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一章

第2話『異世界東京』(2/3)

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 ラピスはヒロへ言う。
「ねね、ヒロ。今の科学を超えた物をみたら、魔法に見える?」

 なにを言っているのか、その意図もわからず、とりあえずヒロは言葉を返した。
「なんだよ、藪から棒にさ」

 するとラピスは興味深そうに聞いてきた。
「ほら、ヒロって大学で研究しているんでしょ? そうした人の目線ではどうなのかな? ってね」

 ヒロは自分なりの回答をラピスに伝える。
「そう言われてもな……。ん~原理がどうなっているのか真っ先に考えてしまうかもな」

 ラピスは何か予測していた通りなのか、妙に機嫌が良く聞こえる。
「やっぱ目の前の現実を受け入れられるタイプなんだね」

 ヒロにとっては当たり前すぎることだったので、改めて自分の考えを伝えた。
「そりゃあさ、自分の考えとは別に起きている事象があるなら、どうやってこうなるのかと考えて再現できるかが科学なんじゃないかな?」

 ラピスは楽しそうに言葉を返す。
「うん、うん。そうだよね! そうだよね」

 あまりにも嬉しいオーラが強いので逆に気になり、ヒロはラピスへ問いかけた。
「なんだ? 妙に嬉しそうだな……」

 ラピスは自身の存在について、認めてほしかったかのようで声が弾んでいる。
「そしたらさ、あたしがこうして存在しているのもようやく、認知してくれたってことだよね?」

 認めざるを得ないとヒロは思いを伝える。
「まあ、そうなるか……」

 すると今度は、ラピス自身のことを語り出した。
「あたしね、夢があるの」

 ヒロはあまりにも唐突な展開なので聞き直してしまう。
「夢?」

 ラピスは突拍子もないことを言い出した。
「うん。肉体を手に入れるの」

 今の科学では当然考えられなくて、ヒロはラピスへその手段を興味深く聞いてみた。
「え? どうやって?」

 突然とんでもないことをラピスは言い出した。
「生体プラントを作ってあたしの意識を多重化するわ」

 こともあろうか、最も簡単に作り出すと言い出すあたり、相当な科学力なのだろう。
 ヒロはすごいなと思う反面、どのような技術なのか興味を持ちつつ言った。
「そんな技術見たことないぞ?」

 自身の知識と科学技術の証左を、ラピスは軽くだけ触れる。
「あたしね、色々な世界をめぐってきたの。だから……」

 またしてもわけのわからない回答がやってきたので疑問を返す。
「うん?」

 ラピスは具体的には今は語らず、その規模感を示した。
「科学技術の知識は世界一よ?」

 どこか絶句してしまうような、そのような気がして一言ヒロは返す。
「マジか……」

 ラピスは気軽に答えた。
「うん、マジのおおまじよ?」

 最も素朴で純粋な疑問をヒロはラピスへ尋ねた。
「そんで、俺の中にいてどうやるんだ?」

 これもまた、科学技術のなせる技とも言えることをラピスは言い出す。
「ナノマシンを作るナノマシンを用意すれば、あとは比較的、楽なの」

 ただその回答を聞く限り、かなりヒロは不安になる。
「それを俺の体内でやるのか?」

 ラピスは、本当の本当に少しだけと、曖昧な言葉を言う。
「ちょっと一時的にね」

 ラピスのあえて曖昧な回答をしたことでヒロの不安は増大していき言った。
「おいおい大丈夫なのか?」

 ヒロへウインクをしながらラピスは、自信満々に告げた。
「任せて、その代わりヒロにいいものをあげる」

 シンプルに何なのか疑問を覚え聞く。
「なんだ?」

 これまた、とんでも科学と言うべき発言がラピスの口から出る。
「液体金属の武具よ?」

 もうどの世界ならここまでの科学技術を実現できるのか、ヒロは呆れと感嘆で半々な気持ちを吐露する。
「すごいな……。まだ実現できていない領域だぞそれ?」

 ラピスはこの短時間でこの世界の技術力の限界をあっさりと見破っていた。
「今の科学を超えているからね」

 攻撃的な物を彷彿させる物のため、ヒロは疑問があり尋ねる。
「それってさ、今の平和な時代には物騒じゃないか?」

 ところが平然として、まるで明日の天気予報かのようにラピスは明日を語る。
「平和? 何言っているの? もうすぐ紛争が起きるわ」

 その時である、何か大きな振動が下から伝わる。
 まるで底から打ちつけてくるような地響きに近い振動だ。

 ヒロはもしや大地震かと思い冷や汗が噴き出し言う。
「え? 地震?」

 ラピスはすぐにわかったのか、ヒロを誘導する。
「違うわ。きて」

 ラピスの声に導かれて研究室をでて渡り廊下にある窓から外を眺める。
 すると何か異様な光景をヒロは目にする。
「なんだ?」

 二階のため、外での出来事も音と声はよく伝わる。
 小太りの見かけ高校生ぐらいの男子生徒風の者がなぜか黒いマントをつけ、小脇に抱えるような姿勢で両手に光を集めていた。

 高校生風の男子は、大きな声で掛け声を出すと、最後の一文字のタイミングで光を放つ。
「やー・み・ば・い・トォ!」

 小脇に抱えているような仕草の手が両腕をまっすぐに伸ばし、掌底のような手つきでまるでビームと言わんばかりの光と、その斜線上にある建物や車を蒸発させていた。

 ヒロは思わずつぶやく。
「マジで?」

 すると、ラピスは半分残念そうで、もう半分は期待した通りのような感情でいう。
「あ~あ。始まっちゃった」

 まるで起きることを予測していたかのような言いっぷりだ。
 ヒロはすかさず問う。知っていたのかという物ではなくどうやったのかということだ。
「どうやったんだ? あれは……」

 ラピスはヒロの疑問に嬉しそうにする。
「そこで、なんで知ってたと聞かないのはやっぱヒロね」

 少しばかり興奮気味のヒロはいう。
「目の前の事実確認だ。あんな技術見たことないぞ」

 なぜか得意げなラピスはゆっくりとヒロに説明を始めた。
「でしょーでしょー。あれはね魔力の塊よ? 単に持てる魔力を放出しただけね。でもシンプルな分威力は絶大よ?」

「魔力だって? 俺たちにはそんな物を生成する器官や器具どころか、エネルギーはまだ発見されていないはずだけど……」

 その時、ヒロは興奮していたのか手に汗握っていたのか、唸るような振動音を手に感じていた。

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