上 下
148 / 161
御使い様が誑しに進化しました

【御使い様は学びたい50】

しおりを挟む
「見事に料理全てが不味かった、コレは腕の振るい甲斐があるな」

 ニヤニヤと笑う深海。
 クロイツに着くまでほぼ月の物の症状に苦しめられてストレスが溜まっているのである。
 お腹は痛いわ頭は痛いわ。
 思考回路も靄がかかったみたいにすっきりしないわ。

 唯一良かったのはフィルドと密着して過ごせたことだろうか?

 深海はフィルドの匂いが好きなのである。
 本人に言ったことは無いが。
 だから自分が作っておいて何だが、香水も付けないで欲しいなぁと思っていたりする。
 でも他の者にフィルドの香りを嗅がれるのも何か嫌なので、やはり香水は付けて貰おうと思っている。
 寝る時に付けていなければそれで良い。
 寝る時にフィルドの香りを胸にいっぱい吸い込むと安心して寝れるのだ。

 なので実はシーズンが終わっても深海はフィルドと共に寝たかったのだが、昨晩シーズンが終わるとフィルドはソファで眠りについてしまった。
 流石にソファでは忍び込めない。
 深海は残念な気持ちでベッドに横になったのだった。

 反対にフィルドは天国よりの地獄、もしくは地獄よりの天国を免れてホッとしている。
 あれ以上無防備で発情している深海に迫られたら理性の糸を切らない自信がない。
 ベッドの上の階の発酵巫女が居なければヤバかった。
 ラキザと鳴海に9割殺しなれる事確実だった。
 9割で済むだろうか?
 あの深海を溺愛している2人が?
 もしかしたら本当に犯罪が起こるかも知れない。 
 殺人と言う犯罪が。
 何とか殺人鬼を2体作り出さずにすんだフィルドは漸く人心地付けたのであった。

 深海の感触と香りを堪能出来ないのは残念であるが。

 身内から犯罪者を出したくない。
 それ以前にフィルドはまだ死にたくない。
 深海が成人したらプロポーズすることを決心しているのだ。
 もう指輪のデザインまでしてしまった。
 勿論オーダーメイド品だ。
 こればかりは安物ですましたくない。
 清貧主義の深海でも受け取って貰う気満々である。
 なにせ愛情とオドをたっぷりと込めた指輪を作る予定なのだから。
 ソレに関してはまた後日にでも。

 そんな訳でフィルドは深海にメロメロなのである。
 深海の体調も戻り久しぶりにご馳走でも、と思っていたが、まさかあんなに不味い店に当たるとか…客は満足そうに食べていたが。
 そう言えば辛そうに食べていたのは皆冒険者風か商人風の者であった。
 他国の人間にはつらい味、と言う事だ。

 これならフレイムアーチャの食事の方がマシであった。

 今回食べたのは
 ・フィッシュ&チップス…下味がなく、ぶつ切りにした魚の身を衣で揚げただけのものが出てきた。 
 臭みをとることもしないので、クセのある臭いで食べられない品物だった。
 ・スターゲイジー・パイ…伝統的にニシンの一種、ピルチャードを使用したパイ。
 魚の頭部がつき出て上を見ていることから「星を見上げるパイ」と呼ばれているらしい。
 漁師の大漁を願った漁師町の家庭料理で、そのため味もさまざまですが、見た目のインパクトで敬遠される。
 ・ウナギのゼリーよせ…労働者の貴重な栄養源。
 ぶつ切りにしたウナギを茹でて、ゼリーを絡ませた1品。
 臭みをとらない、下味はつけないという料理の基本(?)が生きていて、ゼリー部分に臭みが集約されている。
 見た目の悪さだけでなく、冷えたウナギの脂が下に残る不快さと、口内に突き刺さるウナギの背骨、後を引く臭みがきつく皆1口で死んだ殺人兵器。

 思い返すだけで意識が飛びそうな品々であった。
 国民らしき者は普通に食べていたので、おそらくこれがこの国の料理の普通なのだろう。
 味覚が死んでないかクロイツ人?

 そのお陰か深海のやる気に益々火が付いた。
 フィルドは厨房で動き回っている深海を手伝おうかと思ったが、その顔が余りにも生き生きしていたので、自分は美味しく頂く仕事に勤めようと幸せに頬を緩ませるのであった。

 だって料理を作る奥さんを待つみたいでちょっと素敵なシチュエーション、でしょ?
しおりを挟む
感想 209

あなたにおすすめの小説

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

【書籍化確定、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

処理中です...