上 下
129 / 816
祭りだ!大騒ぎだ

祝勝会・小

しおりを挟む
 進化が終わったので一旦解散。
全員のデスペナが抜けた後で集合し、祝勝会をやることになった。
みんなデスペナ短縮アイテムを使うから、最短でも6時間後だ。


 その前に簡素だけど、松葉さんたちとだけで祝勝会をすることにした。
場所は僕のVRマシンの個人空間内。コネコも誘ったけど、やることがあり、来れないそうだ。
 松葉さんたちにここへのパスは渡してあるから、すぐに来てもおかしくない。
掃除をしよう。仮想空間だから埃なんて溜まらないので掃除に時間は掛からない。


 出しっぱなしになっていた漫画本などを本棚に仕舞う。
八雲さんがよく来るので、見られたくない物はちゃんと仕舞ってあるから大丈夫だ。
 シアターセットが出しっぱなしになっていた。ちゃんと仕舞っておいたはずなのに

「八雲さんが来てたのかな?もうっ、帰る時に片づけて行ってよ」
「だってまだいるもん」
「うわっ!びっくりした」
 
 ソファーの上に寝転がり、八雲さんが漫画を読んでいた。
お菓子とジュースが傍らにあり、めっちゃくつろいでいる。


「来てたんだ。今から」
「ちょっと待って。今いいところだから」

 こうなったら、もう僕の声は耳には入らない。
放置して準備をしよう。
 全員が座れるテーブルセットを用意。あとジュースとお菓子ぐらいはないと駄目だよね。


 準備完了。なんとか間に合った。
一息吐こうとしたら、インターホンが鳴った。
 入室の許可を求められたので、すぐに許可を出すと、個人空間内に松葉さんと少年が現れた。
松葉さんはゲーム内とアバターを使い分けているようで、現実と同じ顔だ。

「いらっしゃい」
「お邪魔するね」
「メイリーさんは?」
「すぐに来ると思うわ」
「それでその子がもしかして?」
「そうよ。これが弟のパッションこと烈斗よ。ほら、ちゃんと挨拶しなさい」

 烈斗君のアバターは松葉さんと同じく現実と一緒にしており、松葉さんと本当によく似ていた。
松葉さんを少し小さくして、性別を変えたら烈斗君になる。
ゲーム内じゃないからもちろんケモミミはない。


 烈斗君は見るからに不機嫌で、松葉さんに挨拶を急かされても軽く会釈するだけだった。

「やっぱり一人だけ死んだのが?」
「ええ。しかも自滅だから」

 烈斗君は僕の予想より子どもなのかも。
ひょっとしたら小学生かもしれない。だったらしょうがないかな。


「あー!面白かった!」

 漫画を読み終わった八雲さんが起き上がった。

「茜じゃない。何でいるの?」
「ん?有美?漫画読みに来ているの」
「そういうこと聞いているんじゃないんだけど」

 松葉さんと八雲さんが二人で会話を始めてしまい、烈斗君と二人になってしまった。

 
「えっと、烈斗君?ジュース飲む?」
「いらない」

……気まずい。お願いだから早くメイリーさん来て。
烈斗君もそれを感じていたのか、体ごと戸棚の方へ視線を向けた。
 戸棚には八雲さんが塗装した模型が沢山ある。
烈斗君の視線はその中の一つに注がれていた。

「これって」
「極限武装メイウォーだよ。知ってるの?」
「昔、好きで観てたんだ」

 共通の話題ができたおかげで、なんとかコミュニケーションを取ることができた。
メイウォーとはお目が高い。あのアニメ、ストーリーは急展開続きで滅茶苦茶だったけど、戦闘シーンは最高だった。


 しばらくメイウォーについて盛り上がっていたら、メイリーさん姉弟も来た。
メイリーさんたちもアバターを現実準拠の物に切り替えていた。
 二人は松葉さんたちと違って、あまり似ていない。
 メービ君の本名はかもめ。僕と同じ鳥繋がりだからなんだか親近感が湧く。


 全員揃ったから祝勝会を始めよう。

「それじゃあクエストクリアを祝して。乾杯!」

 なぜか乾杯の音頭は八雲さんがした。
普通に参加するつもりらしい。


 八雲さん、松葉さん、メイリーさんで固まり、烈斗君は会話に参加していなかったが、メイリーさんの傍にいるだけで満足らしく、満面の笑みを浮かべていた。
 余った鳥類コンビで次の行動について話し合うことにした。

「この後どうするんですか」
「僕は大会に出るんだ」
「残っているのはレギオン戦だけですよね。どこかのクランに一時所属でもしているんですか?」

 レギオン戦の人数合わせのためにそういう手を使っているチームもあるらしいが、僕は違う。


「違うよ。一人で出るんだ」
「えっと正気ですか」
「やっぱりそう思う?」
「はい。絶対に勝てませんよ」
「でも、それを引っ繰り返したら盛り上がるでしょ」
「それはそうですけど」
「大丈夫。ちゃんと準備してきたから。負けるにしても場を盛り上げてから負けるよ」

 そう言ったけど、負けるつもりはない。
対戦相手次第だが、十分勝機はあるはずだ。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

ドラフト7位で入団して

大衆娯楽 / 連載中 24h.ポイント:113pt お気に入り:10

一般人がトップクラスの探索者チームのリーダーをやっている事情

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:768pt お気に入り:88

貴方のために涙は流しません

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:37,375pt お気に入り:2,602

短い怖い話 (怖い話、ホラー、短編集)

ホラー / 連載中 24h.ポイント:28,542pt お気に入り:67

余りモノ異世界人の自由生活~勇者じゃないので勝手にやらせてもらいます~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:38,212pt お気に入り:29,970

緑の指を持つ娘

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:70,234pt お気に入り:1,311

婚約破棄ですか。別に構いませんよ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:745pt お気に入り:7,512

処理中です...