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②生徒会長さまの思惑 1

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「あ、あ、……ねぇ、だめよ、有川くんおねがい、」
 壁際に設置された背の高い本棚に押しつけられた心春は片脚で立っていられなかった。小声でやめてと懇願しながら、堪らず、震える指先で有川のカッターシャツ越しの腕を掴む。心春はそれでもなんとか教師としての面目を保とうと、せめてみっともない声を上げないようにくちびるに力を込めた。
 有川の指が下着の隙間から、心春の奥深くまで入り込んでいる。有川が左手で心春の右脚を持ち上げているのだ。心春は有川にしがみつきながら、震えるように浅い呼吸を繰り返した。
 生徒とはいえ、十代後半の男に押さえつけられては、小柄な心春にはどうすることもできない。ましてや自分は教師、有川に至っては生徒会長だ。絵に描いたような品行方正で優等生な有川が、まさかこんなことをするなんて全然思っていなかった。自分のためにも有川のためにも、こんなところを見つかるわけにはいかない。自分でなんとかしなくては。
「だから言ったじゃないですか、心春センセイ。男しかいないような高校に、こんな短いスカート履いてきたらだめですよって」
 有川はいつもの柔和な笑顔とは違い、意地の悪そうなそれを浮かべながら、尚も心春のなかを蹂躙してくる。心春は自分の足に垂れてくるぬるりとした感触が気になって仕方がなかった。
「だって……もう男子校じゃないから、ね、おねがいもう、苦しいからぁ、」
「ああ、苦しかったですか、ごめんなさい。じゃあ、こっちのほうがいいんですかね」
「あっ! あっ、~~っ、だめ、だめ、そんなしたら……ん、ん、ん……」
 有川がぐいぐいと押し込んでいた力をゆるめて、代わりに小刻みに抜き差しし始める。心春は思わず大きく喘ぎそうになって、慌てて有川を掴んでいた手のひらで自分の口もとを覆った。
「男子校じゃなくなったって言っても、まだ九割は男ばっかりなんだから、若いセンセイは特に気をつけないと。僕がわざわざ授業をサボって、こうして教えてあげなかったら、センセイそのうち回されちゃうところだったかもしれませんよ」
 自分の行為を正当化しようとしてくる有川に反論しようにも、今の心春には声を出すことはできない。いくら授業時間中で人がいないとはいえ、ここは図書室の奥の死角なのだ。静かすぎる部屋では小声でも響いてしまいそうだ。隣の部屋には司書の先生だっているし、下手に身じろぎをすると窓から見られてしまう。心春は口もとを覆ったまま、必死になって頭を振った。
「もしここが図書室じゃなくて、たとえば放送室で、マイクのスイッチでも入れられてしまってたら、どうするつもりだったんですか。どんなに大事件でも、心春センセイが責任を負うことになっちゃいますよ」
 そんなこと冗談じゃない。
 二度とスカートなんて履かないと心に誓いながらも、心春は今の有川から与えられる刺激に抗うことに必死だった。乱れた呼吸はできるだけ静かに吐き出さなければ。気を抜けない。この刺激に、夢中になってはいけない。背中に当たる本棚が硬くて痛い。
「さて、時間もないことですし、僕も気持ちよくしてもらってもいいですよね、心春センセイ」
「えっ」
 耳もとにくちびるをぐっと寄せて囁かれ、心春の肩がびくっと跳ね上がる。
「ひとりだけ気持ちよくなってるのはずるいですよ。まさか気持ちいいのを否定したりはしないですよね。ここ、こんなことにしてて、気持ちよくないなんて言わせませんよ」
 有川は言いながら、心春の奥から指をずるりと引き抜き、代わりに心春の身体を反転させた。心春が目の前にきた本棚にすがりつくと、後ろからごそごそと制服を脱ぐような音がして、同時に自分のびしょびしょにされた下着がずり降ろされる。
「あ、有川くん、おねがい、待って」
「ああ、大丈夫です、心配しないでください。避妊具くらい持ってますし、口でしろなんてことも言いませんよ、今回は」
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