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霧の魔

整備中

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 霧のことや、データ解析結果を聞くために、マカラさんの所の行こうとしたが、止められてしまった。
ずっと徹夜していて、さっき眠ったばかりらしい。
 その代わり、マカラさんたちが書いたレポートを貰えた。
ここに今までの成果がほぼすべて書かれているそうだ。
 邪魔になると悪いので、格納庫に戻ってから読むことにした。


 格納庫に戻ったが、ユラさんはまだログインしていない様子だった。
今の内にレポートを読もう。文字数が多く、全部読むのは大変そうだ。
 最初の項目は霧について。
様々な角度から検証を行った結果が書かれている。残念ながら霧を除去する方法は見つけられていなかった。
 
 
 霧の項目の最後には霧の速度が遅くなった原因について記述してあった。
マカラさんたちは停滞の原因は分裂蛇にあると推測していた。
侵食速度が遅くなった時刻と、僕とユラさんが分裂蛇を倒した時刻はほぼ一致していたそうだ。
 一回なら偶然で済ませられるけど、二回続いたら偶然と片づけるのは早計。
立証はできてないため確実じゃないけど、因果関係はあるとレポートには書かれていた。
 原因が何であれ、これで港が呑まれるまでの猶予が延びたのは喜ばしいことだ。


 分裂蛇から入手した金属の解析結果も出ていた。
硬度などの基本的な性質は鉄と違いはない。少し軽いぐらいだ。
 大きな違いの一つとしてこの金属にもエアロダイトの活性化を弱める性質があるらしい。
ただし、霧ほどは強くはなく、エアロダイトに直接触れさせないと効果は出ないし、たとえ触れさせても、活性化は弱くなる程度だそうだ。
 

 そして、一番の特徴は風の影響を受けにくいことである。
同じ重量の鉄なら普通に吹き飛ぶほどの強い風を受けても、飛ばされることがない。
 この特性はかなり有用だと思う。
例えばファルシュに採用すると、エアロダイトの活性率を上げて風を今より強めることができる。風の影響を受けない為、自壊する危険が少なくなるからだ。


 レポートにはその他にも色々な利用法が提案されていた。
兵器としての利用法より、平和的な方が詳しく書かれていた。
二つの研究所は兵器開発にあまり積極的じゃないからだろう。
 治安維持隊のファルシュの記録装置と森の観測装置から得られたデータはまだ分析中。
あそこから何かの糸口が見つかればいいんだけど。


 レポートはまだ全部読めていないけど、そろそろ整備を始めることにした。
ガーディフォースも紅霞も僕じゃないと整備できない。というより、させたくないし。
 作業ロボの助けなしで、二機の整備を完璧に終わらせるのは時間がいる。
まずは紅霞から作業を開始した。出来ればユラさんがログインするまでに終わらせたい。


 昨日ログアウトする前に、機体の状態をチェックしていたので、すぐに整備に入れた。
整備支援用に製作したパワードアームを装着する。とても便利でこれを使えば、作業効率が格段に向上する。
 紅霞は敵の攻撃をあまり受けておらず、大きなダメージはなかった。
しかし、度重なる戦闘のせいで一部のパーツに疲労が蓄積している。
心配ないとは思うんだけど、最悪の場合、亀裂が入ってそこから破損するかもしれない。
とりあえず、予備の部品がある物は全部交換していった。


 問題なのはフレームにも疲労が溜まっていることだ。
フレームの修復はここじゃ無理。離れ島の拠点に戻る必要がある。それに作業自体も時間が掛かってしまう。
 フレームは機体の中でも特に頑丈な部位でネオアイアン製だ。だから、すぐに壊れることはないはず。
ここで出来る最低限の応急処置だけはしておく。


 ブースターのメンテナンスも終わらせ、機体本体はこれで完了。問題はヒートダガーである。
溶断機能を使用した二本はボロボロで、今にも折れそうになっていた。
 溶断機能の負荷のせいだが、分裂蛇の戦闘で無茶な使い方をしたせいでもある。
修復は諦めて、拠点から持ってきておいた予備と取り換える。
 元々紅霞に装備していた予備の物も含めれば、使えるのは残り四本。
拠点にももう予備はない。ヒートダガーを作るのにはかなりの時間が必要なので、今ある物しか完成してなかった。
事態が収束したらまた作らなきゃ。


 バックパックのヒートダガー冷却装置にも小さな異常があったので、修理しておいた。
紅霞はこれで完了。次はガーディフォースの番だ。
 紅霞から降りた時、ユラさんがログインしてきた。丁度いいタイミングだった。

「ごめんね。家の仕事を手伝ってて遅くなった。待った?」
「待ってないよ。やることがいっぱいあったしね。紅霞の整備は終わったからもう出れるよ」
「ありがとう。あたしも何か手伝おうか?」
「僕は大丈夫だよ。それよりも他の支援に行ってあげて」

 ユラさんと紅霞には最前線の警備に行ってもらった。
僕もガーディフォースの整備を終わらせないと。
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