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霧の魔
逃走 分裂蛇
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ここまでガーディフォースを移動させ、シフさんをコックピットに運んだ。
急遽増設しておいた簡易シートにシフさんを座らせる。
ここには霧がなく、シフさんの体がよく見えた。
お腹に大きな傷がある。何かが突き刺さったのかそれは背中まで貫通しているようだ。
大怪我を負ってもまだ生きているのは奇蹟じゃない。
シフさんが自らに施した応急処置が適確だったからだろう。止血剤の投与から雑菌の侵入を防ぐ傷口の保護まで完璧に終わらせていた。
処置は適確でも彼の怪我はかなり酷く、このままじゃ港に着く前に死んでしまうかもしれない。何か手を打たないと。
「そうだ!あれがあった」
取り出したのはセーフティーアーマーだ。
コネコ用の物だけど、彼にいらないと言われ、僕が預かっていた。
コネコよりシフさんの方が体格が良いから、サイズは少し小さいかもしれない。
セーフティーアーマーは仕立服みたいに専用品で、あまりに体格が違いすぎると装着はできない。
サイズはギリギリだったけど、何とか着せることができた。
セーフティーアーマーにはメディカルマシンが装着されており、装備者を正常な状態にしてくれる。
骨折などの重い怪我の根本的な治療まではできないけど、命は繋ぎとめてくれるはずだ。
ガーディフォースのコンピューターにセーフティーアーマーを接続する。
こうすれば、シフさんのバイタルを確認できる。素人の見立てじゃなくて、ちゃんとシフさんの容態を知りたかった。解析には少し時間がいる。
今の内にシフさんがシートから動かないように固定する。
コックピット内で暴れられたら大惨事だ。
セーフティーアーマーがあるせいで固定に手間取った。あらかじめシートに取り付けておいたベルトでは長さが足りず固定できなかったからだ。
固定を終わらせ、モニターに目をやるとメディカルマシンの解析は終わっていた。
バイタルが危険域の赤色になっている。安心だ。危険だが死んでいない。まだ助かる可能性がある。
詳細なデータを確認すると、色んな場所の骨が折れたり、ヒビが入っている。
やっぱりお腹の傷は背中まで貫通していた。運が良かったのか内臓を掠める程度で大きな損傷はない。
さらに蛇の毒で体の一部が麻痺しているようだ。
シフさんはよくこの状態であの距離を移動できたなぁ。
不屈の精神ってこういうことを言うんだと思う。
発見の報告をしようとしたけど、通信ができなかった。
ガーディフォースの通信装置もコネコの改良をしてあるが、それを上回るほどの強い通信妨害を受けているようだ。
早く森から脱出しよう。
シフさんを倒した蛇のことが気になる。
あれがユラさんが倒した蛇なら問題はないが、別個体だった場合、まだ近くにいる可能性がある。
「もうしばらくの辛抱ですからね」
ブースターを起動、森からの脱出を始める。あまり速度を出し過ぎるとシフさんの体に障るので抑えておく。
ルートは最短を通るつもりだ。一秒でも早くここから抜けたい。
「レーダーに反応?まだ遠いなぁ。早く逃げよう」
シフさんには悪いが全速力で逃げれば、まだ逃げ切れる距離にいる。
「反応が消えた?」
レーダーの範囲外に行ったのかな?でも、それにしてはおかしな消え方をした。
「……そうか!上だ」
たぶんレーダーが探知できないほどの高度まで上昇したのだろう。地上の敵を警戒していたため、レーダーの電波の発射方向を水平にしていた。普段ならこれでもある程度の高度の敵まで捉えられるのだが、霧の妨害があったせいで、上空の敵の探知が難しくになっていたのだ。
すぐにレーダーを対空モードに切り替える。レーダーは敵を捉えた。
上空を高速で移動している。でも、飛行しているわけじゃなさそう。おそらくジャンプしたんだろう。
間違いなくここに向かっている。
すぐにブースターで着地予想地点であるこの場から離れた。
移動して数秒後、そいつは上空から降下してきた。
着地地点にあった木はその巨体で潰され、直接当たっていない木も衝撃で倒れてしまい、森に大きなクレーターが作られた。
蛇だ。大きさから推測すると、ユラさんが戦った蛇と同種だろう。
跳躍し上空から急降下することで、一気に距離を詰められてしまった。
「どうにか逃げられないかな?」
シフさんがいる今、こいつと戦っている暇はない。
逃げる隙を探したが、見つからなかった。
蛇はこちらをじっと睨め付けており、その視線から外れようと真横に移動しても、顔の向きを変えて追いかけてきた。正攻法で逃げるしかない。
機体を反転させるのはまずい。反転させた隙を突かれる危険がある。
バックで逃走を図った。
後退を続けているが、全く振り切れそうにない。
最高速度はこちらの方が優れているようだけど、僕は木を躱しながら移動しているのに対して、蛇は木を無視し、薙ぎ倒しながら進んでいる。直進と蛇行では前者の方が速いのは当たり前だ。
気を抜いたら木に激突する。ガーディフォースはその程度じゃ大して傷つかないが、減速はしてしまう。
木を避けることに集中しよう。
急遽増設しておいた簡易シートにシフさんを座らせる。
ここには霧がなく、シフさんの体がよく見えた。
お腹に大きな傷がある。何かが突き刺さったのかそれは背中まで貫通しているようだ。
大怪我を負ってもまだ生きているのは奇蹟じゃない。
シフさんが自らに施した応急処置が適確だったからだろう。止血剤の投与から雑菌の侵入を防ぐ傷口の保護まで完璧に終わらせていた。
処置は適確でも彼の怪我はかなり酷く、このままじゃ港に着く前に死んでしまうかもしれない。何か手を打たないと。
「そうだ!あれがあった」
取り出したのはセーフティーアーマーだ。
コネコ用の物だけど、彼にいらないと言われ、僕が預かっていた。
コネコよりシフさんの方が体格が良いから、サイズは少し小さいかもしれない。
セーフティーアーマーは仕立服みたいに専用品で、あまりに体格が違いすぎると装着はできない。
サイズはギリギリだったけど、何とか着せることができた。
セーフティーアーマーにはメディカルマシンが装着されており、装備者を正常な状態にしてくれる。
骨折などの重い怪我の根本的な治療まではできないけど、命は繋ぎとめてくれるはずだ。
ガーディフォースのコンピューターにセーフティーアーマーを接続する。
こうすれば、シフさんのバイタルを確認できる。素人の見立てじゃなくて、ちゃんとシフさんの容態を知りたかった。解析には少し時間がいる。
今の内にシフさんがシートから動かないように固定する。
コックピット内で暴れられたら大惨事だ。
セーフティーアーマーがあるせいで固定に手間取った。あらかじめシートに取り付けておいたベルトでは長さが足りず固定できなかったからだ。
固定を終わらせ、モニターに目をやるとメディカルマシンの解析は終わっていた。
バイタルが危険域の赤色になっている。安心だ。危険だが死んでいない。まだ助かる可能性がある。
詳細なデータを確認すると、色んな場所の骨が折れたり、ヒビが入っている。
やっぱりお腹の傷は背中まで貫通していた。運が良かったのか内臓を掠める程度で大きな損傷はない。
さらに蛇の毒で体の一部が麻痺しているようだ。
シフさんはよくこの状態であの距離を移動できたなぁ。
不屈の精神ってこういうことを言うんだと思う。
発見の報告をしようとしたけど、通信ができなかった。
ガーディフォースの通信装置もコネコの改良をしてあるが、それを上回るほどの強い通信妨害を受けているようだ。
早く森から脱出しよう。
シフさんを倒した蛇のことが気になる。
あれがユラさんが倒した蛇なら問題はないが、別個体だった場合、まだ近くにいる可能性がある。
「もうしばらくの辛抱ですからね」
ブースターを起動、森からの脱出を始める。あまり速度を出し過ぎるとシフさんの体に障るので抑えておく。
ルートは最短を通るつもりだ。一秒でも早くここから抜けたい。
「レーダーに反応?まだ遠いなぁ。早く逃げよう」
シフさんには悪いが全速力で逃げれば、まだ逃げ切れる距離にいる。
「反応が消えた?」
レーダーの範囲外に行ったのかな?でも、それにしてはおかしな消え方をした。
「……そうか!上だ」
たぶんレーダーが探知できないほどの高度まで上昇したのだろう。地上の敵を警戒していたため、レーダーの電波の発射方向を水平にしていた。普段ならこれでもある程度の高度の敵まで捉えられるのだが、霧の妨害があったせいで、上空の敵の探知が難しくになっていたのだ。
すぐにレーダーを対空モードに切り替える。レーダーは敵を捉えた。
上空を高速で移動している。でも、飛行しているわけじゃなさそう。おそらくジャンプしたんだろう。
間違いなくここに向かっている。
すぐにブースターで着地予想地点であるこの場から離れた。
移動して数秒後、そいつは上空から降下してきた。
着地地点にあった木はその巨体で潰され、直接当たっていない木も衝撃で倒れてしまい、森に大きなクレーターが作られた。
蛇だ。大きさから推測すると、ユラさんが戦った蛇と同種だろう。
跳躍し上空から急降下することで、一気に距離を詰められてしまった。
「どうにか逃げられないかな?」
シフさんがいる今、こいつと戦っている暇はない。
逃げる隙を探したが、見つからなかった。
蛇はこちらをじっと睨め付けており、その視線から外れようと真横に移動しても、顔の向きを変えて追いかけてきた。正攻法で逃げるしかない。
機体を反転させるのはまずい。反転させた隙を突かれる危険がある。
バックで逃走を図った。
後退を続けているが、全く振り切れそうにない。
最高速度はこちらの方が優れているようだけど、僕は木を躱しながら移動しているのに対して、蛇は木を無視し、薙ぎ倒しながら進んでいる。直進と蛇行では前者の方が速いのは当たり前だ。
気を抜いたら木に激突する。ガーディフォースはその程度じゃ大して傷つかないが、減速はしてしまう。
木を避けることに集中しよう。
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