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1月○日、千両役者、そして狛と朱雀の番
66.描々猫々、初雪が降りまして!
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――懐かしい歌が聞こえる。
雪やこんこ、霰やこんこ
降っても降っても、まだ降りやまぬ
犬は喜び、庭駆け回り
猫は炬燵で丸くなる
1月1日、初雪がこんこんと降りました――
「ゆーきやこんこん! あられやこんこん!」
除夜の鐘と共にミィの大声が響く。
「まーた懐かしい唄だな」
「にゃー、とらのすけ。この歌は動物がいっぱい出てくるにゃー。猫や犬、それに狐まで!」
ミィの言葉に俺は鼻で笑う。
「ふふふ、ミィはバカだなぁ……コンコンって狐の鳴き声じゃなくて『来い来い』って意味なんだよ」
「にゃるほどー。……って、とらのすけがミィのことバカって言ったにゃ! バカって言った方がバカなんだにゃー‼︎」
……まぁ実は、俺もこんこを『コンコン』って思い、キタキツネでもいるのかなぁと勘違いしていた時があったのは内緒だ。
何年か前、独りでインスタント蕎麦を黙々と啜りながら、年越しを待つ際に観たテレビで、この情報を知った。
獣神姿のミィは、バカにされた事を怒りつつ、歌詞の通り炬燵でゴロゴロしている。
「しかし、本当に猫って炬燵好きだよなぁー。てかミィ、お前さっきわんこ蕎麦の様に年越し蕎麦をあれだけ食べて、すぐにごろごろしたら牛になるぞ?」
「もうもうみたいになれるなら良いにゃー!」
まぁ、確かに孟々さんみたいに育ってくれるなら……いいかも。
「けど雪の中、本当に犬は駆け回るのかなぁー」
「あの犬なら駆け回るにゃー」
「あの犬?」
「狛犬だにゃー」
年明け早々、初意味不明発言をするミィと、東京では珍しく初雪がコンコンと降っている。
コンコンと言えば、あの人。
陽子先生は年越し蕎麦を作った後に、神社の手伝いに行くと言って出掛けていった。
そして粛々と除夜の鐘が響くのと共に、今度はスマホからメッセージアプリの着信音も響き渡る。
――みんな、あけましておめでとう!
カノ子ちゃんのアケオメメールを皮切りに、文化祭の時に作ったグループメールが騒ぎ出す。
櫻さんから初詣の集合時間などの業務連絡が届き、俺は高校に入学して初めて、寝正月からの卒業となる。
この数ヶ月、絵世界のことでバタバタして疲れ果てたけど、こうして他人と交流する日が来るとは夢にも思わなかった。
「何をニヤニヤしてるんだにゃ、とらのすけー?」
「ん? あ、いやぁー、生きてて良かったなぁーって」
「そんなの当たり前だにゃ、とらのすけはやっぱりバカだにゃ」
「おい、バカって言った方がバカなんだろ?」
「にゃら、とらのすけは大バカだにゃー!」
「なんだとーッ!」
「にゃははーっ!」
いつも独りだった俺が、こうして誰かと戯れあったり笑いあったり……
何だか……
よくよく考えてみると案外、絵世界に感謝しないといけないのかもなぁ。
それから仮眠を取って数時間が経ち、みんなで初詣に行く為、カノ子ちゃんを匿っている鳳家へと向かった。
大きな屋敷の前には、白ベースに牡丹が映える振袖姿のカノ子ちゃんと、緑ベースに鳳凰が舞う着物を纏った櫻さんが出迎えてくれた。
きれいだ……
そんな中で俺とミィは、ただただ無地の防寒着姿で少し恥ずかしくなる。
「トラくん、ミィちゃん! あけましておめでとー!」
「ミィ、おめでとう。ついでに虎之助も」
「お、おめでとうございます。二人とも凄い格好だね……」
「ふにゃ! 鹿娘は置いといて、鳥娘は中々似合ってるにゃー!」
「あら、嬉しい。ミィも着てみる?」
何気ない櫻さんの言葉に、着せ替え人形が大好きなカノ子ちゃんの目付きが変わる。
「それいいね! 私の着物貸してあげる!」
「にゃ! 鹿娘のは嫌だにゃ!」
「私のでは大きいから、観念して御嬢様のを借りることね。さもなければ……」
櫻さんは妖力で縄を召喚し、
「これで縛って、新年初モフモフしても私は構わないのよ……?」
「ふにゃぁ……」
櫻さんのモフモフ恐怖で背筋が凍ったミィは観念し、興奮するカノ子ちゃん達と屋敷の中へと消えていった。
雪はぱらつき、凍える寒さの中、俺はひとり外で待つことに。
「遅くなって申し訳ございません、お嬢様……ってあれ? 虎之助しかいねぇじゃんかよ」
カノ子ちゃん達と入れ違いで門から出てきたのは、紋付袴に整髪料でがっつりと髪を固めた、何とも大人びた慶くんだった。
かっこいい……
……と、男ながらも見惚れていると、
「なんだよ、鳩が水鉄砲喰らった様な顔しやがって」
いや、水鉄砲じゃなくて豆!
……と、ツッコんだら怒られそうなので、話を続ける。
「えっと、あけましておめでとう、慶くん」
「ん? あー今年も宜しくな」
「それにしても、みんな凄いね。初詣だから着物でバッチリ決めてて、俺なんてこんな格好……」
「あぁ? 何言ってんだよ、俺は初詣の為じゃなくて、その後の……」
「おっ、慶ちゃん久しぶりだねぇー!」
……と、俺たちの会話を遮る渋い声。
その声の主は、以前櫻さんと一緒にいる時に出会ったイケてるオジさんだった――
雪やこんこ、霰やこんこ
降っても降っても、まだ降りやまぬ
犬は喜び、庭駆け回り
猫は炬燵で丸くなる
1月1日、初雪がこんこんと降りました――
「ゆーきやこんこん! あられやこんこん!」
除夜の鐘と共にミィの大声が響く。
「まーた懐かしい唄だな」
「にゃー、とらのすけ。この歌は動物がいっぱい出てくるにゃー。猫や犬、それに狐まで!」
ミィの言葉に俺は鼻で笑う。
「ふふふ、ミィはバカだなぁ……コンコンって狐の鳴き声じゃなくて『来い来い』って意味なんだよ」
「にゃるほどー。……って、とらのすけがミィのことバカって言ったにゃ! バカって言った方がバカなんだにゃー‼︎」
……まぁ実は、俺もこんこを『コンコン』って思い、キタキツネでもいるのかなぁと勘違いしていた時があったのは内緒だ。
何年か前、独りでインスタント蕎麦を黙々と啜りながら、年越しを待つ際に観たテレビで、この情報を知った。
獣神姿のミィは、バカにされた事を怒りつつ、歌詞の通り炬燵でゴロゴロしている。
「しかし、本当に猫って炬燵好きだよなぁー。てかミィ、お前さっきわんこ蕎麦の様に年越し蕎麦をあれだけ食べて、すぐにごろごろしたら牛になるぞ?」
「もうもうみたいになれるなら良いにゃー!」
まぁ、確かに孟々さんみたいに育ってくれるなら……いいかも。
「けど雪の中、本当に犬は駆け回るのかなぁー」
「あの犬なら駆け回るにゃー」
「あの犬?」
「狛犬だにゃー」
年明け早々、初意味不明発言をするミィと、東京では珍しく初雪がコンコンと降っている。
コンコンと言えば、あの人。
陽子先生は年越し蕎麦を作った後に、神社の手伝いに行くと言って出掛けていった。
そして粛々と除夜の鐘が響くのと共に、今度はスマホからメッセージアプリの着信音も響き渡る。
――みんな、あけましておめでとう!
カノ子ちゃんのアケオメメールを皮切りに、文化祭の時に作ったグループメールが騒ぎ出す。
櫻さんから初詣の集合時間などの業務連絡が届き、俺は高校に入学して初めて、寝正月からの卒業となる。
この数ヶ月、絵世界のことでバタバタして疲れ果てたけど、こうして他人と交流する日が来るとは夢にも思わなかった。
「何をニヤニヤしてるんだにゃ、とらのすけー?」
「ん? あ、いやぁー、生きてて良かったなぁーって」
「そんなの当たり前だにゃ、とらのすけはやっぱりバカだにゃ」
「おい、バカって言った方がバカなんだろ?」
「にゃら、とらのすけは大バカだにゃー!」
「なんだとーッ!」
「にゃははーっ!」
いつも独りだった俺が、こうして誰かと戯れあったり笑いあったり……
何だか……
よくよく考えてみると案外、絵世界に感謝しないといけないのかもなぁ。
それから仮眠を取って数時間が経ち、みんなで初詣に行く為、カノ子ちゃんを匿っている鳳家へと向かった。
大きな屋敷の前には、白ベースに牡丹が映える振袖姿のカノ子ちゃんと、緑ベースに鳳凰が舞う着物を纏った櫻さんが出迎えてくれた。
きれいだ……
そんな中で俺とミィは、ただただ無地の防寒着姿で少し恥ずかしくなる。
「トラくん、ミィちゃん! あけましておめでとー!」
「ミィ、おめでとう。ついでに虎之助も」
「お、おめでとうございます。二人とも凄い格好だね……」
「ふにゃ! 鹿娘は置いといて、鳥娘は中々似合ってるにゃー!」
「あら、嬉しい。ミィも着てみる?」
何気ない櫻さんの言葉に、着せ替え人形が大好きなカノ子ちゃんの目付きが変わる。
「それいいね! 私の着物貸してあげる!」
「にゃ! 鹿娘のは嫌だにゃ!」
「私のでは大きいから、観念して御嬢様のを借りることね。さもなければ……」
櫻さんは妖力で縄を召喚し、
「これで縛って、新年初モフモフしても私は構わないのよ……?」
「ふにゃぁ……」
櫻さんのモフモフ恐怖で背筋が凍ったミィは観念し、興奮するカノ子ちゃん達と屋敷の中へと消えていった。
雪はぱらつき、凍える寒さの中、俺はひとり外で待つことに。
「遅くなって申し訳ございません、お嬢様……ってあれ? 虎之助しかいねぇじゃんかよ」
カノ子ちゃん達と入れ違いで門から出てきたのは、紋付袴に整髪料でがっつりと髪を固めた、何とも大人びた慶くんだった。
かっこいい……
……と、男ながらも見惚れていると、
「なんだよ、鳩が水鉄砲喰らった様な顔しやがって」
いや、水鉄砲じゃなくて豆!
……と、ツッコんだら怒られそうなので、話を続ける。
「えっと、あけましておめでとう、慶くん」
「ん? あー今年も宜しくな」
「それにしても、みんな凄いね。初詣だから着物でバッチリ決めてて、俺なんてこんな格好……」
「あぁ? 何言ってんだよ、俺は初詣の為じゃなくて、その後の……」
「おっ、慶ちゃん久しぶりだねぇー!」
……と、俺たちの会話を遮る渋い声。
その声の主は、以前櫻さんと一緒にいる時に出会ったイケてるオジさんだった――
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