百談

壽帝旻 錦候

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家電

第五話【ヴァヴァヴァヴァヴァヴァヴァ……】

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夏は暑い。
当たり前だが、暑い。
しかも、オレは貧乏学生だ。
備付のエアコンを使うのは最終手段だと思い、団扇で何とか暑さを凌ぐ日々。
そんな、オレに女神は微笑んだ!
「早起きは三文の徳」とは、誰が言ったか!
オレが言う!
いや、違うか!
とにかく。
朝早く、ゴミ出しに行ったら、ゴミステーションに、まだまだ使えそうな“扇風機”が捨ててあったんだ!

キョロキョロキョロ……

よっしゃ!
誰もいない!

オレは、まるで少女を誘拐するかのように、扇風機を大事に抱えて自分の部屋へと駆けだした。

扇風機……

オレは部屋につくや否や、コンセントを繋げ、スイッチ……ONした。

フワァァァァァァ……

風が顔に当たる。
少し生温いものの、汗ばんだ身体には心地のいい風。
これは……もう……オレのモノ!
そう思ったら、顔がニヤニヤニヤ……テンションあがる~!
思わず、子供の時の事を思い出して、扇風機の前で、「あーーーーー」って声を出してみた。
独特の反響音。

「あーーーーー」

 が

「ヴァヴァヴァヴァヴァヴァーーー」

と聞こえる。

 思わず、懐かしくなって、続けて

「わーれーわーれーはー」

と言うと

「ヴァーレーヴァーレーヴァー」

と、変な声に聞こえる。

クスリと笑うと、扇風機からは

「ヴァーーヴァーーヴァヴァヴァヴァーー」

と、奇妙な音が。

“え?”

そう思った瞬間

ウィーン! ガコン!
ウィン! ガコン!
ウィン! ガコン!

突然、首振り機能が発動した。
しかも、すぐに何かにぶつかったかのように、その場で小刻みに左右に振れ、異音を鳴らし続ける。

ウィーン! ガコン!
ウィン! ガコン!
ウィン! ガコン!

首の振りが、徐々に速さを増し、降り方も小刻みになっていく。


ウィン! ガコン!
ウィン! ガコッ!!
ウィン! ガッ!
ガッガッガッガッガッガッガッガッガッガ……

ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ……

扇風機の頭が、狂ったように頭を振っている短く刈られた、男の頭のように見えて来る。
それと共に

「ヴァヴァヴァヴァヴァヴァーーーッ!」

苦しむような。
狂ったような。
薄気味悪い声が、部屋に響き渡る。

「うわぁぁぁぁあ!」

ガッコーーーン!

オレが叫んだと共に
扇風機も大きな音を立てて、止まった。

静かになった扇風機をみると、綺麗な白いボディに……
透明感のある青い羽根に……
赤黒い点が、いくつも付いていた。

オレは恐ろしくなって、扇風機をすぐさまゴミステーションへと、戻しに行った。
そういえば。
向かいの家から、よく、夫婦喧嘩をしている声が、うちにまで響き渡って来ていたが、ここ最近、静かだ。
……あそこの旦那……
髪の毛、短く刈られていたような……

いやいやいや。
早起きは三文の徳だと。
誰が言ったか?
オレが言う。

いやいやいやいや。

早起きしても、オレには「得」どころか。

あまりの恐怖に「泣く」所だったわ。


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