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滅びし水晶の惑星

ユラさん、大激怒

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 土壌が回復したら、ガーデンを畑にするつもりだ。
輸入に頼ることなく、ベース22内で自給自足を成立させたい。
 現実でも長期航行をする宇宙船はこのサイクルを船内に成立させている。
これから先、宇宙を飛び回るには必要なシステムである。


 野菜の苗もちゃんと購入している。
農家の人のアドバイスを受けて、素人でも育てやすい野菜を中心に集めた。
 農業は弐拾号に任せる。
作業ロボの中で、彼が一番の適任者なのだ。


 不安もある。
ヴィニアちゃんとピギは野菜が好きじゃないから、食べてくれないかもしれない。
購入した苗の中には、ヴィンディスの子供が嫌いな食べ物ランキング不動の一位の野菜もある。
二人も大嫌いな野菜だ。
 現実の野菜で例えるなら、ピーマンに近い。
栄養価は高いから、無理やりにでも食べさせる予定だけど。


 ヴィンディスを出発してから、一週間が経過した。
ベース22はヴィンディスを離れ、イドに向かって移動を開始している。
 速度は遅いため、まだヴィンディスの姿が見える。
ヴィニアちゃんは展望台からずっとそれを眺めていた。
ホームシックなんだと思う。


 ヴィニアちゃんのケアはユラさんに一任している。
コネコは無理、というか禁止にした。
あれはない。
それは展望台が開放された次の日のことだった。



 ヴィニアちゃんは食事の時以外はずっと展望台にいる。
そこにいつものような明るさは存在していなかった。
何か元気づける策を考えなきゃ。

「私に任せろ」

コネコには何か元気づける秘策があるみたいだ。
不安だけど、彼を信じてみることにした。


「ヴィニアよ。これをやろう。観てれば活力が湧いてくるぞ」
「きゃああああああああああ!」

 ヴィニアちゃんの悲鳴がベース内に響き渡った。
その原因はコネコがヴィニアちゃんに渡した物にある。
 コネコは自身の作品をヴィニアちゃんに渡したのだ。
それもまともな方ではなく、グロテスクな方だ。
ヴィニアちゃんもコネコの作品に慣れていたが、気力が落ちている状態では、衝撃が強すぎたみたいだ。


「何があったの!?」

 ヴィニアちゃんの悲鳴を聞き、ユラさんが展望台に飛び込んでくる。
ユラさんは一瞥しただけで、何が起きたのか理解した。
コネコまで駆け寄ると、その頬を全力で殴り飛ばした。


「正座!」
「はい!」

 ユラさんの剣幕に押され、コネコは大人しく冷たく硬い床に正座した。
これほどまでの自業自得は見たことがない。

「スワロ君も!」
「えっ?なんで僕まで?」
「保護者でしょ!」

 年齢ではコネコの方が年上なんだけど。
でも、今のユラさん相手に口答えは許されない。それほどの迫力があった。 

 それからユラさんの説教が始まったのだった。



 慰めようとしたその行動は素晴らしいと思う。
プレゼントした作品が例のアレ系統じゃなければ満点だ
 善意からの行動だったから、一時間ほどの説教で解放された。
あんなに怒ったユラさんは初めて見た。
もう怒らせないように気を付けよう。


 僕は水生成装置の修理。
チェックした結果、生成装置自体はメンテナンスをすれば、すぐにでも動かせそうだった。
 問題が起きていたのは生成した水を貯めておくタンク。
ズールを倒すために、除草剤を投げ込んだため、酷く汚染されていた。


 除染を試みるよりも、丸ごと取り替えた方が早い。
タンクは錆に強い金属で作られているだけで、特別な技術は使われてない。
工場が稼働すれば、新規製造も難しくはないだろう。


 ガーデンに水を送る給水パイプもアウト。
ここの取り換えは難しい。天井裏に入らなければならない。
 天井裏は作業ロボじゃ入れないほど狭いから、僕がやる必要がある。
替えのタンクとパイプが完成したら、すぐに取り換えできるように、取り外しだけでも終わらせておく。


 パイプを取り外すのに数日の時間を要した。
その間に、セクション2の整備が完了している。
食堂や厨房などの設備は整っているけど、それ以外のほとんどの部屋が空っぽだ。
 セクション3、4の整備は継続して行うけど、それよりもセクション1の工場化や機体の整備など優先順位が高いことがある。
僕ら以外の人間はいないし、アローさんたちに割り振る部屋も用意できている。急ぐ必要はないだろう。


 ベース長室への通路の掃除も終わった。
ベース長室は元々スイートルームとして使われてた部屋で、他の部屋よりも数段作りが良い。
 主が居なくなった部屋を甲乙が手入れしてくれていたおかげで、状態が良く、今すぐ使うことができた。
だけど、僕は使うつもりはない。広すぎて落ち着かない。
それに工場になる予定のセクション1が僕の根城なのだ。二つも部屋はいらない。


 ユラさんたちにおすすめしたけど、彼女たちも使うつもりはないみたいだった。
潰すのは勿体ないから、お客さんが来た時のために掃除だけはさせておこう。
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