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星海から訪れる侵略者

全てを喰らう

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 足跡は途中で二手に分かれていた。
一つには血が滴り落ちた痕が残っている。
おそらく、ゴブリンの死体を運んでいるのはそっちだろう。


 僕らも二手に分かれて追跡することも検討された。
どんな脅威が待っているのか分からないのに、戦力を分散するのは避けるべきという意見があり、片方を選ぶことになった。
 追跡するのは血がない方。
死体を運んでいることから、そちらに襲撃者たちの拠点がある可能性が高い。
正体が分からない状態で向かうのは危険すぎる。


 途中で別方向から足跡が合流した。
ゴブリンの死体が運ばれていった方角からだ。
戦力低下を補うために、仲間が合流したのかもしれない。
 足跡が続く先に待っていたのは、コボルトの集落……その跡地だった。
ゴブリンと同じく何も残っていない。ここもゴブリンたちと同様の末路を送ったのだろう。


 コボルトの集落にも足跡が残されていた。
追跡を再開したが、言いようのない悪寒はどんどん増していく。
本当に追跡しても大丈夫なのだろうか?


 謎の襲撃者はモンスターの拠点を襲っていると思われる。
足跡が続く先にもいくつかモンスターの拠点がある。
一番近いのはオークの拠点だ。
 その規模はダァンでも最大級。オークナイトの存在も確認されている。
鉄道警備軍とハンター互助会も易々と手が出さない規模なのだそうだ。


 いくら襲撃者が強くてもそちらに手を出すとは思えないけど。
その予想に反し、足跡はオーク拠点まで続いているようだった。

「ジャミング領域に侵入しました」
「オークの物?」
「分かりません」

 ジャミングを行っているのがオークだったら、まだいい。
これが謎の襲撃者だと面倒だ。
 レーダーや通信に干渉できる種はどれも油断ならない。
戦闘となったら、苦戦は必須だろう。


◇オーク拠点

 御方のために。
それが我らが存在する意味。
 御方は人間という劣等種の存在を認めていない。
我らは劣等種共を駆除するために、この星にやってきた。
 

 ここは長い年月を掛け、作り上げた我らの拠点。
ここを足掛かりに人間を滅ぼす準備をしていた。
 だが、その目論見は崩れた。
我が軍は壊滅状態にある。
 

 敵は人間じゃない。
このような存在、御方にも聞かされていない。
 それは形容し難い者。
同胞が次々と殺されている。喰われているのだ。


 頭を恐怖が支配する。
雄叫びをあげ、それを振り払う。
 我は偉大なる御方の兵。
恐怖で怯むなどあってはならない。


 金棒を手に、襲撃者に攻撃を仕掛ける。
部下に馬乗りになっている敵に金棒を振り下ろす。
 渾身の一撃だったのにも関わらず、敵は生きている。
だが、引き剥がすことはできた。

 
 何度も金棒を打ち付け、敵を撲殺した。
我らオーク族も頑強さに秀でている。
しかし、奴らは我ら以上の頑強さを備えていた。


 背後から断末魔の悲鳴が届いた。
後衛が襲撃を受けている。
 伏兵だと!
目の前の襲撃者たちの眼光には愉悦が浮かんでいた。


 背後を突かれたことで、戦線は完全に崩壊。
生き残りも次々と奴らに喰い殺されていく。
 力ならこちらが上だが、それは一対一の場合。
複数体に組み付かれてしまって、振り払うことはできない。


 同胞を殺し終えた襲撃者が我に群がってくる。
その内の一体が大口を開け……



 偵察機が届けた映像。
それはオークが虐殺されていく惨劇だった。
オークは人に仇なす害獣だけど、さすがにこれは同情を禁じ得ない。
 あまりの惨劇に艦橋は沈黙に支配されている。
あのオークが成す術もなくやられるなんて。

「酷い光景ねー」

 それを打ち破ったのはアウラさんだった。
場にそぐわない呑気な発言だったが、これがなければ、沈黙は続いていただろう。
 無人偵察機からの映像が途切れる。
どうやら、偵察機が破壊されたみたいだ。三機出していたが、全てやられたようだ。
あれ結構高価なんだけどなぁ。

 
 警戒すべきなのは単純な戦闘力だけじゃない。
伏兵を使う狡猾さ。偵察機の存在に気付く勘の鋭さ。
その全てが脅威だった。


 戦うのなら闘う、逃げるのなら逃げる。
早く決断しないと。
偵察機が見つかったのだから、マイグラントが見つかるのも時間の問題だ。


 あれはモンスターを駆除してくれる益獣じゃない。
人間に害を及ぼす存在だ。
 見た目で判断したんじゃない。あいつらは人間も食糧とする。
あいつらはオークが殺した人間の死体を貪り食っていたのだ。滅茶苦茶グロかった。


 すぐに気づいて、映像を切ったんだけど、僕以外に目撃した者がいる。
その運が悪い者はパッション君だ。
 その衝撃映像を目撃してしまったパッション君は青ざめていた。
僕もグロは得意じゃなかったんだけど、コネコで慣れている。



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