月曜日の巫女

桜居かのん

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月曜日の憂鬱5

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『良かった。これでこの代も藤原家は安泰だ』


『本当に。このままではーーに渡るかと』


何?なんの話し?

何も真っ暗で見えないが、ざわざわと大人の話す声だけが聞こえる。


『既に相手は決めてある。後はーーを見つけるだけ』


『長く務めてもらうためにも、早く見つけて欲しいものだ』


何を見つけるの?
何故か所々よく聞こえない。
真っ暗な中でざわざわと声だけが聞こえるが、
何故かその声がとても不快に感じた。

ふと側に人の気配を感じて驚いて横を見る。
そこには小さな男の子が俯いて正座をしていた。
俯いていているので顔は見えないが、
膝に置いている小さな手はぎゅっと握りしめられ、小刻みに震えている。
またざわざわと声が聞こえ、
その不快な声がこの男の子に向けられているものだとわかった。


『あぁ、この子はこの声に耐えているんだ』


再度必死に握りしめている男の子の手を見て、
私はふつふつと怒りが湧いてきた。
何やら勝手な事を言っている相手に言い返してやりたい。
震えるこの子を守ってあげたい。
でも、何て言えばいいの?
私なんかが大人達に上手く言えるの?

未だ大人達の不快な声は消えない。


『酷い。この子が必死に耐えているのがわからないの?!』


だけど何を言い返して良いのかわからない。
だって本当はなんて言われているのかすら、きちんとわかっていないのだから。
声はどんどん大きくなる。


『このままじゃこの子が声に飲み込まれる!』


思わず男の子を抱きしめようと、私は手を伸ばした。
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