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絆と禁忌

ひたすら残念

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 スコーピロイドの毒を恐れる必要はなくなったが、毒抜きでも上位の機獣以上の力がある。 
それにスコーピロイド以上の錬金獣が出てくる可能性は捨てきれない。
洗脳……違った、改心したスコーピロイドのパイロットの情報では、スコーピロイドの運用がやっとでそれ以上の研究は進んでいないそうだが、短い期間で研究が劇的に進むことだって、ありえないことではない。
警戒はしておこう。


 勝利には獣機人が必要不可欠だ。
BHボンドを与えられた面々は同調率を高めるために訓練中。
何も知らない人間が見たら、単に機獣とじゃれ合っているようにしか見えないけど。


 レオブレイブスにもBHボンドを支給したかったが、一機も余ってはいない。
既存の物は支給したパイロットに合わせて調整しているため、ハーライオさんたちには使いこなすことはできないし、彼らに合わせた調整をしている時間はない。
でも、彼らならBHボンド無しでも大丈夫だろう。


 僕はブロンライオと交信を試みている。
レオブレイブスには機獣の通訳を頼まれたのだ。
 好きな物や嫌いな物、やめてほしいことなどを聞き出す。
会話してみて分かったんだけど、彼らはハーライオさんよりもよっぽど勇者っぽい。


 磨く時のワックスの指定などはあったが、そこまで細かくはない。一体を除いて。
その一体とはハーライオさんの相棒のブロンライオだ。

「心の準備はできてますか?」
「おう!まあ、俺とこいつは心が通じ合っているから、聞く必要はないと思うがない」
「ちゃんと聞いておいた方が良いですよ」

 じゃないと、最悪の場合ブロンライオから見放される。


 大きく空気を吸い込み、矢継ぎ早にブロンライオから苦言を彼に浴びせる。

「コックピット内でボロボロと食べ物をこぼすな。怒られたからってコックピットに逃げてくるな。ちゃんと風呂に入れ。乗るときは綺麗な靴に履き替えろ。触りたいなら手を洗え」
「ちょ、ちょっと待て!」
「何ですか?まだまだあるんですけど」
「本当にこいつが言ったのか!?」
「はい。あと、こいつと呼ぶのも禁止だそうです」

 全て言い終えるとハーライオさんは真っ白になっていた。
こんな風に思われているとは思っていなかったのだろう。
 それに彼を見る女性陣の目が厳しい。
風呂に入らないとか不潔なので、当然の反応だ。


 開戦はおそらく今日の正午。
それまでに不当に占拠した砦を放棄し、ジラリンフ王国の領土内から出て行かない場合、攻撃を仕掛けるとローランドさんが共和国に通告したのだ。
 それを受けた共和国軍は砦を出発し、この町へ向けて進軍を開始している。
予想通り籠城戦はしないらしい。

 
 あの砦で籠城するのは不可能。
あそこは元々ジラリンフ王国の物だ。
 ローランドさんの父親は敵に利用されないよう占拠される前に、砦の防衛設備を軒並み破壊したそうだ。
砦の外壁もそこまで強固ではないので、籠城すると逆に不利になる。それにあの砦の規模では共和国軍は入りきらないらしいし。


 Cバリケードを警戒しているのか共和国軍の行軍スピードは激遅。
もうないのに。
 同じ罠を二回も仕掛けるほど馬鹿じゃない。
そもそもCバリケードは前回でほとんど使い切っているし。


 その代わり、棘が突き出る装置を仕掛けておいた。
僅かに残ったCバリケードを分割改造して、作った物だ。
 棘には機獣の足を貫くほどの威力はないが、嫌がらせにはなるだろう。
でも、材料が少なすぎて、数は用意できなかった。


 そこで数を補うために何の変哲もない金属の塊を埋めてある。
地表からは金属塊と装置を判別はほぼ不可能だ。
敵軍は装置だけでなく、金属塊も警戒せざるを得ないだろう。
 なお、ただの金属塊を埋めることを発案者は僕じゃない。
よくこういうこと思いつくよね。感心する。 


 早朝に出発したはずの共和国軍の位置は、町よりも砦の方が近い。
一方、こちらはすでに部隊の展開が終わっており、共和国軍を待ち構えていた。
昨日、回収したレオブレイブスのダメージは抜けており、戦列に加わっていた。


 テラーコングも二体とも出撃している。
パイロットはローランドさんではなく、領軍のベテランパイロットだ。
ローランドさんはパイロットの訓練はまだ受けていないのだ。
 本来テラーコングたちは自身が選んだ人間以外乗せたがらないんだけど、今回は受け入れていた。
彼らは友であるローランドさんの父親と兄の仇を取るつもりらしい。


 僕はというと、本陣から数十km離れた場所で三号機と共に待機。
その時を静かに待つ。
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