上 下
199 / 253

《170話》

しおりを挟む
「美味かったか?」

「はい、美味しかった、です」

「そうか、じゃぁシンクに容器をつけさせて貰うぞ」

「あ、私、やる、です!」

「良いから座ってろ。疲れているんだろう?」

 確かに疲れていた。 
 食べるのが大好きなサラが食事もとらない程に。
 だがセブンが来て、美味しいお弁当を食べて、今のサラは決して疲れてはいない。
 疲れるとしたら動悸がする事位だろうか。

 ドキドキして食べるのに何時もより時間がかかってしまった。
 でも食事中のお喋りは楽しかったし、沈黙になって居心地が悪いと感じる事は無かった。
 だけど、何故だか胸がむず痒い。
 
「さて、随分と暗くなったが、まぁもう獣車も走っていないだろうが徒歩で帰れるだろう」

 容器を水につけたセブンが言った。

「獣車!もうない、です!歩く、危ない、です!!」

「俺は男だから問題ない」

「でも、夜は、歩く駄目、です!」

「じゃぁ泊めて貰おうか」

「え、あ、…………はい、です」

 話の流れ的にお泊りの流れになってしまった。
 因みにセブンの確信犯である。

 実はセブンはサラの家に来るのに【飛翔】の魔術を使っていた。
 さすがに【空間転移】の魔術は使えないが、【飛翔】ならお手の物だ。
 薬師ギルドからサラの家まで直線状に飛んできたのだ。
 その速さ音速。
 意外と化け物じみたところがあるセブンである。
 その内に秘術と言われる【空間転移】の魔術を覚える日も遠くないかも知れない。
 少なくとも全能神が教えれば1日で身に付くであろう。
 それくらいには全能神はセブンに気を許している。
 餌付けとは実に恐ろしいものである。

 そんな訳でセブンがサラの家にお泊りになった。
 だがこの部屋にはシングルベッド(しかも硬い)が1つ。
 予備の布団なども無い。

「シーツを1枚貸して貰えるか?俺は床で寝る」

「私が、床で寝る、です!お客様、を、床で寝させられない、です!」

「だが年頃の女を床で寝かす訳にはいかんからな。男としての沽券にかかる」

「え、と、じゃぁ、どうすれば…………?」

「一緒に寝れば良いだろう?」

「はへ!?」

「お前なら腕にすっぽり入るし、そう寝づらい事も無いだろうしな」

「わわわあわわたあしおふろはいってなぃぃですぅっ!!!」

「心配するな、俺も入ってない。俺は臭いか?」

「臭く、無い、で、す………」

「なら問題ないな」

「ない、です、か…………?」

「無い。じゃぁ寝るぞ」

「…………はぃ」

 こうしてサラはセブンに抱きしめれられながら、眠れない夜を過ごすことになったのであった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

“その後”や“番外編”の話置き場

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:4,325pt お気に入り:686

元イケメン現非モテの彼と、元オタクの私。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:84

竜の国の人間様

BL / 連載中 24h.ポイント:1,867pt お気に入り:2,292

黎明の守護騎士

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:411pt お気に入り:4,732

君じゃない?!~繰り返し断罪される私はもう貴族位を捨てるから~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:11,212pt お気に入り:1,842

異世界に来たら俺のケツの需要が高すぎるんですが

BL / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:80

処理中です...