聖女として召喚されたのは双子の兄妹でしたー聖女である妹のオマケとされた片割れは国王の小姓となって王都復興を目指しますー

高井繭来

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御使い様が誑しに進化しました

【御使い様は学びたい50】

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「ここがクロイツですか」

 深海がクロイツへの城門をくぐり、感嘆の声を上げた。
 あきらかに今までの王国とは街並みが違う。
 ファンタジー世界というよりは高度成長期の国の街並みを見ているみたいだ。
 お陰で空気は少し悪い。
 霧の都と言う言葉が良く似合う。

 霧と言えばかつて「霧の都ロンドン」と言われていたが、ここでいう「霧」の正体は実はスモッグだった。
 19世紀のイギリスの産業革命で、19世紀から20世紀中頃までイギリスの空は大気汚染物質でいっぱいだったのである。
 特にイギリスの冬は寒いため、多くの市民が暖炉などで石炭燃料を使い、煙やすすが煙突から垂れ流し状態だったためだ。

 特に大きな被害が出たのが1952年の12月。
 ほとんど前が見えず車の運転ができないほどで、ひどい地域では自分の足元すら見えなかったそうだ。
 健康被害ももちろんひどく、この冬は気管支炎などで亡くなった方が例年よりも4000人も多かった。
 結果的にこの年の死亡者数は12000人を超えた。

「霧の都ロンドン」…響きはとても美しく、幻想的なロンドンの景色を想像するが、実際は大気汚染だった訳なのである。

 クロイツは正に今その時代の最中にいるようだ。
 空気が綺麗になるのにはどれくらいかかるだろうか?
 まぁ魔術もある世界だ。
 何かしらの方法で解決は出来るだろう。

「今日はもう遅いからご飯外で食べて宿を取ろう。王城に行くのは明日の朝で良いかなフカミちゃん?」

「はい、問題ありません。こんな時間に行っても邪魔なだけでしょうから」

 シーズンも終えて深海は絶好調である。
 そしてそろそろ料理がしたい。
 このクロイツがロンドンと同じような国なら、深海の腕を存分に発揮できる。

 そう、イギリスの料理は不味いので有名なのだ。

 まずい料理と言えばイギリス料理、イギリス料理と言えばまずい。
 まずい料理の代名詞として世界的な評価を得ているイギリス料理だ。
 「あの国の料理はまずい」と言われるとき、大抵の場合は現地の味付けが旅行者に合わないだけというのがある。
 
 またロシアや北欧など、外食産業が発展していないため、旅行者が美味しい料理にありつけない国もある。
 しかしイギリス料理は、イギリス人自身が「まずい」と話のネタにし、フィリップ殿下(エリザベス女王の夫)も「イギリスの女性は料理ができない」と発言したこともあるほどだ。

(月の物のせいでストレスは満載…今日は料理でストレス発散してやる…………)

 そして深海は不味い事を確信しながらも、まだどこかでファンタジーだから料理が美味しい可能性もあり、と食堂へ入ったのだった。
 結果?
 もちろん惨敗である。
 やはり高度成長期の国は栄養さえ取れればいいと言う考え方なのか、ほとんどの料理を残してしまい、無駄なお金を払ったとルナトーが怒りのあまり厨房付きの宿探しが始める事になったのだった。

※残った料理はちゃんと処理されて家畜のご飯になりました。
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