両手を動かし、涙を浮かべたままの藤原の頬を、両手で包んだ。


「馬鹿なのは、そっちだよ」


私が笑いかけると、またふい、と顔を背け、そのまま私の左側にどさりと身体を下ろした。

私に顔を背けていてるせいで、すぐ近くにある髪の毛が、私の頬にふわりとあたる。


「・・・・・・あぁ、そうだな」


ベットで私とは反対側を向いたまま、そう藤原は呟いた。

私はすぐ横にある藤原の髪に手を伸ばすと、ゆっくりと撫でた。

なんだか大きな子供が拗ねて寝ているみたいだ。

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