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2章

【228話】

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「大海おばちゃん、ウチの事はミヤハルて呼んでんか」

「ミヤハルちゃん?何か意味があるのね、私も本名じゃ無い方が良いかしら?」

「話が早くて助かるわ。おばちゃんはミヒロおばちゃん呼ばせて貰うわ」

「あら可愛いわねミヒロちゃん。ところでミヤハルちゃんはどうして此処に?東京に来てたの?」

「おん、ユラ姉ちゃん…甘露来斗姉ちゃんの家に来とったんよ」

「来斗ちゃん?あぁだから遥ちゃんは橋宮遥でミヤハルなのね」

「ほんま話速いわぁ。名前は知られへん方がええねんて、今のうちらの保護者から教えてもろたんよ」

「もしかして今日この病院の探索に来た集団の方?」

「おん、紹介するわ。ミヒロおばちゃんなら多分凄い重宝されて大歓迎やわ」

「あら、私みたいなおばちゃんを歓迎してくれるの?」

「鈴蘭さん、ウチらのリーダーは実力重視やからミヒロおばちゃんの薬学と東洋医学は重宝されると思うで」

「そうだと良いわね。じゃぁミヤハルちゃん、その鈴蘭さんに会わせて貰える?」

「多分もうすぐ来るわ。会話聞いとるやろから」

「耳が良いの?」

「法術とか闘気使って色々出来るんよ鈴蘭さんは」

「まぁ、法術なんて使う人が出てきたのね。こんな化け物が溢れてる日常ならそんな人が居ても不思議では無いわね。寧ろ心強いわ」

「ウチ、ミヒロおばちゃんのそいう言うクレバーなとこ好きやで」

「あら有難う。私もミヤハルちゃんのこと大好きよ」

 すっかり警戒心を解いて話が弾む2人である。
 親戚と出会えたのだ。
 嬉しくもあるだろう。
 それに鈴蘭が同じ建物内に居る。
 何かあっても助けに来てくれるだろう安心感がミヤハルにはあった。
 よほどのことが無い限り自分で対処する気ではあるが。

「ミヤハル、そろそろ中に入っても良いか?」

「おん、鈴蘭さん!ウチのおばちゃんのミヒロおばちゃんや。漢方薬学と東洋医術に長けている上に料理上手やで!正確にはユラ姉ちゃんの従姉妹のお母さんやけど。
そんでウチのもう1人の叔母に当たる深海兄ちゃんと叔父の鳴海姉ちゃんのお母さん。外見が全然年取らんからウチはおばちゃん呼んでるねん。
そんで深海兄ちゃんと鳴海姉ちゃんは8年前から居らへんねん。でも深海兄ちゃんもチートやからどっかで上手くやってると思っとるんやけどな」

「ミヒロさんか、始めまして鈴蘭です」

「まぁまぁまぁ、綺麗な方ね~」

「綺麗なだけでなくて強いで!色んなこと出来るし、リーダーとして頼りがいあり!ずっと頼るつもりはあらへんけど。自分の事は自分で何とかしたいし、鈴蘭さんたちも本来の場所に帰りたいやろし」

 夜の化身のような黒を纏った美貌の鈴蘭を「綺麗な人ね」で終わらせるミヒロは大したものだ。
 8年前に双子の娘と息子が消息を絶ってから、ミヒロは達観したのだ。
 近くに居なくても良い。
 もう会えなくても幸せでいて欲しい。
 そして自分も幸せでいる事が子供たちの幸せにつながるであろうから。
 ミヒロは幸せに生きる事にしている。

(さすが「大聖女」の母親だ。肝が据わっているな)

 鈴蘭は己の先祖の記憶を確認して、目の前の人物がどう言う人物であるか確認した。
 ミヒロの失った双子と言うのは「大聖女フカミ」と「御使いナルミ」である。
 深海の方は鈴蘭の先祖に当たる。
 この時代の8年前に姿が無くなったのなら、その時に「大聖女」として鈴蘭たちの世界に召喚されたのだろう。
 
 8年前に双子は15歳だった。
 今居れば23歳だ。

 ミヒロが医師免許を持っている事を考えれば医学部を卒業しているのでその時点で24歳だ。
 学生妊娠では無いだろう。
 1年働いて子供を産んだとしても26歳。
 そしてこの時点で双子が23歳になっているとすれば、ミヒロは49歳だ。
 だがミヒロは30代半ばくらいにしか見えない。
 おばちゃんと言うより大人のお姉さん、と言ったほうがしっくりくる。

 そして鈴蘭の記憶が確かなら同い年の夫が居る筈だ。
 その夫は西洋医学の医師だ。
 2人揃えば手術も可能になる。
 
 傷は法術だけで治せるものではない。
 傷の損傷の仕方においては法術で治したために奇形になる事もある。
 医学で傷や病気を治せるなら文句の付け所は無い。
 最高のメンバーである。

「ミヒロさん、旦那殿は?」

「今食堂で食事作ってるわ。この病院、自家発電もしてるから電気が使えるの。化け物にばれないように明かりはあんまりつけないけど、地下の食堂と厨房は電気がついてるわよ。私は漢方薬を取りに上に上がって来てたのよ」

「成程、私がリーダーをしている『神狩り』のチームメンバーも温かい食事に飢えている。ご相伴に預かる事は出来ないだろうか?」

「弱っている人を助けるのが医師の務め!勿論よ、ご飯食べて頂戴!温かい食事は元気が出るわよ!」

 こうしてミヒロと出会ったことにより、『神狩り』は暖かい食事にありつけることになったのだった。
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