多分、愛じゃない

ゆきの(リンドウ)

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あるべき恋の姿

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「戸崎先生、最近何かありましたか?」

 ドキリと嫌な音を立てた胸に気にしないフリをしながら、隣を歩く藤原さんを見た。

「いえ、いつも通りですよ」

「そうですか。なんだか最近は元気がないように見えたのでつい」

 芸術家という職業は人の機微に敏感だと言うが、まさにその通りだ。

 内心、最近のあれこれを言い当てられた気がして落ち着かない気持ちでいっぱいだった。

「お仕事的にもいろいろと大変でしょうけど、あまり根を詰めすぎないでくださいね?」

 藤原さんはきっと教職という仕事柄のことを心配してくれているのだろう。

 そう思うと仕事としては恐ろしいほどに順風満帆。というよりかは、生徒によって悩みの種類は違うし多岐に渡る業務に忙しさは増す一方ではあるが、それでも仕事としてのストレスはないように思える。

 強いてあるとするならば、職場で毎朝顔を合わせる二人についてだ。

 けれどそれも仕事とはまた別の問題。心配してくれた藤原さんに申し訳ない気持ちを抱えながら、職員玄関までの道のりを辿る。

 秋を目前とした校内は、学校祭の雰囲気が漂い始めている。

 中学校でもいわゆる小学校の学習発表会にあるような合唱は付き物だが、大きく異なるのはクラスや部活動で行う出し物。

 中学になればそれらは生徒本人の意思が尊重される。故に自分たちで作り上げたという達成感や連帯感が自然と生まれてくる。

 学校によって特色があることも魅力の一つとなるが、我が校は飲食の出し物は禁止以外生徒の自主性を尊重する点だ。

 特に三年生ともなれば最高学年、中学最後の思い出にとクラスも部活も気合いの入った出し物を試行錯誤している。

 担当である三年生のクラスは今年は『名探偵』をテーマとしたようで、散りばめられた謎を解き明かしていくそうだ。

 吹奏楽部はウェルカム演奏の他にも、観客を楽しませようと舞台仕立てのステージも用意しており、職員である教師顔負けのアイデア満載だ。

「そろそろ定期演奏会も近づいてきましたし、文化祭もありますし、生徒さんは忙しいですね」

「その通りです、本当に」

「私も気合い入れて頑張らせていただきます。生徒にとっては一生で一度の文化祭、それに演奏会ですから」
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