顔を焼かれ妹に荒野に捨てられた公爵令嬢、その身を偽り皇太子の護衛として王国へと帰還する

高井繭来

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【48話】

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 折角のイブニングドラスでしたが、ストールによって空いた背中は全部隠されてしまいました。
 皇太子様が自分以外の男に背中は見せるな、と。
 相手はラブラブの神様と魔王様なのにそれでもダメなんだそうです。
 給仕の男も見るから駄目だ、と。
 あの美貌の神様を置いて、私を見る酔狂な男なんて皇太子様しか居ない気がするんですが。

 でも、「ポリフォニー」ではなくて「カノン」を気にかけてくれたのは嬉しくあります。

 現在私の恋のライバルは「ポリフォニー」のようですからね。
 自分が恋のライバル何て私くらいでしょうねぇ。
 どちらも私なので好かれるのは嬉しいのですが。

 そして皇太子様にリードされながら王族専用の食堂に向かいます。

 テーブルに並ぶご馳走に思わず唾を飲みます。
 私は幼少期、あまり良い食生活をしていなかったのでかなり食い意地が張っているのです。

 しかもマロン様の手料理!
 あの天界1料理上手の神様の食を全部管理しているマロン様の手料理ですよ!
 神様と同じ料理が食べれるなんて、恐悦至極です!!

 本日は中華のフルコースなんだそうです。

 食事の前に、王朝自慢の「王朝特選中国茶」から「優品杉林渓高山茶」をいただきました。
 深い森林を思わせてくれるような清々しい住んだ味わいの高山茶でした。

 前菜は彩り冷菜盛り合わせです。
 チャーシュー」「クラゲ」「茄子」「鰹」など六品ならなる豪華な彩り冷菜盛り合わせです。
 チャーシューは肉厚でボリューム感があり、旨味もたっぷり。
 コリコリとした食感のクラゲは最高の出来で食が弾みます。爽やかな茄子も食欲を増進し、前菜としての価値を高めてくれました。

 スープは上海蟹入りコニッシュジャックスープです。
 贅沢な秋の味覚、上海蟹がふんだんに使われているスープをいただきました。
 醤油とオイスターソースをベースとした上海料理らしいスープでした。
 コニッシュジャックは、生態系を考慮しフカヒレの代わりに提供されるお魚で味もよいです。

 海鮮は海老と蝦夷鮑の塩味炒め
 銀杏と黄色の花びらのコントラストがとても綺麗な逸品です。
 海老は新鮮で食感もよく、塩加減がちょうどよいプロの味を堪能しました。
 蝦夷鮑は、コリコリとした心地よい食感と共に奥深い旨みがギュッと濃縮されている高級食材。
 素晴らしい美味しさでこちらも美味しさの波が感動のように押し寄せてきました。海老と同様、塩加減が絶妙で、ひとさらの見栄えも美しい、こちらもプロの技を堪能しました。
 
 肉料理は牛フィレ肉のソテー 秋野菜添えです。
 牛フィレ肉のソテーは、牛フィレ肉の中華風ステーキといった内容で、中華風のソースが濃厚で旨味が豊かです。 
 牛フィレ肉の食感もよく、食べ応えある逸品でした。
 アクセントとして秋らしく栗が載せられているのもよいです。

 2回目の海鮮は真鯛とソフトシェルクラブの甘辛炒め スパイシーガーリックソルト掛けです。
 甘辛く炒められた高級珍味のソフトシェルクラブが秀逸な味を堪能させてくれます。
 ソフトシェルクラブはキトサン・カルシウムが効率よく摂取できる優れた栄養食ですので女性にもオススメ。
 黄金色に揚げたパン粉に様々な乾物・香辛料・調味料を加えたス中華風スパイシーソルトの風味で、とても香ばしくサクサクとした食感が絶品。
 中国料理の奥深さを感じさせてくれた珠玉のひとさらでした。

 〆の食事はホタテ貝入りおこげ 三種海鮮のソルティッドエッグソース餡かけです。
 こんがりと揚がったおこげに海鮮あんかけを混ぜていただきました。
 大きな肉厚のホタテ貝がこの料理のアクセントとなっていました。
 おこげはカラッとした食感が魅力的。
 ホタテ貝と3種の海鮮とおこげが交じり合う素敵なハーモニーを楽しみました。

 最後のデザートマロンプリン・小菓子です。
 栗の風味と食感を残しながらも口当たり滑らかに仕上げたマロンプリン。
 栗の風味が思っていたより豊かで、とろけるような口どけとマロンの味わいが素晴らしいです。
 秋を感じさせてくれるもみじのプレゼンテーションも素敵でした。

「はぁ、やっぱりマロン様の手料理は素晴らしいですね」

 ウットリしてしまいます。
 女ならこの料理の腕に憧れない者は居ないでしょう。

「これ程の美味な料理を食べるのは初めてです。流石は神様が食される料理なだけあります」

「ふふ、ウチのマロンは凄いであろう?」

 あ、神様のドヤ顔いただきました。
 神様って地上から連れてくるほどマロン様の事がお気に入りですもんね。
 何時か私も神様に求められたいものです。
 料理の腕を磨いたら第2侍女として雇って下さいますかね?

「カノン、また良くない考えをしていないか?」

「私もフォルテシモ様にこんな素敵なお料理を作れたら良いな、と思っていた所です」

 ニッコリと皇太子様の方へ向いて笑顔を浮かべます。
 少しポリフォニーを意識して、皇太子様のご機嫌が上がる感じの笑顔です。
 そんな技を覚えた自分が恐ろしいです。

「そうか、私はカノンが作るものなら何でも1番美味しいがな………」

 皇太子様、「カノン」はまだ手料理を作った事はありませんよ?
 料理を提供していたのは「ポリフォニー」です。

 どうやらやっぱり私の1番のライバルは「ポリフォニー」であるようです。

 それを見通しているのか神様が愉快そうに笑みを浮かべながらお酒を煽っているのが見えたのでした。
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