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《171話》
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(う~ドキドキするです~~~~~っ)
現在サラはシングルベッドでセブンに後ろから抱きしめられて寝ている。
とてもじゃないが顔が見れないので背中を向けたら、寝惚けているのか、抱き枕の様に後ろから抱きしめられた。
視覚が働かない分、他の感覚が鋭くなる。
セブンの体温。
セブンの腕の硬さ。
セブンの心臓の音。
トクトクトク
一定のリズムで刻まれる鼓動。
生きている証。
その音を聞いているとサラの瞼が下がっていく。
サラの心臓の鼓動も激しさを収めて、セブンの鼓動に合わせるようにトクトクとリズムを刻む。
他人の心臓の音がこんなに安心するものだとはサラは知らなかった。
物心ついた時にはスラムで生活していた。
子供ばかりのグループで、大人に頼る事なく生きて来た。
スラムでは子供も大人も関係ない。
食事を入手するのに子供だから何て甘えさせてはくれない。
誰もが腹を空かせているのだ。
だから子供は子供で固まって生きていた。
寒い日は皆で身体を寄せ合っていた。
指先も足の先も凍えて冷たくなって、体を寄せ合ってもほどんど暖は取れなかった。
心臓の音を聞く余裕すら無かった。
母のような存在が居れば、サラだって他者の心臓の音を聞く機会があったかも知れない。
だがサラはスラムに居たからそんな事は無かったのだ。
寧ろ大人は子供の敵だったから。
大人に抱きしめて貰おうなんて想像も付かなかった。
スラムの子供は奴隷商に良く売られるのだ。
見目も良いものは率先して売られる。
見目が今一でも女なら間違いなく売れる。
性行為を行う事に問題は無いから。
見目が良かったら男でも性奴隷として売られる。
見目が悪い男の子は肉体労働の要因として売られる。
稀に虐待用や実験用に売られる子供もいた。
そして大人は子供を売って得た金でその日の食事を手に入れるのだ。
サラは性奴隷として売られる予定だった。
小児性愛者の貴族に売られるはずだった。
だが途中で出会った神官がサラの胎内に加護が宿っていることに気付いた。
サラは『聖女』になった。
腹を空かせることは無くなった。
ジャガイモと塩スープでサラは毎日腹を満たすことが出来た。
御祈りや祈祷を覚えたり行ったりするのは苦手だっけど、お腹いっぱい食べれるから不幸ではなくなった。
苗字も与えられた。
サラは浮浪児からサラ・ジュソウと言う聖女になったのだ。
不幸ではなくなったけど、幸せでは無かった。
狭い部屋で薄いシーツを纏って眠る。
スラムでは皆で固まって寝ていたから人肌が恋しかった。
そして10年の年月が流れた。
サラは聖女でなくなったけど、代わりに幸せを手に入れた。
大切な人が出来た。
美味しいものが食べれるようになった。
仕事で人を助けられることが嬉しかった。
サラは幸せだった。
それをくれたのはセブンだった。
そしてサラに色んな幸せをくれたセブンが、今自分を抱きしめて寝ている。
セブンの温もりと香りに包まれていると酷く安心する。
セブンからは消毒液などの香りがする。
診療所の香りはセブンの香りとよく似ている。
この人は生粋の医者であるのだと意識させられる。
自分より大きな体で抱き締められると、すっぽりとサラの身体が収まる。
親鳥に羽で包まれる雛鳥はこんな気分だろうか?
子供だけで身を寄せ合っていたあの頃とは何もかも違う。
(安心するです………)
やがてサラはスヤスヤと眠りについた。
それをずっと寝たふりで観察していたセブンは、サラが熟睡したことを確認すると、その旋毛に唇を落とした。
「パーソナルスペース的には問題は無さそうだな。はやく心も大人になれよサラ、それまでは待っていてやるから。ただ何でサラの家に男物のパジャマがあるんだ?」
少しばかりムカリと来たセブンである。
男を止める予定があったと言うのか?
どう考えてもこれは男物のパジャマだ。
ナナにプレゼントされて仕方なしに置いていると言う言葉を聞いて、とりあえずは納得したが。
「俺以外の男が泊まることが無いように、とっととウチの家に連れて帰らんとな」
しかしセブンより先にサラの家に泊まった事がある男がいるとは、この時はまだ知らないセブンであった。
現在サラはシングルベッドでセブンに後ろから抱きしめられて寝ている。
とてもじゃないが顔が見れないので背中を向けたら、寝惚けているのか、抱き枕の様に後ろから抱きしめられた。
視覚が働かない分、他の感覚が鋭くなる。
セブンの体温。
セブンの腕の硬さ。
セブンの心臓の音。
トクトクトク
一定のリズムで刻まれる鼓動。
生きている証。
その音を聞いているとサラの瞼が下がっていく。
サラの心臓の鼓動も激しさを収めて、セブンの鼓動に合わせるようにトクトクとリズムを刻む。
他人の心臓の音がこんなに安心するものだとはサラは知らなかった。
物心ついた時にはスラムで生活していた。
子供ばかりのグループで、大人に頼る事なく生きて来た。
スラムでは子供も大人も関係ない。
食事を入手するのに子供だから何て甘えさせてはくれない。
誰もが腹を空かせているのだ。
だから子供は子供で固まって生きていた。
寒い日は皆で身体を寄せ合っていた。
指先も足の先も凍えて冷たくなって、体を寄せ合ってもほどんど暖は取れなかった。
心臓の音を聞く余裕すら無かった。
母のような存在が居れば、サラだって他者の心臓の音を聞く機会があったかも知れない。
だがサラはスラムに居たからそんな事は無かったのだ。
寧ろ大人は子供の敵だったから。
大人に抱きしめて貰おうなんて想像も付かなかった。
スラムの子供は奴隷商に良く売られるのだ。
見目も良いものは率先して売られる。
見目が今一でも女なら間違いなく売れる。
性行為を行う事に問題は無いから。
見目が良かったら男でも性奴隷として売られる。
見目が悪い男の子は肉体労働の要因として売られる。
稀に虐待用や実験用に売られる子供もいた。
そして大人は子供を売って得た金でその日の食事を手に入れるのだ。
サラは性奴隷として売られる予定だった。
小児性愛者の貴族に売られるはずだった。
だが途中で出会った神官がサラの胎内に加護が宿っていることに気付いた。
サラは『聖女』になった。
腹を空かせることは無くなった。
ジャガイモと塩スープでサラは毎日腹を満たすことが出来た。
御祈りや祈祷を覚えたり行ったりするのは苦手だっけど、お腹いっぱい食べれるから不幸ではなくなった。
苗字も与えられた。
サラは浮浪児からサラ・ジュソウと言う聖女になったのだ。
不幸ではなくなったけど、幸せでは無かった。
狭い部屋で薄いシーツを纏って眠る。
スラムでは皆で固まって寝ていたから人肌が恋しかった。
そして10年の年月が流れた。
サラは聖女でなくなったけど、代わりに幸せを手に入れた。
大切な人が出来た。
美味しいものが食べれるようになった。
仕事で人を助けられることが嬉しかった。
サラは幸せだった。
それをくれたのはセブンだった。
そしてサラに色んな幸せをくれたセブンが、今自分を抱きしめて寝ている。
セブンの温もりと香りに包まれていると酷く安心する。
セブンからは消毒液などの香りがする。
診療所の香りはセブンの香りとよく似ている。
この人は生粋の医者であるのだと意識させられる。
自分より大きな体で抱き締められると、すっぽりとサラの身体が収まる。
親鳥に羽で包まれる雛鳥はこんな気分だろうか?
子供だけで身を寄せ合っていたあの頃とは何もかも違う。
(安心するです………)
やがてサラはスヤスヤと眠りについた。
それをずっと寝たふりで観察していたセブンは、サラが熟睡したことを確認すると、その旋毛に唇を落とした。
「パーソナルスペース的には問題は無さそうだな。はやく心も大人になれよサラ、それまでは待っていてやるから。ただ何でサラの家に男物のパジャマがあるんだ?」
少しばかりムカリと来たセブンである。
男を止める予定があったと言うのか?
どう考えてもこれは男物のパジャマだ。
ナナにプレゼントされて仕方なしに置いていると言う言葉を聞いて、とりあえずは納得したが。
「俺以外の男が泊まることが無いように、とっととウチの家に連れて帰らんとな」
しかしセブンより先にサラの家に泊まった事がある男がいるとは、この時はまだ知らないセブンであった。
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