気がついたら乙女ゲームだった!チートって何ですか?美味しいですか?

おばば様

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真相

アルゲティ1

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オブラートに包んだつもりですが、包まれてない気がします。




魔法陣から出てきた私は、まず教会の中に入り3人いる司祭様に会うことにした。アルゲティは空の人族の教会の裏手にある霊園に、歴代の祈りの乙女が眠る墓地があるらしい、そこに魔法陣を設置すると言っていたが、その肝心な場所が分からない、白い石の上に引かれた黒色の絨毯の上をゆっくり進んで行くと、祭壇の奥に大きな大精霊王様像がある。司祭服を着て厳つい顔で髭を生やしているが、両手を前にのばし...これ前ならえの状態だから威厳もへったくれも無い、司祭様は祭壇奥でシスターと話をしている。私は祭壇の前にある階段で1度頭を深く下げ、5段程の階段をゆっくり登る。

赤い髪の下半分を刈り上げたキノコ頭の司祭様は、私を見ると驚いた顔をした。そして掛けてる丸メガネの位置を直すとゆっくり頭を下げた。

「こんにちは、大精霊王様の御加護がありますように。カシャ司祭様お聞きしたいのですがよろしいでしょうか?こちらにクシャ司祭様はいらっしゃいますか?」

「シャムさんお元気そうでなによりです。そしてお久しぶりです。あなたに大精霊王様の御加護がありますように、クシャ司祭は不在です。私でよければお聞きします。何かお困り事ですか?」

カシャ司祭はゆっくりと頭を上げ微笑む、前にあった時は他の司祭様の後ろを着いて歩く見習いだった。今は立派な司祭様になった様で、親戚のおばさん感覚で接してしまいそうになる気持ちをグッと押さえる。

「お久しぶりですカシャ司祭様、アルゲティ様のお墓にお花を添えようと思ったのですが、場所が分からなくて、」

「そうですか場所をお教えしましょう。もし宜しければシャムさんご案内しましょうか?」

よく見ればパラパラとお祈りを捧げる人がいて、司祭様を補佐する見習いや、シスターの姿しか見えない、シスターで対応出来ない事は司祭様が話を聞く、連れ出してしまったら迷惑になるだろうと頭を横に振る。

「いいえ大丈夫です。カシャ司祭様は何かとお忙しいと思いますし、私も大丈夫ですから、場所だけお願いします。」

「キキ司祭も街外れの教会に出かけてしまって、シャムさん気を使わせてしまってすいません。でも迷子になったら手紙で連絡をください、」

「ありがとうございます。カシャ司祭様、お恥ずかしいですが、私の迷子の話を聞いていたのですね。」

カシャ司祭は袖の中から1枚の手紙を取り出し私に見せる。丁寧な字で書かれていた。ちなみに教会内での空間ポッケの使用は禁止だ。

『教会で迷子になったらその場で手紙を送ってもらい、送り主のところに転移を許可します。(但し教会内に限る。)』

「...この手紙まだあったのですね。」

司祭様にアルゲティの眠る場所を聞いたトゥカーナは、カシャ司祭にお礼を言う、教えられた場所に行く為歩く、途中翼を出した黒いシスター服を着た人達とすれ違った際挨拶をされる、頭をキチンと下げられるとこちらとしても頭を下げたくなる。だからトゥカーナはきちんと返していき考える。トゥカーナもすれ違った人に挨拶した方が自然だ。そう思いパラパラ入って来る人達に挨拶していった。男の人も女の人も白いワンピースを着てる人も居るが、翼を出しカラフルな服を着てる人も多い、すれ違う人達は皆挨拶をしてくれる。私も不自然にならない様に昔教えられた挨拶で返す。

「こんにちは。」

「こんにちは、大精霊王様の御加護があります様に、」

緑色の髪の女の人が私の挨拶を聞いてニコニコと笑い私に話しかける。

「昔に祈りの乙女が教会にいらっしゃった時に、その挨拶を聞いていたわなんて懐かしいのでしょう、お嬢ちゃんは偉いわね、先代の祈りの乙女がいなくなっても、言葉は受け継がれるのね。」

「はい、私は先代の祈りの乙女を知っています。知恵と魔法を教えてもらいました。」

「今代の祈りの乙女は年若くに空に帰ってしまったの、やりたい事もあったでしょうに気の毒ね。だけど次代の祈りの乙女が生まれたとも聞いていない、その言葉を聞いてもしかしたらあなたが、と思ったのだけどあなたは違うのね、」

変な事を言ってごめんなさいね。そう言うと女の人は私に頭を下げ歩き出した。私も慌てて頭を下げ歩く、
出口までもうすぐという所で、背が高い金髪の男の人とすれ違った。

「こんにちは、大精霊王様の御加護があります様に、」

「こんにちは。...君は」

すれ違った少女から懐かしい香りに振り返り、男はニヤリと笑う先程の少女は男の声は聞こえなかったようで、そのまま教会の裏手に行った様だ。

「この香りはまさに祈りの乙女!」

その男の人が後ろを着いてくるのをトゥカーナは気が付かない、人気の無いアルゲティの墓地の前まで歩いた。



司祭様に聞いた場所にたどり着いたトゥカーナは、空間ポッケから花束を取り出しお供えする、五角形の白く美しい石にはアルゲティの文字を見つける。文字が掘られた石が埋もれそうな程の沢山の花、墓があるのはとても見晴らしがよく空の人族の街を一望できる場所だ。

私がここに着いて祈りを捧げた時だ。空から強烈な光が墓を包み込んだ。とても大きなオーキッド色の魔法陣が墓石を中心に現れ、その魔法陣の中から横たわった女の人と黒い猫が転移して来た様に姿を現す。

「凄い大掛かりな物を作ったんだね。転移陣だけじゃなく、光の演出もあるなんて、びっくりしたよ、」

恐る恐る近づい見れば過去に何度も会ったアルゲティその人であった。手をかざし呼吸を確認したが定期的に呼吸音が聞こえるだけ、耳元で呼びかけたが深い眠りの中にいるからか、アルゲティの反応は無かった。

「そうだ猫ちゃん!」

アルゲティと一緒に出てきた黒く大きな猫は、アルゲティの横で身体と尾っぽを丸めスヤスヤ眠っている。そこに風が吹いてアルゲティのスカートが風で捲れそうになった。お腹が冷えそうだし何より寝てる間に恥ずかしい思いをしてはいけない、そう思った私は空間ポッケから上掛けを取り出した。お昼寝用の上掛けをアルゲティに掛け魔法で上掛けが風で捲れない様にした。猫は起きたのか顔を上げ私をじっと見て鳴いた。心做しか棒読みの様な気がするが気のせいだろうか?

「ブニャー」

「起きたの猫ちゃん、私のところにおいで、こっちの猫ちゃんはブニャって鳴くのね。可愛くニャーって言ってごらん。」

「ニャー」

「よく言えました。でも鳴き方が変わるんだね。」

「ニャー。...めんどくさい奴、」

猫が鳴いた時突風が吹き聞こえなかった。私は猫と目を合わせ観察する。こちらの世界の猫の目はとても赤い、猫を撫でたい私は手を伸ばし猫を撫でようとした。しかし猫にはその気は無いようで猫は前足を上げて私の手を軽く引っ掻いた。私は驚いて声を上げた。
ここでミューの契約の糸が裂けるなんて思ってもみなかった。

「ひゃ!いた...くない。」

猫は引っ掻いた手をペロリの舐めてそっぽを向く、アルゲティの足元に行き眠る準備を始めた。引っかかれた所は痛くないが、赤い引っ掻き傷が残ってしまった。治癒魔法を掛けたが消えない、警戒した猫に近づくと逃げられるので、少し離れた場所から観察する。

「聞いてはいたけどこの世界の猫って大きいんだ...」

この世界の猫はこんなに大きいのか、もはや猫というよりも柴犬程の大きさだ。自分の膝に座らせたら重いと思う、私はモヤモヤと考えていた。私が色々と考えていると不意に肩をトントンと誰かが叩いた。振り向くと男の人が興味深そうにアルゲティをじっと見てる。

「アルゲティ?」

「えっ?私は違います。私はトゥカーナです。」

ここは霊園だから誰がいても不思議ではないが、振り返るとそこに居たのは金髪の男の人、確か司祭様に挨拶に行った時に教会で挨拶をしてすれ違った筈だ。

「寝顔もいいね。でもアルゲティにはいつも通り目が合ったら困った顔して笑ってくれると、僕としても観察のしがいがあるんだけどね。でも祈りの乙女アルゲティは空に帰ったはずだ。実に興味深い僕のサンプルと照合してアルゲティかどうか確認したい、前に回収したサンプルでもある髪の毛だけでも持って帰れないだろうか、」

「ひぃ!気持ち悪い!」

なんて気持ち悪い発言をする人だ。アルゲティだけでも助けないとと思った。トゥカーナの身体はほぼ元に戻っているがクァーリィに比べたら背丈はそこまで大きくない、
横たわり寝てるだけの無防備なアルゲティの前に立った。そして大きく両手と翼を広げ男の視線を遮断する。男は私の行動にも屈する事も無く、何とか私の隙間からアルゲティを見たのだろう目を輝かせた。

「多分君の後ろにいるのは私の研究対象アルゲティだ。右目の下にあるホクロや唇の形や顎にあるホクロの位置が本人のものと一致する。あっそうだ、僕の名前はクァーリィ、けして怪しい者では無い祈りの乙女の補佐をする役目を持ってる。アルゲティの家まで連れて帰したいから、トゥカーナそこをどいて欲しい、」

「翼と手を広げた隙間から見てなんでわかるのですか?絶対に嫌です!」

多分前半はいつも言ってる言葉なのだろう、私の中の信号が青信号から黄色になる。役割人なら証明書を持ってるはずだ。

「えっ?!私の研究対象?あなた本当に役割人なのですか?証拠見せて下さい、」

「君小さいね歳はいくつ?迷子かな?お母さんかお父さんと一緒じゃないの?お家はどこ?送っていこうか?大丈夫僕は怪しくないよ」

クァーリィは話を誤魔化そうとしてる様だ。ますます怪しい感じがする。私はきっと睨むと実際の年齢を言えない事を思い出した。ここで今の実年齢の13歳なんて言ったら地の人族だとバレてしまう、だが今は翼があるから誤魔化せるが、年齢はレディに聞いてはいけない事だ。

「レディに歳を聞いてはダメです。あと迷子ではありません!はやく証明書をみせてください、あと知らない人にはついて行かないと言われてるから行きません!怪しい人は自分を怪しくないって言います。」

「わかったわかったよ、ちょっと待ってね。」

役割人になる人は幼少時に教会に申請をすると、役割人証明書を発行してもらえる。
トゥカーナはそれを出してと言うが、クァーリィは空間ポッケに手を入れ「うーんこの前尋問受けた時に仕舞ったはずだけど、どこいったのかな?」なんて言っている。尋問だなんて普通の人はまずされない、ますますもって怪しい、

トゥカーナは怪訝な目で空間ポッケを漁る男を見ると、
クァーリィは空間ポッケに手を入れたまま私をじっと見る、本当に悪気は無いよと肩を竦め寝てるアルゲティをまた見る。私はまた慌てて寝てるだけのアルゲティを庇う様に手と翼をさらに大きく広げた。

クァーリィは背が高く猫背、身体が細いためヒョロりとした感じだ。顎辺りまでの細いストレート金色の髪、春の新緑の様な明るい緑色の瞳、メガネを掛け目と鼻の間にはソバカスがあり笑うと人好きそうな顔をしてる、

「証明書あった、君に読めるかな?さぁどーぞ、」

「くしゃくしゃですね。これ大事な物でしょ?」

「アハハ...面目ない、でも僕の大事なサンプルが大量にあってねそれは綺麗にしまってあるんだけど、他の物になると手を抜いてしまって、」

クァーリィは空間ポッケから目的のものを見つけ私に見せる。空間ポッケにあったはずなのにシワだらけだった。私はシワを手で伸ばし確認すると確かに祈りの乙女の補佐をする役割人だった。歳は345歳、多くの空の人族がこの歳を言う時に340歳と言うらしい、
クァーリィの見た目は20代前半で若々しいし、アルゲティの母親のライラさんは年齢不詳の所があるから、どこかの年齢で見た目が止まってしまうのかもしれない、私はムーとしながらクァーリィを見る。クァーリィは魔法で私に触れること無く退かすと、アルゲティに向かって両手のひらを向けた。

「まずはアルゲティの診察をするよ、このままで大丈夫アルゲティには触らない、魔法で簡易的に診るからね。もし異常があれば専門家に見せた方がいい、この方法はクシャ司祭様が直々に祈りの乙女を補佐するなら覚えておいた方がいいと言われ必死に覚えたんだ。ふむ魔力の流れは正常だし翼も大丈夫だけど、なんで君にアルゲティの魔力が流れ込んでるんだ?不思議だな、魔力の事調べるの僕好きなんだ。ぜひ僕の研究対象になってよ!3食と昼寝とおやつを付けるよ!」

なんと!夢の3食昼寝付き!なんて魅力的なお誘いだが。けど私は研究対象にはなりたくない、なぜならトゥカーナは今の生活に満足してる。
それに男の人と2人きりなんてアウラにも申し訳ない、もしこんな事がアウラにバレた時の方が問題だ。トゥカーナの顔がサーっと青ざめる。
言動は穏やかで口元は優しく笑っているのに、目が笑っていない時のアウラを思い出した。

「お断りします!それに私には婚約者がいます。男の人と2人きりなんて出来ません。」

「そんな小さな頃から婚約者なんて居るんだ、けど大丈夫安心して、僕は君の身体に興味はない、魔力だけ...いや、翼も見たいんだ!」

クァーリィは私の両手を掴もうとする、私は慌てて背中に両手を回し首を何度も横に振る。

「それも嫌ですし安心出来ませんし気持ち悪いです。それ私だから言われても平気ですが、初対面の人や知人に言うのは良くないと思います。特にあなたに好意を持った人に言っては絶対にダメです。」

「そこまで言う?!酷くない?」

クァーリィは何か思い当たる節があるのか、頭の後ろに手を当て「だからかー」と口にした。誰に言ったのか聞きたくないが一応聞いておこう、

「心当たりがあるのですか?」

「あはは、えっと150歳の頃かな?アルゲティのお父さんに、娘さんには興味はないけど翼には興味がある。って言ったら「可愛い娘に興味がないとはなんだ!」ってめっちゃ怒られたよ、そうかあれは失礼な事だったんだ今知ったよ、」

「手遅れだったのですね。娘大好きな人だから怒ったのは目に見える様にわかります。...私のお父様も子煩悩で...お父様お母様アリス姉様ペルセイ兄様に会いたい。もちろん帰ったら1番にアウラ様に会いたい、けど私が帰るまでは待ってて欲しいのが一番かな?」

「手遅れって酷い...えっ?!」

私が祈りを捧げて祈ると背中の翼は白く輝く、先代の祈りの乙女に聞いた話しだと、祈りの乙女には決まり文句があるらしい、たしかに希望を口にするだけで叶えられるなら大変な事になってしまう、その為大精霊王様の名前を先に言うらしい、これは最初の祈りの乙女から受け継がれ続けている為理由は分からないらしいが、納得出来る事だった。
祈りの乙女を知ってるクァーリィは目を輝かせ縋るように、祈るトゥカーナに近づいた。

「君も祈りの乙女なのか?祈りの乙女のアルゲティは生きてるのに、祈りの乙女と空の人族の長は1代だけ存在するとても珍しいんだ。
是非僕の研究対象になって!君がいるならアルゲティの後を追って羽根が落ちるのを待たなくてもいいし、あっ!でもアルゲティの観察を続けていたから僕は再開したいとおもってるんだ。そんな顔しないでよ、僕は変なことしてないよ、アルゲティと目が合ったら毎回こうやって笑ってるから大丈夫だよ、けどアルゲティは毎回困った顔して笑うんだ。なんでだろう?」

クァーリィは再現する様にニィーと笑う、人好きする笑顔だ。毎回と言うことは1日何度も目が合ってる時もあるという事だ。そしてアルゲティはストーカーされてるのに気がついていて、クァーリィを認識する事でそれ以上の被害が起きない様に、目が合ったら笑っていたのかもしれない、

背筋がゾワッとした。これは前世で言うところのストーカーと言う奴なのでは?
トゥカーナのクァーリィへの危険信号が点滅していた黄色から赤色になった。

こうしてはいられない、危険を感じたトゥカーナはクァーリィを背中を押してアルゲティから引き離す。クァーリィは「ハイハイ僕は歩くよ、君は小さいのにチカラが強いね」と言う、トゥカーナは弱い女子に向かって何言ってるんだとムッとして更に背中を押すチカラを強める。

「ここに立っていてください、アルゲティ様に近づいてはいけません!」

「わかったよ、僕はここで待ってる。観察だけなら良いよね?寝てる姿を見るの久しぶりだ。アルゲティは横を向いて寝る癖があるんだ。たまに精霊を抱きしめて寝てる時もある。」

「今まで本当に捕まらなかったのですか?アルゲティ様の為にすぐに捕まって罪を償って下さい!」

「僕は治安部に何度か捕まったけど、役割人の証明書を見せて解放されてる。前回門番に捕まった時に証明書を握りつぶされたんだった。300年位昔の話しだから忘れてたよ。」

こんな危険人物を寝てるアルゲティに近づけてはいけない、次にクァーリィを閉じ込める魔法を書いてその中に閉じ込めた。小さな子供のする事だと私に背を押され歩くクァーリィは、自分の意思で歩いてる感は否めないが、今はアルゲティから引き離すことが先決だ。少し離れた所に連れて行き棒を出して地面に魔法で線を引く、絵は下手だけど、四角や丸なら簡単に描けるし楽だ。
それに私はなぜか指をパチンと鳴らし魔法を掛けるより、線を書いた方がきちんと魔法が掛かる。ここは改善しないと後々後悔しそうだ。

「へ...危険人物を野放しには出来ません。」

トゥカーナは変態と心の中でそう呼んでいたから、口に出しそうになり慌てて言い換えた。さすがに本人目の前にして言えない、対してクァーリィは目を輝かせトゥカーナを見る。

「僕を監禁するの?イイネ!僕が君の研究対象なのか?さぁ僕を研究するといい!」

「うひっ」

変な声が出た。クァーリィの目は好奇心でキラキラしている、どうぞと言わんばかりに両手を広げた。トゥカーナを見るが無視をする。変態は見られると嬉しがると聞いたことがある。

「一時的です!」

魔法で木の棒を作ると、アルゲティと私と猫を囲むように地面に魔法で線を書いた。実際は草の上に書かれているから地面には影響は無い、取り囲むと魔法の線はキラキラ光って発動する。
クァーリィにここに入ってはダメと言うと、中の観察出来るから大丈夫だと言われ不可視の魔法を掛けようとしたが「不可視にすればアルゲティに何かあった時困るよ」と言われ出来なかった。
まぁこれを書いておくと許可した人や物しか入れない、むろん中に居る人に危害を起こそうとしてる人も入れない、最後にクァーリィを取り囲む結界を解いて完成、クァーリィはやれやれと肩を竦めトゥカーナを見る。

「やだなぁ。そんな警戒しないでよ、僕は祈りの乙女の羽根だけが欲しいんだ。もしかしてトゥカーナも祈りの乙女なのかい?だが安心して欲しい、僕はトゥカーナに1ミリも触れたいと思わない、だが君の翼に興味はとてもある是非とも取れてしまった羽根は欲しい、取れた羽根は無いかい?」

「空の人族にとって羽根は重要な物、おいそれと渡せません!ライラさんも言ってました。」

「アルゲティのお母さんに会ったの?そうか...じゃあ僕はあの木の影に居るから。アルゲティに体調の変化があったら教えてよ、で羽根が落ちたらちょうだい!あっ!そうだ!僕の羽根と交換でどうだい?」

不可視には出来ないけど声を遮断することは出来る。音声の遮断をしようとした時、アルゲティは苦しそうな声を上げた。

「姉さん私たちをおいていかないで、あの子はかわりになった自分をずっと責めてた...姉さん。」

クァーリィはポカンとした顔をして、視線をすっと上にあげ目を細めた。

「アルゲティに姉妹は居ないはずだ。僕はずっと影から見守ってきたからね。でも姉がいたとしたら新発見だよ、祈りの乙女が生まれた代は必ず一人っ子なんだ。いいねその人の事も研究したい!」

「それ本当に言ってはダメなヤツです!本当に気持ち悪いですよ!」

トゥカーナは両腕をさすり眉を寄せクァーリィを睨む、速攻音の遮断の魔法を掛け大きくため息をついた。クァーリィはまだブツブツと何か言ってたが、何度か頭を捻ると少し離れた木の影に行きそこから顔だけを出してる。正直とても怖い、
苦しそうにうわ言をいうアルゲティの背中を優しく摩ると、苦しそうだったアルゲティの表情は少し良くなった。

「アルゲティ様にお姉さんがいらっしゃったのね。前回お会いした時には、一人っ子だと言っていたけど血が繋がってなくても、アルゲティ様の身近な方に助けた方がいらっしゃるのですね。」

思い当たる節はあるが自分では無いはずだ。トゥカーナは言葉を出さず真摯に祈りを捧げる。アルゲティが悪夢を見ないようにと、助けられた人が気負いしないよう祈る。

「私も同じ心境だから心苦しい、これまで考えないようにしてたけど...マサは自分を責めてないといいけど、ダメよ私は助けた事を後悔してない、だけど妹弟と母さんには向こうで元気に暮らしてるといいな。」

トゥカーナが助言をして助かったアルゲティを見つけた。先程までうなされていたが、今はすっかり呼吸も落ち着いていて、もしかすると起きるまで時間がかかるかもしれない、木の影に隠れてこちらを見る男に警戒しつつ、トゥカーナはアルゲティの様子を見つつここにたどり着いた経緯を思い出した。木の影に隠れこちらを見るクァーリィを見て深いため息をついた。
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