14 / 40
14話
しおりを挟む
突拍子もない話。
普段なら、そう思えてしまうが、今までの、この少年の話には確かに、確実に信憑性を感じている兵士が多くなっていた。
ここにいる総勢約一万人は、その影響下にない兵士たち。
ヒーロスは、エクエスとその信頼のおける部下たちに、すべての兵士を調査させ、祖国を去る覚悟のあるものを選定した。
雪など見た事もなかった。作物が取れない日などなかった。
ひもじいという言葉知らなかった。
悪政を敷く王だけの問題ではなく、ただ自分の家族、縁者、友人、恋人が、その多くが先の見えない生活に、漠然とした不安を感じている者たち。
だからこそ、先に家族を隣国へ逃がれさせ、名代という建前を得る事で軍を動かし、魔王の影響下にない兵士たちを根こそぎ連れてきたのである。
家族たちを先に行かせた理由。
兵士たちが途中で、臆したり、裏切りを避けるため。
また、それらを人質に取られないため。
引き連れていては、何かあった時に足手まといとなるためだ。
そうして、まんまと連れてきた兵士たちに、ヒーロスが今この国で何が起こっているのかを話した理由。
何れ来るだろう魔物からの祖国奪還のための戦争。
そこに大義名分と、戦意、意志、覚悟などを持ってもらうためだった。
兵士とその家族だけに絞ったのは、さすがのヒーロスでも国中の国民の移住を大々的に宣伝することなどできないからだ。
大きく動けば、この地を愛する者たちの反発、領地を持つ貴族たちの利権などなど、無駄な争いによる混乱と犠牲がでる。
それをついて、必ず魔王配下が動き、よりアノイトスの状態の悪化が速くなる。
時間も然程残っていない事も大きかった。
アノイトスは、聖女が去ったことにより、不毛な地となるだろう。
それが、思ったより早かった。
短い時間でも、必要なのだ。
ヒエムスそのものからの協力を得、体制を整えておかなければならない。
そして……。
「さぁ、話しはここまでだよー! 見張りの交代! 聞いてくれてありがとねー!」
ヒーロスは、すたすたと遠くで座っているエクエスのもとへと歩いて行った。
兵士たちは立ち上がり、それぞれ顔を見合わせては、ヒーロスの話の内容について、確認したり意見交換しながら、持ち場に戻っていく。
「あっ! そうだった。アズバルド君! 君はこっちに来てくれる?」
「は、はい!」
二十歳くらいの青年アズバルド。
ヒーロスは、エクエスに彼を側付にすると言った。
エクエスは、ご隋にと答えるにとどめた。
やがて、交代した者の休憩も終わり、一行は再びヒエムスを目指す。
ヒーロスの隣を行く、エクエス。
一つ後ろで付きそうアズバルド。
数日後、街道の右手に大森林がある地域を通っていた。
森は、見るからに枯れ木が目立っている。
「殿下……」
「うん、あるとすれば……だね」
しばらく進んでいると、前方に荷馬車と複数の人影が見えて来た。
その者たちは、軍の一行の邪魔にならないよう森側に避けて、通り過ぎるのを待っている。
「エクエス」
「はっ……とまーれー!!」
「さて、アズバルド」
「はい」
「彼らをどう思う?」
「……普通の村人……まさか?」
「うんうん、君はいいね。兵士よりも文官とか作戦参謀とかに向いてるかもね」
「……お、恐れ入ります」
「エクエス、魔法使える?」
「多少ならば……」
「じゃ、一応、当たらない範囲で」
「はっ……クラック・グラウンド」
エクエスは、小声で魔法を唱える。
複数の村人と思われるものたちの前に、突如地割れが起きた。
飛び退く村人たち。
それは、村人の動作にしては、早すぎた。
「エクエス。任せたよ」
「はっ……後方をお願いします」
「はーい」
エクエスは、馬を走らせ、驚いている村人たちがいる場所へ。
隊列を右手にして少し離れた位置で止まると、剣を抜いた。
「槍隊! 抜槍! 半月陣! 前衛は森を注視せよ!」
良く訓練されているのだろう。
兵士たちはエクエスを中心として、村人に向って大き目の半月を描き槍を構えた。
村人の一人が、震えながら口を開く。
「なな、何事でございましょうか?」
その問に、エクエスは魔法で答える。
「ブレイク・カバー!」
発せられた声と共に、村人たちの身体が歪む。
一方、中後方に居るヒーロスは、馬の鞍の上に立って、後方の隊列に向って、同じようにブレイク・カバーをかけていた。
村人たち、そして兵士の幾人かが、声を荒げながら正体を現す。
近くの兵士たちが驚き後ずさる。
「シャドウォイド!?」
人に姿を変えられる魔物、影魔だった。
後方に現れた影魔に、兵士たちは武器を構えて円陣を作る。
それに対し、ヒーロスは檄を飛ばした。
「愚か者! 円陣ではなく、森に向って半月陣だ!! 早くしろ!! 来るぞ!!」
森。
二つの赤く光る点。
それが、次々と現れ、近づいて来た。
兵士の一人が叫ぶ。
「森から魔物多数!!」
エクエスが前中衛。ヒーロスが中後衛。
大まかな指示を出し、部隊長、班長が引継ぎ、細かい指示を出す。
魔物たちと戦闘が始まった。
エクエスは、魔物を次々と打ち倒しつつ、回りを見る余裕があるようだ。
ヒーロスは、鞍の上で的確に指示を出しつつ、楽しそうだ。
「いいか! 死ぬんじゃないぞー!! 家族がヒエムスで待っている!!」
エクエスの言葉に、兵士たちは大声で応える。
数百はいただろうか。
的確な指示と奮起した兵士たち、集中して連携を取りながら、魔物を次々と打ち倒していく。
怪我をしたものは、足手まといにならぬよう、後方へ距離を取って回復魔法を受ける。
小一時間は戦っただろうか。
重傷者が幾人かは出たが、命の危機となる重体者を出さず、魔物数百を討伐した。
エクエスが、剣を天に突き上げ、鬨《とき》の声を上げる。
兵士がそれに一斉に応えた。
そして、しばしの休憩。
「殿下、思ったより……」
「うん、そうだね……小物ばかりだったね。舐られてたか、手並みが見たかったか……だけど……」
「ええ、ここで我らを始末出来なかった事を後悔させてやりましょう」
眼光鋭く意志を述べるエクエスに、ヒーロスはあどけない笑顔で応えた。
ヒーロスは、森をのある一点を眺め、含んだ表情を作っている。
それを見た、エクエスもアズバルドも同じ方向を見たが、そこはただ木々があるだけだった。
良く見ると兵士たちの顔色が変わっている。
魔物が、アノイトスに現れた事など、開闢《かいびゃく》の歴史以来、聞いた事がなかったからだだろう。
兵士たちは皆々、ヒーロスが言った。
「魔物に乗っ取られている最中」という言葉に嘘はないのだと、冗談ではなかったのだと、思ったに違いない。
さまざまに、思い思いの顔をしている。
休憩を終えた兵士たちは、回復魔法でも直ぐには治せない重傷者を荷馬車に乗せた。
そして、エクエスの号令で、一行は再びヒエムスへ向かって行軍していった。
普段なら、そう思えてしまうが、今までの、この少年の話には確かに、確実に信憑性を感じている兵士が多くなっていた。
ここにいる総勢約一万人は、その影響下にない兵士たち。
ヒーロスは、エクエスとその信頼のおける部下たちに、すべての兵士を調査させ、祖国を去る覚悟のあるものを選定した。
雪など見た事もなかった。作物が取れない日などなかった。
ひもじいという言葉知らなかった。
悪政を敷く王だけの問題ではなく、ただ自分の家族、縁者、友人、恋人が、その多くが先の見えない生活に、漠然とした不安を感じている者たち。
だからこそ、先に家族を隣国へ逃がれさせ、名代という建前を得る事で軍を動かし、魔王の影響下にない兵士たちを根こそぎ連れてきたのである。
家族たちを先に行かせた理由。
兵士たちが途中で、臆したり、裏切りを避けるため。
また、それらを人質に取られないため。
引き連れていては、何かあった時に足手まといとなるためだ。
そうして、まんまと連れてきた兵士たちに、ヒーロスが今この国で何が起こっているのかを話した理由。
何れ来るだろう魔物からの祖国奪還のための戦争。
そこに大義名分と、戦意、意志、覚悟などを持ってもらうためだった。
兵士とその家族だけに絞ったのは、さすがのヒーロスでも国中の国民の移住を大々的に宣伝することなどできないからだ。
大きく動けば、この地を愛する者たちの反発、領地を持つ貴族たちの利権などなど、無駄な争いによる混乱と犠牲がでる。
それをついて、必ず魔王配下が動き、よりアノイトスの状態の悪化が速くなる。
時間も然程残っていない事も大きかった。
アノイトスは、聖女が去ったことにより、不毛な地となるだろう。
それが、思ったより早かった。
短い時間でも、必要なのだ。
ヒエムスそのものからの協力を得、体制を整えておかなければならない。
そして……。
「さぁ、話しはここまでだよー! 見張りの交代! 聞いてくれてありがとねー!」
ヒーロスは、すたすたと遠くで座っているエクエスのもとへと歩いて行った。
兵士たちは立ち上がり、それぞれ顔を見合わせては、ヒーロスの話の内容について、確認したり意見交換しながら、持ち場に戻っていく。
「あっ! そうだった。アズバルド君! 君はこっちに来てくれる?」
「は、はい!」
二十歳くらいの青年アズバルド。
ヒーロスは、エクエスに彼を側付にすると言った。
エクエスは、ご隋にと答えるにとどめた。
やがて、交代した者の休憩も終わり、一行は再びヒエムスを目指す。
ヒーロスの隣を行く、エクエス。
一つ後ろで付きそうアズバルド。
数日後、街道の右手に大森林がある地域を通っていた。
森は、見るからに枯れ木が目立っている。
「殿下……」
「うん、あるとすれば……だね」
しばらく進んでいると、前方に荷馬車と複数の人影が見えて来た。
その者たちは、軍の一行の邪魔にならないよう森側に避けて、通り過ぎるのを待っている。
「エクエス」
「はっ……とまーれー!!」
「さて、アズバルド」
「はい」
「彼らをどう思う?」
「……普通の村人……まさか?」
「うんうん、君はいいね。兵士よりも文官とか作戦参謀とかに向いてるかもね」
「……お、恐れ入ります」
「エクエス、魔法使える?」
「多少ならば……」
「じゃ、一応、当たらない範囲で」
「はっ……クラック・グラウンド」
エクエスは、小声で魔法を唱える。
複数の村人と思われるものたちの前に、突如地割れが起きた。
飛び退く村人たち。
それは、村人の動作にしては、早すぎた。
「エクエス。任せたよ」
「はっ……後方をお願いします」
「はーい」
エクエスは、馬を走らせ、驚いている村人たちがいる場所へ。
隊列を右手にして少し離れた位置で止まると、剣を抜いた。
「槍隊! 抜槍! 半月陣! 前衛は森を注視せよ!」
良く訓練されているのだろう。
兵士たちはエクエスを中心として、村人に向って大き目の半月を描き槍を構えた。
村人の一人が、震えながら口を開く。
「なな、何事でございましょうか?」
その問に、エクエスは魔法で答える。
「ブレイク・カバー!」
発せられた声と共に、村人たちの身体が歪む。
一方、中後方に居るヒーロスは、馬の鞍の上に立って、後方の隊列に向って、同じようにブレイク・カバーをかけていた。
村人たち、そして兵士の幾人かが、声を荒げながら正体を現す。
近くの兵士たちが驚き後ずさる。
「シャドウォイド!?」
人に姿を変えられる魔物、影魔だった。
後方に現れた影魔に、兵士たちは武器を構えて円陣を作る。
それに対し、ヒーロスは檄を飛ばした。
「愚か者! 円陣ではなく、森に向って半月陣だ!! 早くしろ!! 来るぞ!!」
森。
二つの赤く光る点。
それが、次々と現れ、近づいて来た。
兵士の一人が叫ぶ。
「森から魔物多数!!」
エクエスが前中衛。ヒーロスが中後衛。
大まかな指示を出し、部隊長、班長が引継ぎ、細かい指示を出す。
魔物たちと戦闘が始まった。
エクエスは、魔物を次々と打ち倒しつつ、回りを見る余裕があるようだ。
ヒーロスは、鞍の上で的確に指示を出しつつ、楽しそうだ。
「いいか! 死ぬんじゃないぞー!! 家族がヒエムスで待っている!!」
エクエスの言葉に、兵士たちは大声で応える。
数百はいただろうか。
的確な指示と奮起した兵士たち、集中して連携を取りながら、魔物を次々と打ち倒していく。
怪我をしたものは、足手まといにならぬよう、後方へ距離を取って回復魔法を受ける。
小一時間は戦っただろうか。
重傷者が幾人かは出たが、命の危機となる重体者を出さず、魔物数百を討伐した。
エクエスが、剣を天に突き上げ、鬨《とき》の声を上げる。
兵士がそれに一斉に応えた。
そして、しばしの休憩。
「殿下、思ったより……」
「うん、そうだね……小物ばかりだったね。舐られてたか、手並みが見たかったか……だけど……」
「ええ、ここで我らを始末出来なかった事を後悔させてやりましょう」
眼光鋭く意志を述べるエクエスに、ヒーロスはあどけない笑顔で応えた。
ヒーロスは、森をのある一点を眺め、含んだ表情を作っている。
それを見た、エクエスもアズバルドも同じ方向を見たが、そこはただ木々があるだけだった。
良く見ると兵士たちの顔色が変わっている。
魔物が、アノイトスに現れた事など、開闢《かいびゃく》の歴史以来、聞いた事がなかったからだだろう。
兵士たちは皆々、ヒーロスが言った。
「魔物に乗っ取られている最中」という言葉に嘘はないのだと、冗談ではなかったのだと、思ったに違いない。
さまざまに、思い思いの顔をしている。
休憩を終えた兵士たちは、回復魔法でも直ぐには治せない重傷者を荷馬車に乗せた。
そして、エクエスの号令で、一行は再びヒエムスへ向かって行軍していった。
2
あなたにおすすめの小説
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
追放されたヒロインですが、今はカフェ店長してます〜元婚約者が毎日通ってくるのやめてください〜
タマ マコト
ファンタジー
王国一の聖女リリアは、婚約者である勇者レオンから突然「裏切り者」と断罪され、婚約も職も失う。理由は曖昧、けれど涙は出ない。
静かに城を去ったリリアは、旅の果てに港町へ辿り着き、心機一転カフェを開くことを決意。
古びた店を修理しながら、元盗賊のスイーツ職人エマ、謎多き魔族の青年バルドと出会い、少しずつ新しい居場所を作っていく。
「もう誰かの聖女じゃなくていい。今度は、私が笑える毎日を作るんだ」
──追放された聖女の“第二の人生”が、カフェの湯気とともに静かに始まる。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」
魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。
鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。
(な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?)
実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。
レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。
「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」
冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。
一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。
「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」
これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。
地味令嬢を見下した元婚約者へ──あなたの国、今日滅びますわよ
タマ マコト
ファンタジー
王都の片隅にある古びた礼拝堂で、静かに祈りと針仕事を続ける地味な令嬢イザベラ・レーン。
灰色の瞳、色褪せたドレス、目立たない声――誰もが彼女を“無害な聖女気取り”と笑った。
だが彼女の指先は、ただ布を縫っていたのではない。祈りの糸に、前世の記憶と古代詠唱を縫い込んでいた。
ある夜、王都の大広間で開かれた舞踏会。
婚約者アルトゥールは、人々の前で冷たく告げる――「君には何の価値もない」。
嘲笑の中で、イザベラはただ微笑んでいた。
その瞳の奥で、何かが静かに目覚めたことを、誰も気づかないまま。
翌朝、追放の命が下る。
砂埃舞う道を進みながら、彼女は古びた巻物の一節を指でなぞる。
――“真実を映す者、偽りを滅ぼす”
彼女は祈る。けれど、その祈りはもう神へのものではなかった。
地味令嬢と呼ばれた女が、国そのものに裁きを下す最初の一歩を踏み出す。
役立たずと追放された聖女は、第二の人生で薬師として静かに輝く
腐ったバナナ
ファンタジー
「お前は役立たずだ」
――そう言われ、聖女カリナは宮廷から追放された。
癒やしの力は弱く、誰からも冷遇され続けた日々。
居場所を失った彼女は、静かな田舎の村へ向かう。
しかしそこで出会ったのは、病に苦しむ人々、薬草を必要とする生活、そして彼女をまっすぐ信じてくれる村人たちだった。
小さな治療を重ねるうちに、カリナは“ただの役立たず”ではなく「薬師」としての価値を見いだしていく。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる