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二章
143、訳ありな男(ウル視点)
しおりを挟む部屋に乗り込んできてからのウル視点で説明回を1話。
ー ー ー ー ー
女性店員から場所を聞いた俺は、急いでデオの所に向かおうとした。
しかしその場所へ行く為の階段には何層も結界が張られていたので、実はお店を半壊させてここまで来たのだ。
でもこの部屋は結界で守られていたので、下の騒動の事は今のところ気づかれていないようだった。
そんなわけで、今回の俺は結構無理をしたと思う。
それなのに扉を開けた先には一人で楽しんでるデオがいて……もしかして必死になって助けに来る必要はなかったのかな?
なんて思ってしまい、俺は少しイラついていた。
そのせいでデオを怖がらせてしまったようだけど、俺が怒りをぶつける相手は別にいる。
「ねぇ、デオにこんなことしてただで済むと思ってないよね……?」
俺はこの店の店長らしき人物の方へ、ゆっくりと歩いていく。
どうやらデオに手は出してないようだけど、あの格好にしたのは間違いなコイツだ。
そう思ってギロリと睨んだだけなのに、男は腰を抜かすと突然よくわからない事を言い出したのだ。
「もしかして……同類?」
「……同類?って、どう言う事かな?」
それは変態って意味じゃないよね……?
そう思いながら男をじっと見て、俺は気がついた。
「君、進化してるんだ?」
「え、ええ……一応、ですけどね」
「一応?」
男の言う事はよくわからないが、進化種同士は本当に惹かれやすいよねと俺は呆れていた。
しかも俺が敵わない相手だとわかったからなのか、男は何故か勢いよく土下座をしたのだ。
「あ、あの……この度は申し訳ありませんでした!貴方様のパートナーはすぐにでも解放致しますし、どんな処罰でも受けます。もう付与が出来ないのなら私は死んでいるのと変わりませんから、どうか一息で殺して下さい!それに私はどうせ一度死んだ身、いつでも死ぬ覚悟はできています。さぁ、早く一思いに!!」
そのあまりの潔さと勢いに、俺の怒りはスッと引っ込んでしまったのだ。
まあコイツはデオを直接犯した訳ではないし、どうも理由があるみたいだよね。
そう思った俺は念の為、話を聞いてみる事にした。
「そうだなぁ……殺すかどうかは、君の話を聞いてからでもいいよ?」
「あ、貴方は神様ですか!?」
「いや、違うけど?」
「違っても構いません。話をする前に、神様のような貴方にお願いがあるのです!」
必死な顔でそんな事をいいだした男に、俺は少し驚いてしまう。
「君、お願い出来る立場だと思ってるの……?」
「いえ、思っていません……ですが、お願いです。どうかこの私と主従関係を結んで貰えませんか?」
……はい?
「いや、主従関係って普通は魔物とかと結ぶやつの事だよね?」
「ええ、そうなんですが……私達のような進化種は世界の理を外れたモンスターみたいなものです。ですから主従を結ぶ事も可能というのは知っていますよね?」
確かに話だけなら聞いた事はある。
だけど進化種は『従』になってしまう事が多いので、自分からその事を言う奴はほぼいない。
「私は貴方のような高貴な進化種に出会ったら、主従を結ぶのが一つの夢だったんです!」
「いや、何で……?」
「それは、私が進化種になった事に関係しているのですが……少しだけ私の話を聞いて頂けますでしょうか?」
なんだかこの変な男の話が気になった俺は、なんとなく頷いていた。
「申し遅れましたが私の名はサースです。これでも一時は割と有名な付与士だったのです。そんな私ですが実は昔、死にかけた事がありまして……その時に主従を結んでいた妖精が私と一体化した事で、なんとか生き延びる事ができたのです。しかし体の半分以上が妖精化した結果、私も進化したようなのですが……どうやら今の私は中途半端でして半妖精みたいな状態なのです」
「ようせい……?」
サースがあまりにもイメージとは違う妖精だった為、俺の脳が理解するまで時間がかかっていた。
「そんな妖精化した私ですが、実は問題がありまして……一体化した妖精と主従を結んでいたせいなのか、私は相手もいないのに『従』のままになってしまったのです」
「つまり、今は体の一部に魔力的な制限がかかったままだと言う事かな……?」
「その通りです。しかしそれを解除する方法もわからず、付与士だった私は禁呪に頼らなくてはならない程魔力操作が不安定になってしまったのです。ですから貴方様のような強い方がマスターになって契約を上書きをしてくだされば、私はこんな事をしなくてもよくなる筈なのです。どうか私を助けると思って主従関係を結んで下さい!」
再び土下座したサースに俺は困ってしまったのだ。
「それって、強い人なら俺じゃなくてもよかったんじゃ……」
「いいえ、ダメです!貴方のように強く傲慢で気高き魂の持ち主意外、私はマスターと呼びたくありません」
どうやらサースはかなり頭が固いタイプのようだ。
多分、もっと早くに解決できた筈なのにわざわざ理想の相手を待つなんて、変な奴だよね。
「それで、主従になった俺に理はあるのかな?」
「もし私と主従契約してくださるのでしたら、このお店も貴方様の物になります!!」
「……この店が、俺の物?」
「そうです……私の物は全てマスターの物です!」
確かに、売ってる商品や付与は俺向けの物が結構ある。今は半壊させてしまったけど、直すついでにさらに俺の好みの店にすればいいかもしれない。
それに直感だけど、この男が最高の付与士なのは本当なのだろう。つまりデオを今以上に守るには、この男は役に立つかもしれない。
そう判断した俺は主従契約を受け入れる事にした。
「そこまで言うのなら仕方がないね。もちろん俺が『主』、『従』はサースだよ。契約は後でするとして……その前にさっきの話で気になった事があるんだけど、聞いてもいいかな?」
「はい、なんでしょうか?」
「さっき、付与の為に禁呪に手を出したって言ってたけど……デオをあんな格好にしたのもそれが原因なのかな?」
少し目を泳がせると、サースは一冊の本を取り出したのだ。
「はい、私はこの本に書かれた禁呪を使っていまして……実はその付与には大量の精液が必要なんです」
「それでこんな装置を使ってると?」
「申し訳ありません、私はマスターのパートナーに酷い事を……」
「本当なら、半殺しの所なんだけど……」
既に怒りは収まってるけれども、ここはデオの為に一発ぐらい殴っておくべきだろうか?
でもデオも俺を置いて行ったのだから、少しは反省してもらわないといけないよね。
そう思った俺は、いい事を思いついたのだ。
「あのさ、精液が沢山必要ってだけなら相手は俺でもいいって事だよね?」
「は、はい……それは勿論」
「それならサースの為に、俺がデオから精液を搾り取れるだけ搾り取ってあげるよ」
「いや、ですが主従関係を結べばそれを使わなくても……」
「でも最後に禁呪を使ってサースも満足したいでしょ?」
「そ、それは……そうですが」
「それに俺も、この気持ちをデオにぶつけないと気が済まないからね」
そう言いながら俺はデオの所へ歩いて行く。
今のデオは何か媚薬でも盛られているのか既に目がトロンっとしていた。
「ねぇ、デオはそろそろ物足りなくなってきたよね?」
「う、ウル……えっ?」
デオはどうやら俺の言葉を理解したのか、少しずつ恐怖で顔を引き攣らせていた。
そんなデオに、俺はニッコリ笑顔で言ったのだ。
「俺を置いて行くような悪い子には、久しぶりにお仕置きしてあげるからいっぱい出そうね?」
そして俺はデオと繋がってる装置のスイッチをカチっと入れたのだ。
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