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霧の魔

FA4蜜蜂化

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 二つの武器の重量や反動などのデータを受け取り、頭の中でシミュレーションしてみる。

「どうせなら、どっちも付けようか」
「それは無理。反動でどっちも片手じゃ撃てない」

 僕のアイディアをはにーさんが否定した。
ホーネットじゃできなかったんだろう。
ホーネットの詳しいスペックは知らないが、現行の技術ではサイズ的に無理そうだ。

「大丈夫だよ」
「出来るんですか?」
「たぶんね」

 同時装備の問題点はFA4ならクリアできる。
FA4のパワーなら片手撃ちでも反動で振り回されることはないだろう。
重量の問題もクリアできる。


「まずはブレードを外そうか。僕は右を外すから、左をお願い。外し方は普通のファルシュと同じだから」
「はい」

 二つの兵装の重量に吸い取る君の重量を足すと、FA4の許容重量を少しオーバーしてしまう。
でも、ウィングブレードを取り外せば、重量に余裕ができ、許容範囲内に収まる。
ホーネットにはウィングブレードを装備してないから、取り外してもはにーさんの戦闘能力は低下しないはずだ。


 僕が右のブレードの取り外しを終わらせたのとほぼ同時にコミツさんも左の取り外しを終了させていた。
さすがはトート持ち。初めて触った機体なのにFA4の整備に慣れた僕と同時に取り外しを終わらせるなんて。
 ニードルガトリングガンは大型の弾倉を肩に取り付けるが、ホーネットに取り付けたままになっていた。
取り外しはコミツさんに任せる。
その間に、二つの兵装をFA4のシステムに組み込むことにした。


「これが二つの兵装の制御システムです」

 コミツさんから制御データを受け取り、コンピューターに読み込ませて、ざっと目を通す。

「失格かな」
「はい?」

 通常のファルシュの火器管制システムを少し修正しただけの代物だった。
これじゃあ、命中精度が悪くなるし、使い勝手も悪い。
 そういえば、大会でも蜜蜂騎兵団の人たちは結構攻撃を外していた。
はにーさんを除いて。彼女の攻撃の命中率は70%に近かった。さすがはクランのエースだ。


 こんなシステムでも命中させることができたのは、たぶんプラネットスキルの力を頼りにしているからだろう。
ヴィンディスのスキルである空の心は空間認識能力の向上。
 これは飛行だけではなく、射撃にも使える。
もっとも、これがあるせいで、ヴィンディスの火器管制システムは未発達で性能が悪いんだけど。
 蜜蜂騎兵団にはさらに射撃補助スキルの効果もあるはずだ。
あれは操縦基礎レベル5から派生し取得できる。古参の彼女たちなら取得していてもおかしくはない。


「僕がこれ用の火器管制システムを作るからいらないよ」
「何言っているんですか。もう時間がないでしょ」
「これぐらいなら一日で終わるよ」

 FA4に組み込んであるシステムに二つの兵装を適応させる。
 ニードルとパイルは形状や重さの違いで通常の弾と弾道が違う。それを自動で計算し、照準を修正してくれるように設定。
武器の数はたった二つ。フォートレスの時よりも圧倒的に数が少なく、プロテクトも掛かっていないから、難しくはない。


「本当にできるんでしょうか?」
「スワロ君に任せておいた方がいいよ。あたしたちの機体のシステムは彼が一から組んだ物、彼に任せておけば大丈夫だから」

 正確に言うと、既存の物を改造した物なんだけどね。
アシュラとかヒートダガーなどは完全に僕オリジナルだけど。
 フォートレスでも同じことをやったおかげで、予定より早くシステムが完成した。
まだ細かい調整は必要だけど、それでも渡された物よりも性能が良い自信がある。


「まさか本当にこんな短時間で作るなんて」
「僕はこっちが専門だからね」
「あの、このシステムお借りしてもいいですか?」
「いいけど、専用品だから他の兵装には使えないよ」

 コミツさんはシステムのデータをコピーすると、誰かにメッセージを送っていた。
しばらくすると、蜜蜂騎兵団の人が格納庫まで来て、その人にコピーしたデータを渡した。


 僕がシステムを構築している間に、コミツさんは弾倉の取り外しを終わらせ、いつでもFA4に取り付けられるように準備を整えていた。

「右肩か左肩、どっちに付けましょうか?」
「ホーネットは銃本体を持たせる反対側に付けてますけど」

 二つの兵装はニードルガトリングガンの方が重い。
ファルシュには高性能のバランサーがあるおかげで、完全に左右の重量を合わさなくても大丈夫だが、あまりにも差が大きすぎると飛行に支障をきたす。
 コミツさんと話し合った結果、肩ではなく腰に装着することになった。
ここならバランスが崩れない。


 ついでに蜂の一針の予備弾倉も腰に取り付けておく。
これで装着は完了。次はシミュレーターでテストをしよう。
 シミュレーターを一台貸し切れるようにちゃんと話を通しておいた。
機体のデータをシミュレーターに入れ、想定通りの挙動をするか確かめる。
 これが終わったら、実機でテスト。シミュレーターだけでは分からない不具合が出る可能性があるからだ。
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