コスモス・リバイブ・オンライン

星海から訪れる侵略者

データ整理

　離脱に成功したら、Ｚのことをダァンの統治者に伝える必要がある。

「何があったか詳しく聞かせてもらえませんか？疲れているところを申し訳ないんですけど」
「構わない。我々も状況を理解しているさ」

　セントラルステーションで一体何が起こったのか。
それを知る必要がある。
彼らが必死の思いで記録したデータもあるけど、相対した者の主観交じりの情報も欲しい。


　代表者を選出するのではなく、聞き取りは全員から行う。
情報を一つでも多い方がいい。
聞き取りはアウラさんたちに任せて、僕は剣闘機の記憶装置をチェックする。
そっちにも何か重要な情報が記録されているかもしれない。


「これはきつい」

　剣闘機の記憶装置には凄惨な光景が記録されていた。
覚悟していたけど、これは酷い。　
　それは警備軍がＺに無残にも殺される映像だ。
人間がＺに食べられている場面もしっかりと残されている。
　目を覆い隠したくなる。でも、惨劇から目を背けるわけにはいかない。
ここに何か重要なことが映っているかもしれないのだから。


　剣闘機ごとに残されている記録が微妙に違うため、全てをチェックする必要がある。
データは甲板に止まる剣闘機の数よりも多い。
Ｚにやられた剣闘機の物も含まれているからだ。パイロットが死ぬ前に僚機に転送したそうだ。
決死の想いで託されたバトン。無駄にしてはならない。


　託されたデータ、そのどれにも人が殺されている場面が記録されている。
精神が擦り減っていくのを感じる。今は我慢だ。
　ダァンの統治者たちに事態の深刻さを理解させなければならない。
そのためにも馬鹿でも分かる資料を作成しないと。
不快感、怒りを抑え、データを抜き出していく。

「大丈夫か？代わろう」
「平気です。時間がないので僕がやります」

　ボナさんの申し出は有り難いけど、断る。
こういう作業は僕がやった方が早い。

「無理するではない。疲れているのだろう。任せておきなさい」

　ボナさんから椅子から引きずり降ろされた。
武の達人であるボナさんには抵抗できない。お言葉に甘えることにした。

　
　マイグラントはモンスターの領域から脱出。
その後、線路沿いに進み、最寄りの駅に到着した。
　中規模の駅だけど、警備軍を駐留している。
ここなら安全だろう。このままだと、ここも危険になるけど。


　最初に警備軍から送られてきたデータ、聞き取り調査の結果、剣闘機から抜き出したデータ。
Ｚの戦闘力と特性、そしてこれから起こりうる災厄。
その五つを纏めた物をダァンの統治者たちに提出する。
　もう時間なので一度ログアウトする。
続きは明日だ。ちゃんと理解してくれればいいけど。
　

　警備軍救出から数日経った。
すでに討伐作戦は開始されている。
実はデータを統治者に顔が利くボナさんから提出してもらったのだ。その甲斐があった。


　報告を受けて、ダァン上層部は緊急事態条項レベル５を発令。
これはダァンにおいて、最高レベルの対モンスターの法律。寅の時も発令されたそうだ。
発令されると、鉄道警備軍は勿論、ハンター、コロッセオの剣闘士も強制動員される。

　
　市民の強制疎開なども盛り込まれているため、不満も高まる。
そのため、滅多に発令されるものじゃない。ダァンの歴史の中でも発令されたのは二桁も行かないらしい。
一年も間を開けずに発令されたのは今回が初めてだそうだ。


　討伐作戦には僕らは非参加。お留守番だ。
参加したくても参加できない。
　人間もそうだけど、ロボットの疲労も大きい。
死闘二連戦はそれだけ機体に大きな負担が掛かったのだ。
機体だけじゃなくてマイグラントのダメージも重い。


　機体も戦艦もまだ修理できない。
ダァンに持ち込んだパーツだけじゃ足りなくなってしまったからだ。
　僕らはダァンでこの規模の戦闘に参加する予定はなかった。
パーツが足りなくなるのも当然だろう。
それでも十分な数を持ってきたんはずなんだけどね。


　補給のためにベース２２に戻っている時間はない。
そこで物資をコンテナに積めて、それを投下してもらうことにした。
　投下場所は周囲への影響を考え、海に落としてもうら。
回収も秘密裏に。いちいち説明するのも面倒だし。


　物資回収には一矢を除く専任パイロット陣に行ってもらった。
整備は不完全だけど、回収ぐらいならできる。海のモンスターにも負けはしない。
予定ではもうすぐ帰ってくると思う。