月曜日の巫女

桜居かのん

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来訪者

来訪者31

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「じゃ、じゃぁ、私じゃなくても元栓とかなら開けられるじゃない!」


比喩とわかっていても、藤原から私は特別では無かったと言われた気がした。
思わず何故か焦ってしまう。
そんな私を藤原はわかっているかのようにじっと見ていた。
何故かその目の奥が凄く冷たく感じて怖くなる。


「誠太郎は勘違いしているようだが、お前はさっきの例で言えば、
即座に水源を見つけ元栓を開けてこられたんだ。
他のやつらは消火活動で精一杯で、水が無くなることすら気づいてなかったし。
でもそうやって行動して見つけられるヤツは少ない。
そういう点ではお前には才能があると思うが、
だからといって巫女に結びつけたのは短絡的すぎる」


言葉の端々に感情を感じない。
私は少し俯きがちに話す藤原を、正面からじっと見ていた。
その表情はどんどん無くなっていくように見えた。


「藤原は」


聞きたいことがある。でも。
思わず先に名前を呼んでしまった。
藤原の顔がゆっくりと私の方を向いた。
やはり表情はない。
私はごくりとつばを飲み込んだ。


「藤原は、巫女が嫌いなの?」


少し声が震えていたかも知れない。
この話しになる度、藤原は表情を無くす。
そしてどうみても拒絶しているようにしか思えなかった。
聞くのは怖い。
でも聞かずにはいられなかった。
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