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祭りだ!大騒ぎだ

突撃

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 あの弾、ファルシュ対策に違いない。
ミサイルなど普通の爆発物なら直撃さえしなければ何とかなる。
ファルシュのスラスターから出る風を使えば、爆風を遮ること可能だからだ。
 あれの中には無数の弾が内包されているようで爆発によって拡散させてきた。
あれは風の壁じゃ防げない。


 正確に狙いを付けている余裕はない。
出し惜しみはせずにここで全弾撃ち尽くすつもりでいく。
 狙撃姿勢は取らず、このまま撃つ。
反動制御のためのブースターも使わない。緊急回避のために残しておく。


 ライフルを構え、射撃した。
しかし、命中せず、足元に当たって体勢が崩れた。
すぐに二発目を撃つ。
 今度は足に掠った。効果は薄い。
三発目は右腕に命中、だが、まだ健在だ。


「当たれ!」

 最後の弾丸は機体には当たらなかった。
命中したのは、直前に発射した砲弾だった。
 砲弾は破裂し、弾丸が敵の中央にばら撒かれた。
至近距離でそれを喰らったレイン亜種は戦闘不能。


 さらに近くにいた二脚戦車にも被害が出ていた。
狙ったわけじゃない。ただのラッキーだ。
日頃の行いが良いおかげかな。


「残り半分か。予定より消耗しているな」

 FA3の最大の弱点。
それは稼働時間。
 通常のファルシュよりもエアロダイトの活性化を強くしているため、全力で稼働できる時間はとても短い。
最大で20分程度が限度だ。


 一旦地上に降り、侵攻ルートを考えよう。
丘を回り、敵のリーダーがいる本陣まで被害なく、抜けれるルート。
 丘の上を飛んで抜けるのはできない。
ドローン情報によると何かが仕掛けてあった。
 何かは分からなかったけど、おそらく対空兵器だ。
上空を通る者を攻撃する兵器に違いない。


 現在の敵の配置から最適なルートを算出。
中央は今、手薄なっているけど、ここは避けた方がいいかもしれない。
すでに両翼から援軍が移動している。


 両翼は中央に半数を派遣したため、数は少なくなっている。
残りの半数は進軍の準備を進めていた。それももう終わる。
降下する所を見られているから、大体のだけど、僕の位置を掴んでいる。じきにここに来るはずだ。


「どこから攻めるのが正解かな」

 中央は駄目。待ち構えている所に行くのは危険だ。
両翼のどちらかを選んでも抜ける前に攻撃が当たる可能性がある。


「あっ。ここならいけるかも」

 狙うのは中央と右翼の間。敵が進軍すればここに大きな穴ができる。
このルートはタイミングが肝心。失敗すれば終わる。
 おそらく両翼の部隊はどこかで合流する。
そうなる前に敵の後方へ抜けないとまずい。
 だからといって、急いでも駄目だ。
すぐに本陣へ支援に向かえないよう、引きつけないといけない。


 こんな綱渡り、やるべきではないと思う。
でも、この戦力差を覆すにはやらなければならない。
 もっといい手があるかもしれないが、僕の頭じゃこれが限界だ。
どこかに良い参謀さんが落ちてないかな。


 ライフルはここに置いておく。
試合終了したら、ちゃんと回収されるそうなので心配はない。
 再び空へ登り、タイミングを計る。

「ここだ!」

 スラスターだけではなく、ブースターも併用。
高速で敵の後方に抜けた。
 中央の敵が僕の侵攻を食い止めるために立ち塞がろうと移動するが、二脚戦車の速度じゃ最高速度に達したFA3に追いつけるわけがない。


「突破完了」

 何とか成功した。
敵の本陣まではもうすぐだ。

☆フラワー姫親衛騎士団

「申し訳ありません!突破されました」
「虎の子の地雷があるだろう?」

 スワロの予想は正しく、丘の上に設置してあるのは地雷だった。
航空機が上空を通過すると、起爆。
爆風は上方向に広がり、敵機を焼き払う。
威力は高く、彼らの計算だと風の壁すら貫通できるはずだった。


「それが感づかれたようで、迂回されました」
「何をやっている!姫の御前を荒らすつもりか!」

 突破を知らされ、本陣はパニックに陥った。
それは騎士団の団長も同様だ。彼らはこんな事態を想定していなかった。


 その中で一人だけ冷静な者がいた。
彼らの姫だ。

「みんな落ち着いて!たった一人なんだから力を合わせれば勝てるよ」
「姫のおっしゃる通りだ。落ち着け」

 姫の言葉は彼らにとって神託のような物。
パニックは瞬く間に収まった。
 すぐに迎撃の準備に入った。
もし、彼女が声を掛けていなかったら無防備な状態で襲撃されていただろう。

「姫、機体の中へ。あそこが一番安全です。戦闘には参加せず、後ろにいてください」
「分かったよ。頑張ってね」
「はい!」
 
 リーダーは戦闘に参加させない。
当然の判断だ。リーダーの死は敗北、守るのは当たり前である。
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