コスモス・リバイブ・オンライン

風吹く星よ

四番隊

　受け流された光線が平原に着弾し、クレーターを形成しているが、トラックには当たっていない。
適当ではなく、ちゃんと計算して変形させたのだ。
　手を尽くしたが、耐久力の減少速度は僅かしか落ちていない。

「頑張れ、ガーディフォース！」

　ここで退くわけにはいかない。
ガーディフォースの後ろには人間がいる。
機体の後方カメラが捉えたその顔は恐怖に染まっていた。
彼らを見捨てることなんてできない。


　とうとうエネルギーシールドを突破されてしまった。

「まだだ！」

　エネルギーシールドは破壊されたが、その先にあるＢユニットの実体盾はまだ健在だ。
実体盾はエネルギーシールドほどの防御力はない。
でも、敵の攻撃も最初よりも弱くなっており、実体盾でも防ぐことができる。
　光線が盾に直撃。盾に使用されている合金が徐々に融解していく。
遂にシールドにも穴が開いてしまった。


　光線がガーディフォース本体に襲い掛かる。
光線を受けたことでコックピット内の温度が急上昇していく。肌が灼ける様に熱い。
ユラさんが装甲に施してくれた特殊塗料のおかげでまだ持ち堪えているが、長くは持たない。
　頭の中で見ず知らずの人間なんて見捨てて逃げろと悪魔が囁いてきた。
その声をすぐに振り払う。そんな選択はありえない。
ガーディフォースは修理できるが、人の命は修理などできないのだ。


　ようやく敵の攻撃が止まった。
でも、ガーディフォースは満身創痍だ。これ以上の戦闘は難しい。
　空魔を見ると、円盤が光を失っていた。
おそらく、あの攻撃は円盤に貯めたエネルギーを放出する攻撃なんだと思う。
戦艦を撃破するのに一発、先ほどの攻撃の一発。
その二発でエネルギーを使い果たしたのかもしれない。


　空魔は口を大きく開くと、そこから光が溢れ出した。
光線は口からも撃てるようだ。

「まだ来るのか？！」

エネルギーシールドを失った今、二発目を防ぐのは不可能だ。
こうなれば、トラックから気を逸らす。


　ガンユニットを抜き、まだ無事なＣユニットと合体、キャノンモードに移行。
トラックから離れながら、射撃を開始した。
　オーククラス相手でも大ダメージを与えられる威力があるが、空魔相手では分が悪すぎる。
それに距離も離れすぎているため、威力は減衰してしまう。
ダメージはないだろう。
　

　それでも撃ち続けた。
その甲斐があり、空魔は攻撃目標をトラックから僕に変更したようだ。
　ガーディフォースは破壊されるだろうが、悔いはない。
死に戻りの覚悟を決めた時、空魔の体が爆炎に包まれた。

『お待たせしました！』

　レーダーに無数の機影が映った。
機体から出されている識別信号は登録されている信号だった。
近衛隊、テンペストだ。


　テンペストはミサイルランチャーを装備していた。
そこからミサイルが発射され、次々と空魔に着弾していく。

「ナラワンさん！」
『すぐに増援が来ます。よく持ち堪えてくれました！』

　率いているのはクインシフで最初に出会った近衛隊第四番隊副隊長だ。

「何であなたが？」

四番隊は後方支援が主な仕事だと聞いている。何でパイロットが所属している二番じゃないんだろう？


『すぐに動けるのは我々だけだったんです。安心してください。自分は元二番です。他の者も在野のパイロットには負けません。それにすぐに増援が着ます』

　そういえば、ヴィニアちゃんが近衛隊の全ての隊員は優れたパイロットだって言ってた。
四番隊もパイロットとしての修練を積んでいるそうだ。

　
　四番隊が空魔への攻撃を開始した。
テンペストは対空魔用の武装を装備しているようだ。
　通常のパイルガンを大型化させた物などで、対ファルシュでは命中させることすら難しい武装だけど、空魔の巨体なら当てることは容易だ。


　空魔も攻撃を受けるだけではなく、反撃を仕掛けてくる。
空魔は光線の他にもかまいたち攻撃も持っているようだ。
かまいたちは大地に命中し、大きな傷を形成していた。
　かまいたちを目で視認するのはほぼ不可能。
センサーのおかげでその存在を確認できた。


　四番隊は奮戦しているが、旗色がよくない。
ミサイルが着弾し、空魔の体を焼くが、すぐさま再生されている。
まだ誰も離脱者を出していないが、このまま戦闘しても、こちらが力尽きるのが先だ。

『来たか！』

　平原にテンペストたちが飛来した。援軍だ。
テンペストは連携しながら、空魔に攻撃を加えていく。


　中でも凄いのは黒いテンペストたちだ。
空魔に最接近し、攻撃を引き付けている。
黒いテンペストらに光線とかまいたちが集中しているが、被弾していない。
恐ろしい腕前だ。