聖女として召喚されたのは双子の兄妹でしたー聖女である妹のオマケとされた片割れは国王の小姓となって王都復興を目指しますー

高井繭来

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御使い様が誑しに進化しました

【御使い様接近禁止事情】

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「きゃぁっ!」

 水の入った花瓶をメイドの少女が躓いた拍子に落としそうになった。

 トン
 トプン

 その身体を深海の右腕が支えていた。
 お陰でメイドは廊下に転げずにすんだ。
 器用に花瓶の水を床に落ちる前に花瓶に回収するなんて技を見している。
 その一滴も水が落ちなかった花瓶が深海の左手にある。

「大丈夫でしたか?」

「ひゃ、ひゃひゃひゃひゃひゃいっ!!」

 密着した状態で言葉をかけられてメイドは変な声で返事する。

「それは良かった。重いものを運ぶときは無理せず男の人を頼ったら良い。貴女の細腕でこの花瓶は重いでしょう?もし花瓶が割れてその上に転びでもしたら、せっかくの可愛い顔が傷ついてしまう。それは俺にとっては悲しい事ですからね。
力仕事をする時に俺がそばに居るならいつでも声をかけて下さいよ?
可愛らしい女の子に頼られるのは男として嬉しいモノなんですから、遠慮せずに、ね?」

 ニコリと蕩けそうな笑顔を深海は浮かべる。
 その笑顔にメイドはキャパオーバー状態だ。

 美形の笑顔…凄い………。

 そして声が物凄く甘いのだ。
 言葉の端々に甘い台詞が含まれていて、もしかしたら好意を抱いてくれてるんじゃないかと勘違いしそうになる。
 甘い声に甘い笑顔。
 すっかり深海は誑しになっていた。
 主に男として。

 おかしい、深海の性別は生まれた時から女である。
 染色体は勿論XXだ。
 男の要素などは無いはずなのに、何故か男前前回である。

 近くで事のあらましを見ていた使用人たちも顔を赤くしている。
 それ程深海の色気が凄まじい。

 男として………。

 あまりにも男前で、男の使用人にまで「抱かれても良い」なんて思わせている。
 本人に自覚は全くないのだが。
 最近の深海は飛ぶ鳥を落とす勢いで、使用人たちのハートを落としていく。

 15歳にしてこの色気。
 顔の造りは絶世の美貌ではないが、十分に整った顔立ちをしている。
 それに最近の深海の男前ぶりに、最近加わった声の甘さ。
 正直、深海が誑しに変化してから1か月で”御使い様接近禁止”を本人のあずかり知らぬところで王宮内で命が下っていたりする。
 誑し、怖い………。

 そして深海をそんな誑しにした人物が1人。
 プカプカと浮かびながら廊下を移動していた。
 その人物を発見したとたん、深海の目が色の籠ったものになる。

 それを見て腰を抜かしそうな使用人多数。

「フィルド様、何処に行かれるんですか?」

「あ、フカミちゃん…て、また女の子誑し込んでる―――――っ!!」

「じゃ、俺はこれで失礼しますね。そこの男性の方、この華奢な少女の荷物を持ってあげて下さい」

「は、はいっ!!」

 深海は密着していたメイドから体を離すとフィルドの方へ駆け寄った。
 メイドが内心「ちょっと残念」と思っていたことも知らないまま。

「誑している、て何ですか?俺は単にレディファーストなだけですよ?」

「だからってあんな笑顔向けちゃダメ!」

「そんな変な顔してましたかね?」

「物凄く反応に困る笑顔してるのフカミちゃんは!だからそう言う顔は俺以外に見せたらダメなんですぅ!!」

「フィルド様、焼き餅焼いてたりします?」

「うぅ~~~~~…」

 黙り込んだフィルドに深海がクスリ、と笑みを浮かべる。
 正直先ほどより蕩けた笑顔だ。
 色気が半端ない。
 ………男として。

「俺の心はフィルド様の綺麗な瞳のものですよ、だから、ね?焼き餅焼くくらいなら俺に存分に素顔見せて下さいよ、他に気持ちが微塵も向かないぐらいに…堪能させて?」

 スリ、と深海が浮いているフィルドの顔に手を伸ばして、指先でその頬を撫で上げた。

 ぼふんっ、と煙が出そうなくらいフィルドの顔が真っ赤になった。

「フカミちゃんのエッチ!破廉恥!乙女心誑しぃっ!!」

 叫びながらもフィルドはその指を避けはしない。
 好きな異性のと身体的接触。
 嫌な訳がない。
 だが、立場が逆なのだ。
 フィルドが深海をメロメロにしたいのに、ずっと深海にメロメロにされている。
 ちなみにやはり本人無自覚。

「誑してる自覚無いんですけど…俺何かが魅力的な人たちを手玉に取ることが出来る訳じゃないですか」

「頼むから自覚して、フカミちゃん…んでそう言う顔と声するのは俺と2人だけの時にして………」

「可愛ですねフィルド様、食べちゃいたいくらい」

 クスクスと悪戯気に深海が笑みを零す。
 そのやり取りを見ていた使用人たちは「魔術師長が陥落するのは時間の問題だな」と思っていたとかいないとか。
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