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真相

アルゲティ2

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明日も更新します。




「はぁ...あの人は本当に祈りの乙女の役割人なのよね?ただの変態ストーカーじゃない、」

トゥカーナはとても疲れていた。先程までクァーリィと(一方的であり変態的に)やり取りしたからだ。クァーリーと距離が離れた事で安心してしまいどっと疲れが出ていたが、その疲れを吐き出す様に大きなため息をついて気持ちを切り替えた。

「...おね...」

なぜならアルゲティが先程から額に玉のような汗をかいている、先程から何かうわ言を言っているが何を言ってるのかわからない、おね、までは聞こえるが、その後何を言ってるかわからない、続く言葉を聞こうとしたがそれよりも額の汗が凄い、
トゥカーナは少しでも悪夢から目覚めて欲しいと願いを込め、ハンカチを取り出し玉のような汗を優しく拭く、するとアルゲティの口から聞こえなかった言葉の続きが漏れ出した。

「お願い...」

「大丈夫ですか?アルゲティ様、そう言えば寝言に返事しちゃダメなのよね。アルゲティ様は一体何をお願いしたいのでしょうか、先程言っていたあの事かな?でも空に帰ってしまった人は帰ってこない...。
でも私がそれを言う資格はない...か、歴史で空に帰ったと習っていたはずのアルゲティ様に真実を伝えてしまい未来を教えねじ曲げて変えてしまった。」

「うぅ...。」

眉を寄せ苦しそうな顔をするアルゲティの額の汗をハンカチで拭く、このハンカチはとても優しい香りがする。髪の毛は汗てしっとりとしてるのに、ハンカチに仕込んである洗浄魔法のお陰でサラサラだ。艶のある髪をゆっくり撫でる。安心出来るように自分の手より大きく柔らかい手をとると、ここにいるよと優しく握りしめる、
子守りを歌う時のリズムで優しくトントンとする。前世のミクが幼少時に母さんによくしてもらっていた。トゥカーナは懐かしさで胸が一杯になり優しい気持ちになる。前世幼い頃母さんが歌ってくれた歌詞はぼんやりとしか覚えてないが、ハミングなら出来る。マイナー過ぎる、しかも母さんが適当に作って気に入ってしまい、妹や弟にも歌っていた。うちの家族しか知らない歌だからここで歌う、ハミングだけど、

「大丈夫ですアルゲティ様、フフーン~」

一定のリズムでトントンしていると、苦しそうだったアルゲティの顔がしだいに和らいでいった。
この花柄のハンカチはお茶で作ったクッキーをライラさんに手土産で渡した際にお礼に貰った。その時のライラさんとの会話を思い出すと、とても嬉しい気持ちになって思わず笑ってしまう、



『このハンカチはね、私が丹精込めて作ったの、トゥカーナの事を思いながらひと針ひと針ね。このハンカチはお返し、お礼のお礼は受け付けないわ、でも可愛いトゥカーナがどうしてもと言うなら貰うけどね。』

『ありがとうございます。わぁ!とても細かくて綺麗な刺繍ですね。ハート型の花はここら辺では見ないです。実物を見てみたいくらい綺麗!』

『その花はエンジェルハートというの、恋人がプロポーズする時に使用する事が多いわね、空の人族には花言葉と言うものがあって、この花言葉は永遠に君だけを愛する。よ、とてもロマンチックね。トゥカーナの結婚式の日にちが決まったら教えて、私が育ててるのを持ってきてあげるわ、今から取っておきを育てなきゃ!土の精霊と光の精霊にも手伝って貰って楽しみ!』

ライラさんは結婚式の時に花嫁が持つブーケとして持ってきてくれると約束してくれた。

『えっと...実はお菓子の新作が出来たので貰ってください、あっこれはお礼のお礼になってしまいますね。』

『いいのよ、私はトゥカーナのお菓子が大好きだから、次はこちら地の人族で流行りそうなドレスを作ろうかしら?...フフ。ハンカチとドレスを見たら、あの子もっとヤキモチ焼きそうね。楽しみだわ、』

ライラさんは更に笑みを深め更に衝撃的な一言をいう、

『婚約者に見せびらかして、私から貰った事を自慢してちょうだい、まぁ...あの子なら気がついて何かしら行動しそうね、楽しみにしてるわ、と伝えておいて、』

と言っていた。アウラ様はそのハンカチにすぐに気がついて、誰に貰ったのかと聞いたので素直に答えました。
結論から言えばアウラ様の笑顔がとても怖かったデス。



トゥカーナはエニフ王国に行く前にアウラの瞳の色と同じ色のネックレスの先端を取り出すと、アイスブルーの宝石をじっと見つめた。早く旅を終わらせてお家に帰りたい、ふと視線を上げれば木の影からこちらを見る変態クァーリーはぁー...と大きなため息もつきたくなる。

「アルゲティ様はもしかしてあのやり取りを毎回してたのかな?私にはとても無理でした。いっぱい疲れました。」

「姉さんいかないで、」

悪夢を見ているのであろう、苦しそうに声を出してるアルゲティの額の汗を拭いてあげながら見る、トゥカーナの頭の中でミューの声「アルゲティ!」と聞こえたと同時だった。空から白い光が近くに現れ結界に向かって飛び込むように飛んでくる。木の端から物凄い速さでクァーリィがやって来るのが見えたが、とてもとーっても(大切な事は2回言う)疲れるだけだから無視しておこう心の中で頷いた。トゥカーナはこちらに飛んでくるミューに呼びかける。

「ミュー久しぶり、そうだ遮音の魔法も掛けてたんだった。」

ミューに私の声は届かなかった。木を避けるためジグザグだけどミューは私達に向かい一直線に飛ぶ、クァーリィは走りながら「ぶつかるよそこの精霊!」と叫んだ。遮音の魔法は中の会話は聞こえないが、外の声は聞こえるらしい、白い光はどんどんこちらに進んでくる。

「ミュー危ないぶつかる!」

私はそう叫んでいた。ミューはそれでも止まらない、結界の目の前に来ると結界がそこだけ開いた。ミューは私と契約の糸で繋がっている精霊だからだろうか、ミューは小さな人型になると、柔らかな草の上に横たわるアルゲティに飛びついた。
アルゲティとの契約の糸が切れた時の事を話すミューは、とても悲しそうで苦しそうだった。人族の感情で言えば肉親と別れる以上の悲しみになるらしい、

「アルゲティしっかりするのよ!アルゲティ!そうだ癒しの魔法をかければアルゲティは「ミューごめんね」っていつもの様に呑気に言うのよ、お願いミュー1人で置いていかないで、私も一緒に行くなら一緒が良かったのよ、なんで?答えてよアルゲティ、なんでミューを1人にしたのよ、お願い目を覚まして欲しいの、えっ?息をしてる?」

ミューはアルゲティだけを見てるから私に気が付かないらしい、ミューはアルゲティに抱きついてペタペタと頬を優しく叩いた。頬が温かく息をしてると気がついたミューは、ようやく気を抜く事が出来たらしいが、アルゲティを見てまだ癒しの魔法がいるかしら?などと落ち着かずにいる。ソワソワしてるミューになんて声を掛けていいかわからずいると、アルゲティが声を出した。

「...うーん」

「アルゲティが生きてる!とても嬉しい!」

アルゲティはまた寝てしまった。ここで私は小さな人型になったミューの涙を拭いた。ミューは顔を上げとても驚いた顔をした。そこでやっと私の存在に気がついたらしく、何度か私とアルゲティを見た後に気がついた。酷いなぁとムーっとしたが今はアルゲティが無事なことを教えてあげたい、まだアルゲティと私と視線をウロウロさせているミューに小声で話す。

「ミュー、アルゲティ様は今寝てるだけよ、」

「ト...トゥカーナ?!沢山心配したの!それにな...なんで空に帰ったアルゲティが生きてるの、こんなの嬉しすぎるの、」

「精霊が何を言ってるのか口が小さくて分からないが、アルゲティは寝てるだけだよ、」

クァーリィは読唇術も使えるらしい、クァーリィの言葉にミューはギョッとして見た。そして早い速さでクァーリィから私達が見えないようにスモークフィルムみたいに結界を曇らせた。

「フン!これで見えないのよ、アルゲティが寝てる時に見るなんて失礼極まりないの、アルゲティがいる所に必ずいるのあいつ、アルゲティは認知すればそれ以上の事をしない、って甘い事言ってたの、それよりトゥカーナ旅は終わったのかしら?アウラが心配してるの、アルゲティと一緒に帰りましょう!」

ミューの言葉はとても嬉しい、アウラ様にとても会いたいが、光の精霊王様から預かったペンダントを取り出して見ると数字は『2』前の所で『3』だった事から、ここともう1ケ所ということだろう、私はミューにペンダントを見せて説明をする。丸い形をしたペンダントの宝石をぐるりと取り囲む様に10ヶ所石が埋め込まれている、

「ミュー、えっと後2つ残ってるの、転移魔法陣はここに連れてきたから、ここにあるのは分かってる。もう1ケ所はまた行かなきゃいけない、」

「そう、シャム様はまだ捕らえられたままなのよ、何ヶ所回ったの?」

「8ヶ所ね。残りが2つだから、全部で10ヶ所ね、これでシャムちゃんが解放されるなら、私は旅をした甲斐が有るわ、ついでにシャムちゃんの名前も広げてきたしね、原因になった事も5つ目の旅で解決してきたから、これで空の人族の長の名を忘れ、姿を見て恐れる事も無くなれば良いと私は思っているわ、
後は時々シャムちゃんが人々の前に出ないと、もしかしたら歴史は繰り返すかもしれない、」

「ミューはいつも感じていたの、シャム様が住む山をとても怖いと思っていたの、だけどあの山はアルゲティと追いかけっこをしてよく遊んだ場所でもあるの、あの時は感じなかったけど、段々と怖いものとして認識していたのかもしれないのよ、けど…今はシャム様を見ると自然に心が落ち着くの、安心しなさいトゥカーナあなたの旅は無駄ではないのよ、」

ミューはいつものぬいぐるみサイズになると私にギュッと抱き私の胸に頭をつけグリグリする。ミューがこんなに自分の感情に素直なのは珍しい、いつもツンツンデレなのにツンはどこかに置いてきたらしい、今はデレデレだ。私はミューの頭を撫でながら懺悔をする。

「ミュー、私は過去のアルゲティ様に会って助言を言ってしまい...過去を変えてしまったわ、でも過去を変えてしまった事を私は後悔してない、だけど助けられなかった命もあるから、ごめんなさいアウスト様までは助けられなかった。」

トゥカーナは空に向かい懺悔をする。アルゲティの側で寝ていた猫が起きたのか背伸びをして、トコトコとトゥカーナの所に来て前足で顔を洗っている。猫ちゃんに落ち込むなと言われた気持ちになった。
落ち込んでいたトゥカーナはそれだけで癒された。元気な状態ならニヤニヤしていたかもしれない、とてもクァーリィを気持ち悪いとは言えないが、可愛い動物相手なら仕方がないと思う。猫ちゃんはトゥカーナの目の前に座るとじっとトゥカーナを見る。

「過去を変えた責任は取ってもらう、しかし我は寝るのに忙しい...ブニャ。」

「ミュー聞いた?猫ちゃんが喋った!」

ミューは盛大なため息をつき私をじっと見る。私は残念な子を見る様な視線に耐えられずにもっと話す。

「ミューこの猫ちゃんと知り合いじゃないの?アルゲティ様と一緒に魔法陣から出てきたからてっきり知ってる猫ちゃんだとばかり、それにしてもこの世界の猫ちゃんは話すのね。私...知らなかった。」

「トゥカーナ...、このブサイクな鳴き声の魔物と知り合いなのかしら?それにしても魔物に黒いはいないのよ、黒はとても神聖な色なのよ、あなたも知ってると思うけど、教会に関わる者は皆黒いモノを大切にするの。闇の精霊王ミクロン様のお洋服の色は黒に近いけど、全く別物の色なのよ、」

「ミューは物知りね。ありがとう。」

ミューは魔物だといって猫ちゃんには近づかない様にしてるが、猫ちゃんは

「ブニャ、」

猫ちゃんはやはりアルゲティの側が良いらしい、次はアルゲティのお腹の上に乗って前足でフミフミして均しそのまま寝てしまった。トゥカーナは羨ましいと思ってしまい物欲しそうな顔をしてアルゲティと猫を見る。猫が乗ってから数分と経たずアルゲティは苦しそうに唸りはじめた。
お腹の上でスヤスヤ眠る猫と苦しそうに唸るアルゲティを見ていると、ミューから鋭い突っ込みが入った。

「普通は話さないのよ、それよりもトゥカーナは魔物が話し出したら受け入れそうね。」

「魔物なんだねあの猫ちゃん、でも魔物でも動物でも愛らしい事には変わらないからいいの、」

私が寝てる猫の頭を撫でようとした時、お腹の苦しさからだろう、アルゲティが叫びながら飛び起きた。

「苦しいのよもう!人がせっかくいい気持ちで寝てたのに!お腹重いし息できないし...えっ!ラ...これ言っちゃダメえっと...猫?!なんで!」

アルゲティはお腹に視線を下げ猫を見る。かなり不自然に視線をさまよわせ猫を抱き上げた。不自然過ぎるが自身は上手くごまかせたと満足気である。たぶん嘘が付けないのだろう、ラのつく名前を思い出してまさかねと冷や汗をかいた。大精霊王様のラグエルだ。なぜアルゲティと一緒に居たのか謎のままだ。
猫をお腹の横に寝かせると、アルゲティに飛びついてきたミューを受け止める。

「アルゲティ久しぶりなの!」

「ミュー!元気してた?」

アルゲティはミューを抱きしめて涙を流した。
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