コスモス・リバイブ・オンライン

絆と禁忌

断てぬものなし

　アッシュグレイブに取り付けた晶刃を起動させる。

「伸びろ！アッシュグレイブ！」

　晶刃は起動すると、その刀身は巨大化を始める。
刀身の長さは瞬く間にシュライストの全高を越えたが、まだ巨大化は終わらない。
最終的にその長さは３０ｍ以上に達した。


　アッシュグレイブを上段に構え、ブースターで加速しながら二体の大型恐竜に向けて、急降下する。

「一刀両断！」

勢いを殺さずにアッシュグレイブを二体の機獣に振り下ろした。
　晶刃はトライクスの増加装甲を飴細工のように砕くと、その奥の機獣本体に到達。
トライクス自身が持つ鉄壁の守りを突破し、その体を左右に裂いた。
　

　ケルンを破壊できたかどうかは分からない。だが、そんなことはもはや関係ない。
トライクスは晶刃によって一刀両断されている。
たとえトライクスでも体を真っ二つにされて生き残れるわけがないのだ。


　ティタノサウルスに通信を試みたが、繋がらなかった。
晶刃の一撃に乗組員も巻き込まれたらしい。この方が良かったかも。
下手に敵地に取り残されるより、死に戻った方がマシだと思う。


　アッシュグレイブの晶刃の仕組みはＣバリケードと同じで、クリステラエレファンの牙が使われている。
エレファンの牙はエネルギーを受けることで膨張する特性がある。
Ｃバリケードは防壁になったが、晶刃では巨大な刃になるのだ。


　エレファンの牙は膨張させる時に使うエネルギーの種類によって、膨張率などが変化する。
色々と実験した中で一番相性が良かったのはライフストリームだ。
膨張率、膨張速度、強度も申し分ない。
　Ｃバリケードは普通に電力を使っている。
ライフストリームを使うということはライフクリスタルを使用することになる。
あれは危険物だから、採用しなかった。


　実は晶刃は今の倍ぐらいまで伸ばすことが可能だ。
だけど、それをすれば、大きすぎてシュライストでは扱えなくなる。
そのため、このサイズに押さえてある。


　晶刃は一度膨張させたら、元の大きさに戻すことはできない。
こんな巨大な剣を持って移動できない。
勿体ない気もするけど、Ｃバリケードの時のようにエネルギーを流し込むことで刀身を崩壊させる。


　アッシュグレイブの柄に問題は起きていない。
晶刃の扱うために強度を追求したおかげだ。
　だけど、アッシュグレイブを振り下ろした補助腕は四本とも故障している。
大型機獣を同時に二体叩き切ったことが原因だろう。かなりの負荷が掛かったみたいだ。


　補助腕が壊れるのは予想できていた。
彼らが犠牲になってくれたおかげで、シュライストの両腕は壊れていない。
無傷というわけじゃないけど、修理の必要はなさそうだ。


　シーカーズに帰還命令を出す。
あとは何もしなくても待っているだけでシュライストまで戻ってきてくれる。
　その間、シュライストのパラメーターをチェックする。
ダメージはあるが、戦闘の継続は可能。応急処置の必要もなさそうだ。


「……そうだ。あれを持っていこう」

　ちょっとした作戦を思いついた。
離れる前にある物を採取しておく。


　本陣に到着するまで多少猶予がある。戦闘中に補給するのは難しいので、今のうちに補給をしておこう。
まず、シュライストのリキッドサーキットからポーションを抜く。
今のポーションにはライフストリームが残っておらず、色が付いただけの水になっている。
　ポーションは地上に散布されていく。
ライフストリームはないが、栄養は残っているので、植物たちにとっては良い肥料になるだろう。


　ある程度ポーションを抜いたところで放出を停止させ、コックピット内にある給水口に替えのポーションを注ぎ込む。
コックピットの給水口は予備。一度に大量のポーションを入れることはできない。
コックピットは揺れているので、溢さないように慎重にポーションを注いでいく。
別に溢して機器類に掛かったとしても、防水仕様なので大丈夫なんだけど、ポーションが勿体ないし。


「レーダーに反応？」

　結構速い。飛行型機獣で間違いないだろう。
反応があった方向に注目すると、赤い影がこちらに接近してきた。
交戦の意思はなさそうだ。


「何でこんなところに？」

　赤い飛行型機獣は鳥型だった。この機獣は鳥マニアの愛鳥の会も所持していない。
プテラセプターと比類するほど強力な機獣だった。
　鷹型ホークノーブル。テラーコングと同じく帝国の象徴とも呼べる機獣の一つだ。
これを所有しているのは帝国派でも限られている。それに施された赤い塗装。
間違いない、帝国の精鋭部隊だ。