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滅びし水晶の惑星
チキスタル
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「気にすることはないです。もう覚悟は出来てます。最期に人と話せて嬉しかったです。クリアが晶隷化したら、介錯してほしいです」
クリアはすでに諦めていた。
だけど、諦めるのはまだ早い。
「薬があるんでしょ?どこにあるの?」
「現物はないです。レシピを知っているだけです」
「じゃあ作れば!」
「残念ですけど、材料がありません。希少な素材ばかりなので、もう手に入らないです」
クリアは薬学の勉強をする学生だったらしい。
クリスタルスリープで多くの事柄を忘却していても、薬の知識に欠落はなかったらしい。
それだけ真剣に学んでいた証左だ。
「持っているかもしれないから、詳しく教えて」
クリステラ探索中、お土産以外にも目に付くアイテムを欠かさずに採集している。
置いてきた物も多いが、ベース22からもアイテムを持ち込んでいる。
何とかなるかもしれない。
「まず一つ目、晶薔薇の花びらです。晶薔薇は紅一点花とも呼ばれていて、中々見つからないです」
「この中にある?」
花なら集めている。
ユラさんに贈る花束ではなく、自分用に採取しておいた花を並べた。
クリアはその中の一輪を手に取った。
「ありました。これが晶薔薇です。良い匂いです」
クリアはそう言っているけど、僕には何の匂いも感じられない。
クリステラ人にしか分からない匂いが出ているのかもしれない。
「一輪で大丈夫?」
「ハイ。そんなに量はいらないです。花びら一枚で10人分は作れるです」
晶薔薇の花びらの数を数えたことはないが、枚数は多い。
必要なのはウラノス、ノロミオさん、クリアの三人分だ。十分足りるだろう。
「次にロックピーチという果実です。人の手じゃ栽培できないので、滅多に手に入りませんです」
「それってどんな果実なの?」
特徴を聞くと、それはピギとヴィニアちゃんへのお土産に採取した果実の特徴と合致していた。
確認してもらうと、正解だった。
クリアから次々と薬の材料を提示されていく。
無い物もあったが、代用できる物はあったから問題はない。
「最後はチキスタルの卵です。とても臆病な鳥で、少しでも危険を感じれば卵を産まないのです。クリステラが平和な時も滅多に採れませんでした」
「この卵じゃ駄目?」
「駄目です。チキスタルじゃないと」
ヴィンディスで購入したエンジ鳥の卵を見せたが、チキスタルという品種の卵以外は使えないそうだ。
今からチキスタルの卵を探すのは難しい。チキスタル自身も生き残っているのかどうかが分からないのだ。
この星の状況じゃ、絶滅している可能性が高い。
「コッコ?」「ククッ?」
途方に暮れていると、コッコとクックが今日の生んだ卵を持ってきてくれた。
コッコらはあの日から毎日卵をくれるようになったのだ。
残念なのは有精卵がないこと。
こんなに可愛いのだから、ヒヨコも可愛いと思う。
「チキスタル!」
「コッコたちが?」
「間違いないです。しかも卵付きだなんて」
コッコたちを仲間にしたのは運命だったのかも。
その他にも材料は必要だったが、純水などだったから簡単に用意できた。
「これで全部?」
「信じられないのです。まさか揃うなんて」
「どうやって作るの?」
「装置がいるのです」
「それはどこに?」
「ここから少し離れた所に荒野があるはずです。そこに放棄された研究施設があるのです。装置はそこにありますです」
この周囲の荒野といえば、クリスタルゾンビが根城にしていた荒野しかない。
「研究施設は無事なの?結構時間が経過していると思うんだけど」
クリアが眠っている間にも時間は流れている。
長い時の間に風化している可能性がある。
「多分、大丈夫なのです。放棄される前に保全機能を作動したのです。解除されてなければ、今も健在なはずです」
本当に無事なのかどうかは確認するまで分からない。
クリア曰く、装置がある研究施設は複数あり、その中でも一番近いのが荒野の研究施設だそうだ。
もしアウトだった場合、違う施設に向かう必要がある。
それに備えて、早く出発した方が良い。
幸い、クリスタラーの積み込みは終わっているから、すぐに飛び立つことができる。
ウラノスとノロミオさんの体はベッドに寝かせてある。
ハイポーションでは根治はできないけど、晶隷化の進行を止めることができる。
二人の肉体とハイポーションの瓶を点滴みたいに繋げておいた。
一定のペースで投与されるため、付きっ切りで治療しなくても大丈夫だ。
ハイポーションは多く持っていないが、材料は揃っているからこの場で練成することが可能だ。
新たに練成した物を含めると、数日は持つだろう。
クリアはすでに諦めていた。
だけど、諦めるのはまだ早い。
「薬があるんでしょ?どこにあるの?」
「現物はないです。レシピを知っているだけです」
「じゃあ作れば!」
「残念ですけど、材料がありません。希少な素材ばかりなので、もう手に入らないです」
クリアは薬学の勉強をする学生だったらしい。
クリスタルスリープで多くの事柄を忘却していても、薬の知識に欠落はなかったらしい。
それだけ真剣に学んでいた証左だ。
「持っているかもしれないから、詳しく教えて」
クリステラ探索中、お土産以外にも目に付くアイテムを欠かさずに採集している。
置いてきた物も多いが、ベース22からもアイテムを持ち込んでいる。
何とかなるかもしれない。
「まず一つ目、晶薔薇の花びらです。晶薔薇は紅一点花とも呼ばれていて、中々見つからないです」
「この中にある?」
花なら集めている。
ユラさんに贈る花束ではなく、自分用に採取しておいた花を並べた。
クリアはその中の一輪を手に取った。
「ありました。これが晶薔薇です。良い匂いです」
クリアはそう言っているけど、僕には何の匂いも感じられない。
クリステラ人にしか分からない匂いが出ているのかもしれない。
「一輪で大丈夫?」
「ハイ。そんなに量はいらないです。花びら一枚で10人分は作れるです」
晶薔薇の花びらの数を数えたことはないが、枚数は多い。
必要なのはウラノス、ノロミオさん、クリアの三人分だ。十分足りるだろう。
「次にロックピーチという果実です。人の手じゃ栽培できないので、滅多に手に入りませんです」
「それってどんな果実なの?」
特徴を聞くと、それはピギとヴィニアちゃんへのお土産に採取した果実の特徴と合致していた。
確認してもらうと、正解だった。
クリアから次々と薬の材料を提示されていく。
無い物もあったが、代用できる物はあったから問題はない。
「最後はチキスタルの卵です。とても臆病な鳥で、少しでも危険を感じれば卵を産まないのです。クリステラが平和な時も滅多に採れませんでした」
「この卵じゃ駄目?」
「駄目です。チキスタルじゃないと」
ヴィンディスで購入したエンジ鳥の卵を見せたが、チキスタルという品種の卵以外は使えないそうだ。
今からチキスタルの卵を探すのは難しい。チキスタル自身も生き残っているのかどうかが分からないのだ。
この星の状況じゃ、絶滅している可能性が高い。
「コッコ?」「ククッ?」
途方に暮れていると、コッコとクックが今日の生んだ卵を持ってきてくれた。
コッコらはあの日から毎日卵をくれるようになったのだ。
残念なのは有精卵がないこと。
こんなに可愛いのだから、ヒヨコも可愛いと思う。
「チキスタル!」
「コッコたちが?」
「間違いないです。しかも卵付きだなんて」
コッコたちを仲間にしたのは運命だったのかも。
その他にも材料は必要だったが、純水などだったから簡単に用意できた。
「これで全部?」
「信じられないのです。まさか揃うなんて」
「どうやって作るの?」
「装置がいるのです」
「それはどこに?」
「ここから少し離れた所に荒野があるはずです。そこに放棄された研究施設があるのです。装置はそこにありますです」
この周囲の荒野といえば、クリスタルゾンビが根城にしていた荒野しかない。
「研究施設は無事なの?結構時間が経過していると思うんだけど」
クリアが眠っている間にも時間は流れている。
長い時の間に風化している可能性がある。
「多分、大丈夫なのです。放棄される前に保全機能を作動したのです。解除されてなければ、今も健在なはずです」
本当に無事なのかどうかは確認するまで分からない。
クリア曰く、装置がある研究施設は複数あり、その中でも一番近いのが荒野の研究施設だそうだ。
もしアウトだった場合、違う施設に向かう必要がある。
それに備えて、早く出発した方が良い。
幸い、クリスタラーの積み込みは終わっているから、すぐに飛び立つことができる。
ウラノスとノロミオさんの体はベッドに寝かせてある。
ハイポーションでは根治はできないけど、晶隷化の進行を止めることができる。
二人の肉体とハイポーションの瓶を点滴みたいに繋げておいた。
一定のペースで投与されるため、付きっ切りで治療しなくても大丈夫だ。
ハイポーションは多く持っていないが、材料は揃っているからこの場で練成することが可能だ。
新たに練成した物を含めると、数日は持つだろう。
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