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【オマケが作る調味料】

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「では本日は調味料を作りたいと思います。フィルド様、今回も活躍期待してますよ」

「OK、任せて深海ちゃん」

 今日も厨房で晩餐会へ向けてお料理作りだ。
 飲み物はコーラと焼酎とビールで今回は十分だと判断した。

 深海は10日の猶予を貰っていたが余った時間が出来た。
 なら晩餐会迄の残された時間、カグウのために突っ走ろうと思った由縁である。

「本日作るのは醤油です。材料の大豆は
では何時もの如く時間をすっ飛ばして調理に入ります。

 醤油麹の材料

 大豆  1000g
 小麦玄麦 1000g
 醤油種麹 10g

 醤油の材料

 醤油麹 適量
 水: 醤油麹に対して1.1倍
 塩: 総重量に対して18%

 まず大豆のごみを取りながら水でよく洗います。
 その後、きれいな水に1日(24時間)浸けておきます。
 フィルド様、回復魔法を」

「ほい、ヒール」

「大豆は浸けておいた水と一緒に、鍋に入れ茹でます。
湯気が上がるまで強火で煮ます。
湯気が上がったら、弱火で2~3時間茹でます。
茹で上がりの目安は、指で摘んで潰れるくらいの固さになります。
大豆を茹でている間に、小麦の準備をします。
小麦をフライパンで焦がさないように乾煎りします。
平らっぽかった小麦が、プクっと膨れます。
乾煎りとは、フライパンに油をひかずにそのまま炒ることです。
乾煎りした小麦をミキサーで三つ割程度に砕きます。
フィルド様、お願いします」

「ほいほい、風魔術」

「砕いた小麦に種麹を混ぜます。
この後、茹で上げた大豆と混ぜ合わせますので、このまま保管しておきます。
種麹を混ぜるときには、小麦の温度が完全に冷めてから行うようにしてください。
熱い状態で混ぜると熱で麹菌が死んでしまいます。
フィルド様、冷まして下さい」

「そりゃ、氷魔術」

「麹作りをします。
まず大豆を茹でます。
ゆで茹で上がった大豆をアルコール消毒したトレイに移します。
このとき、なるべく大豆表面の水分を飛ばしたいので、一旦鍋のお湯を捨ててからなべを揺するようにし、大豆の表面を乾かすように。
フィルド様、乾燥をお願いします」

「てい、水魔法応用」

「蒸しあがった大豆はアルコール消毒したトレイ(麹蓋)に移します。
熱い大豆をうちわなどで扇ぎ、中心の温度が40度以下になるまで急いで冷まします。
冷ました大豆に、用意しておいた小麦と種菌を混ぜ合わせたものを降りかけ、良く混ぜ合わせます。
フィルド様、冷まして下さい」

「とりゃ、氷魔法応用」

「トレイ(麹蓋)に平らになるように大豆を広げます。
大豆が乾燥しないように、熱湯消毒をした布を、固く絞って大豆に被せたら、培養スタートです。
大豆は雑菌に犯されやすいので、室温は30度に保ち、大豆の温度も30度を超えないようにします。
フィルド様、お願いします」

「ほいほい、結界と熱魔法応用」

「種切りから18~22時間後おいておきます。
フィルド様、回復魔術を」

「それ、ヒール」

「このころになると大豆の温度が上がってきます。
大豆をかき混ぜることで、温度が上がり過ぎるのを防ぎます。
ただし、温度を下げ過ぎるのも良くありませんので作業は手早く行います。
大豆の温度は28度~30度をキープするようにします。
表面に緑色の胞子が付いて大豆がばらばらになってくれば完成です。
この頃になると手入れで大豆をかき混ぜるとき緑色の胞子が煙のように舞い上がるのがわかると思います。
出来上がった、醤油麹に混ぜる塩と水の量をここで決めます。
水の量は醤油麹:1に対して、水:1.1~1.2倍との事なので、今回は出来上がった醤油麹に対して1.1にしました。
出来た醤油麹に、塩を混ぜ合わせます。
出来上がった醤油麹を熟成させるための容器に入れます。
今回は瓶を使用しました。
瓶のなかに漬物用の袋をセットし、その中に醤油麹を入れます。
醤油麹に塩水を追加します。
満遍なく塩水が行き渡るようにかき混ぜています。
空気を抜くように蓋を塞ぎ、このまま保管します。
目安は10ヵ月です。
フィルド様、回復魔術を」

「そ~れ、ヒール」

「大き目の鍋の上にサラシを二重にして敷いてそこにもろみを空けます。
その後、サラシで包み込むようにし、醤油を絞ります。
しぼり出した醤油に熱を加えます。
そもそも醤油は微生物の活動で醸造去れるんですが生醤油はまだ微生物が生きている状態です。
熱を入れることで微生物の活動を抑えます。
80度から85度の温度で30分加熱します。
時間がないのでフィルド様、過熱を」

「てい、ヒート」

「熱処理すると凝固する部分も出てきますので、火入れした醤油は再度サラシ布などでろ過します。
この状態で1週間ほど安置しておきます。
フィルド様、回復魔術を」

「んにゃ、ヒール」

「沈殿物がビンの下に溜まり、綺麗になった上澄みが出来ます。
この上澄みをすくって醤油の完成です!」

「「「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」」」

 厨房に居た皆が完成された醤油を物珍しそうに見る。

「サラサラの黒い液体だな。どんな味がするんだ?」

「料理好きラキザ様としては気になりますよね?料理長、用意していた生野菜出して下さい」

 料理長が冷蔵庫から出した生野菜のサラダを取り出す。

「さて、醤油をドレッシングとしてかけます。どうぞ、食べてみて下さい」

 ラキザが醤油のかかった生野菜をフォークに突き刺す。
 この世界ではあまり生の野菜を食さないので多少の抵抗はあるだろう。
 だがラキザの好奇心は抵抗を上回る。

 パクッ

「うまっ!しょっぱいのにコクがある!淡白な野菜の味を引き出していて、生野菜なのに食欲が進むぞ!!」

「お料理に使っても美味しいですよ。今までに作れなかった料理もコレで作ることが出来ます」

「その言い方だとフカミちゃん、作りたい料理ありそうだね?」

「晩餐会がパンと加工肉と塩スープだけでは物足りないですからね。せっかくなので物珍しい物を数品揃えてみたいと思います」

「マジか!異世界料理が食べれんのか!?」

 お料理大好きラキザの目がキラキラと輝いている。

「あくまで一般人が作る家庭料理なので期待はし過ぎないで下さいね」

「分かった、期待せずに味見楽しみにしてるわ!!」

「……俄然期待してるじゃないですか」

「ラキザは料理だけは馬鹿になるからね。普段も脳筋だけど」

「楽しみだな!」

 フィルドの辛口コメントも気にならないくらい楽しみらしい。
 流石に深みもプレッシャーを感じる。

「味は美味しければ尚良いけど、異世界料理ってだけで目玉になるから肩の力抜いて良いよフカミちゃん。それに俺はフカミちゃんの愛情たっぷり手料理が食べれるだけで満足だよ~♫」

 フィルドが深海の頭をワシャワシャ撫でる。
 普段は子供みたいなのに、いざと言う時はこうやって大人の余裕を見せて深海の気持ちを軽くしてくれるのだから、フィルドはズルいと深海は思った。


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 醤油作り長かった…(;´Д`)
 作り方は斜め読みで結構です。
 こんなの読んでられないと言うのが書き手の感想です。
 それにしてもフィルドの魔術が万能すぎる。
 一家に1人欲しいです。
 ちなみに冷蔵庫は氷魔石で作られている魔道具です。
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