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動乱編
ep153 気になる
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「わかったよ。何かあれば遠慮なくお願いするよ」
俺は素直にミアの思いを受け入れた。
「うん。ありがとう」
「ありがとうはこっちだろ」
俺たちはあたたかく微笑みあった。
とその時。
突然なにかに気づいたように、ミアの視線がパッと俺の後ろのどこか遠くの方へ向けられた。
「ヤソガミくん。あれ、ライマスくんじゃない?」
「え?」
「ほら、そこの通りの先の......」
俺も振り向いてミアの説明どおりに視線を這わせていくと、通りの先の方にライマスらしい背中が遠ざかっていくのが見えた。
「確かにライマスっぽいな。休日にこっちにいるってことは、やっと実家から帰ってくるのか」
「え?」
「どうした?」
「ライマスくん、まだ寮に帰ってないの?」
「え、どういうこと?」
「わたし、昨日の夜にライマスくんと会ったよ?」
「昨日の夜って、アイツ寮には帰ってきてないぞ?」
「そ、そうなんだ。じゃあ、あれから実家に帰ったってことなのかな?」
「そうなるな。ちなみにアイツは何しにミアの店まで来たんだ?」
「また売り場で使うポップを作ってきてくれたんだ。......あっ」
「?」
「そういえば......」とミアは何かを思い出しながら怪訝な面持ちになる。
「ちょっとだけ、気になったことがあって」
「その日に何かあったのか?」
「ライマスくん。その日はやけにたくさんのポップを作ってきてくれたんだ」
「うん?」
「だからわたしもいつも以上に感謝を伝えて、お礼のパンもいつも以上にたくさんあげたんだ。それで、なんで今日はこんなにたくさん作ってきてくれたのかって聞いたらね?」
「うん」
「しばらくここには来られなくなるからって言ったんだ」
「......忙しくなるからってことか」
「わたしもそう思って聞いたら、なんだかすごく曖昧な返事で、何というか、何か言いたくないことがあるような感じだったんだよね。だからそれ以上は何も聞けなかったけど」
「なるほど」
「ヤソガミくんはライマスくんのこと、何か知らないの?」
ミアから訊ねられ、俺は改めて考えてみた。
思い当たることがあるといえば、成績が下がっていて特別クラスにいられなくなりそうだということぐらいだが、これはすでにみんな知っていることだしな......。
「実家に帰ってるってことは、家庭の事情なのか......」
俺とミアは顔を見合わせ、ともに首を捻る。
それから不意に、ミアが妙なことを口にした。
「ライマスくん。本当に実家に帰ってるのかな......」
「えっ?」
思わず俺は目を見開いた。
「あっ、べつに根拠はないよ」
ミアは焦って手を横に振る。
「そ、そうか」
「ご、ごめんね。変なこと言って」
「いや......」
ハッキリとはわからない。
だが、何かが不自然な気がしてきた。
たしかライマスの実家はリュケイオンからは遠いと聞いている。
通えなくはないが毎日の登校は大変だから寮に入ったと言っていたはず。
そんなライマスが、昨日の夜にミアの店に行って、寮には帰らず実家に帰った。
そして学校が休みの休日の今日。
リュケイオン駅前にいる俺たちの視線の先にライマスがいる。
しかも、昨夜ミアにしばらく来られなくなると言った矢先だ。
......おかしくもないが、何かが気になる。
「なあミア」
「ヤソガミくん?」
「悪いんだけどチラシ配り、中断していいか」
「!」
ミアは一瞬だけ驚いて見せたが、すぐに俺の発言の意図を察して頷いた。
「見失わないうちに行こう」
俺とミアはそそくさとチラシをしまいながら素早く駅前を後にした。
俺は素直にミアの思いを受け入れた。
「うん。ありがとう」
「ありがとうはこっちだろ」
俺たちはあたたかく微笑みあった。
とその時。
突然なにかに気づいたように、ミアの視線がパッと俺の後ろのどこか遠くの方へ向けられた。
「ヤソガミくん。あれ、ライマスくんじゃない?」
「え?」
「ほら、そこの通りの先の......」
俺も振り向いてミアの説明どおりに視線を這わせていくと、通りの先の方にライマスらしい背中が遠ざかっていくのが見えた。
「確かにライマスっぽいな。休日にこっちにいるってことは、やっと実家から帰ってくるのか」
「え?」
「どうした?」
「ライマスくん、まだ寮に帰ってないの?」
「え、どういうこと?」
「わたし、昨日の夜にライマスくんと会ったよ?」
「昨日の夜って、アイツ寮には帰ってきてないぞ?」
「そ、そうなんだ。じゃあ、あれから実家に帰ったってことなのかな?」
「そうなるな。ちなみにアイツは何しにミアの店まで来たんだ?」
「また売り場で使うポップを作ってきてくれたんだ。......あっ」
「?」
「そういえば......」とミアは何かを思い出しながら怪訝な面持ちになる。
「ちょっとだけ、気になったことがあって」
「その日に何かあったのか?」
「ライマスくん。その日はやけにたくさんのポップを作ってきてくれたんだ」
「うん?」
「だからわたしもいつも以上に感謝を伝えて、お礼のパンもいつも以上にたくさんあげたんだ。それで、なんで今日はこんなにたくさん作ってきてくれたのかって聞いたらね?」
「うん」
「しばらくここには来られなくなるからって言ったんだ」
「......忙しくなるからってことか」
「わたしもそう思って聞いたら、なんだかすごく曖昧な返事で、何というか、何か言いたくないことがあるような感じだったんだよね。だからそれ以上は何も聞けなかったけど」
「なるほど」
「ヤソガミくんはライマスくんのこと、何か知らないの?」
ミアから訊ねられ、俺は改めて考えてみた。
思い当たることがあるといえば、成績が下がっていて特別クラスにいられなくなりそうだということぐらいだが、これはすでにみんな知っていることだしな......。
「実家に帰ってるってことは、家庭の事情なのか......」
俺とミアは顔を見合わせ、ともに首を捻る。
それから不意に、ミアが妙なことを口にした。
「ライマスくん。本当に実家に帰ってるのかな......」
「えっ?」
思わず俺は目を見開いた。
「あっ、べつに根拠はないよ」
ミアは焦って手を横に振る。
「そ、そうか」
「ご、ごめんね。変なこと言って」
「いや......」
ハッキリとはわからない。
だが、何かが不自然な気がしてきた。
たしかライマスの実家はリュケイオンからは遠いと聞いている。
通えなくはないが毎日の登校は大変だから寮に入ったと言っていたはず。
そんなライマスが、昨日の夜にミアの店に行って、寮には帰らず実家に帰った。
そして学校が休みの休日の今日。
リュケイオン駅前にいる俺たちの視線の先にライマスがいる。
しかも、昨夜ミアにしばらく来られなくなると言った矢先だ。
......おかしくもないが、何かが気になる。
「なあミア」
「ヤソガミくん?」
「悪いんだけどチラシ配り、中断していいか」
「!」
ミアは一瞬だけ驚いて見せたが、すぐに俺の発言の意図を察して頷いた。
「見失わないうちに行こう」
俺とミアはそそくさとチラシをしまいながら素早く駅前を後にした。
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