1,252 / 1,325
第十章 されど幸せな日々
43 本職は料理人 成人
しおりを挟む
牛乳は、本当にお腹が膨れるものらしい。そして、広末が作るミックスジュースとお風呂屋さんのフルーツ牛乳は、味とか似ていても中身が全然違うんだ、って分かった。俺は、広末の作ってくれるミックスジュースを飲んだ後でも、いつもご飯はちゃんと食べられる。いつでも飲んでいいよ、って言ってもらっている。だから、ご飯の前にジュースをちょっと飲んでも、ご飯は食べられると思っていた。
「うう」
具だくさんの味噌汁とご飯を半分食べたところで、もうお腹が膨れてきて悔しい。壱臣の得意のだし巻き玉子よりほんの少し甘い玉子焼きも、肉とじゃがいもと葱の煮物もすごく美味しいのに。おかずはまだ、半分も食べられていない。
広末の作ってくれるミックスジュースを飲んだ後にご飯を食べても、こんなにすぐお腹が膨れたりしないのに。
「無理するなよ」
隣に座る緋色が、俺の手から箸を取った。俺の箸が、しばらく何も掴んでいないことを気付かれてしまったみたいだ。代わりに、いい感じに冷めてきたお茶を手の前に置く。
周りを見ると、皆はまだもりもりと食べている。
「ご、ごめん。お腹いっぱい。ごちそうさまでした」
申し訳なくてうつむいちゃった。本当に本当にごめん。千代は、俺の分をちゃんと少なめにしてくれていた。それでも食べ切れなかった。お盆に乗ったご飯とおかずを見た時は、これならいけるな、って思ったのにな。
「ちょうどええ分食べてもろたら、それでええんですよ」
千代の優しい声に顔を上げると、一緒にご飯を食べている千代が、にこにこ笑っている。
「牛乳でお腹が膨れるんや、という新しい発見がありました。料理する時の良い参考になります。ありがとうございます」
「そう?」
「そうです。うちの周りは大飯食いばっかりやったから、そういう配慮が足りませんでしたね。こちらこそ、申し訳ありません」
「んーん」
お風呂屋さんで飲むフルーツ牛乳やコーヒー牛乳がすごく美味しい、って教えてもらって嬉しかった。そして、すごく美味しかった。また行っても、絶対飲む。ご飯の前に飲むとご飯があんまり食べられなくなることは分かったけれど、でも飲むと思う。
「千代のご飯、美味しい」
「お口に合うて何よりです」
千代はお料理が大好きだから、ついこの間まで住んでいたお屋敷では料理を全部やっていたんだって。ここでも、少しずつ任せてもろてます、って言った。
そして、この城の料理人は、なるべく早く西中国の城に行けるように準備してもろとります、って。それは、良かった。あちらの城は、広くて人もたくさんだから、信頼できる料理人が来てくれると助かると思う。
「本職は料理人なんですよ。領主の奥様なんて柄やないんですけど、殿や玉鶴さまに頭を下げられたらしゃあない。副業で頑張ります」
お仕事二つ……? あ、水瀬たちみたいな? 大変だ。ちゃんとお休み取ってね。
千代は、厨房の者に聞いとりますよって、他の人と少しだけ量の違う俺の分を緋色の隣に置いてくれた。
「緋色殿下はこちら」
って言っていたから、緋色の分も何か皆と違うところがあるのかもしれない。玉子焼きとか煮物が、俺のより甘くないのかもしれない。広末と同じで、一人ずつのことを考えて作ってある? 流石、料理人だ。
「夜は、もっといっぱい食べるね」
緋色。俺、もう少し千代のご飯を食べたいから、戻るの明日にしよう。
「うう」
具だくさんの味噌汁とご飯を半分食べたところで、もうお腹が膨れてきて悔しい。壱臣の得意のだし巻き玉子よりほんの少し甘い玉子焼きも、肉とじゃがいもと葱の煮物もすごく美味しいのに。おかずはまだ、半分も食べられていない。
広末の作ってくれるミックスジュースを飲んだ後にご飯を食べても、こんなにすぐお腹が膨れたりしないのに。
「無理するなよ」
隣に座る緋色が、俺の手から箸を取った。俺の箸が、しばらく何も掴んでいないことを気付かれてしまったみたいだ。代わりに、いい感じに冷めてきたお茶を手の前に置く。
周りを見ると、皆はまだもりもりと食べている。
「ご、ごめん。お腹いっぱい。ごちそうさまでした」
申し訳なくてうつむいちゃった。本当に本当にごめん。千代は、俺の分をちゃんと少なめにしてくれていた。それでも食べ切れなかった。お盆に乗ったご飯とおかずを見た時は、これならいけるな、って思ったのにな。
「ちょうどええ分食べてもろたら、それでええんですよ」
千代の優しい声に顔を上げると、一緒にご飯を食べている千代が、にこにこ笑っている。
「牛乳でお腹が膨れるんや、という新しい発見がありました。料理する時の良い参考になります。ありがとうございます」
「そう?」
「そうです。うちの周りは大飯食いばっかりやったから、そういう配慮が足りませんでしたね。こちらこそ、申し訳ありません」
「んーん」
お風呂屋さんで飲むフルーツ牛乳やコーヒー牛乳がすごく美味しい、って教えてもらって嬉しかった。そして、すごく美味しかった。また行っても、絶対飲む。ご飯の前に飲むとご飯があんまり食べられなくなることは分かったけれど、でも飲むと思う。
「千代のご飯、美味しい」
「お口に合うて何よりです」
千代はお料理が大好きだから、ついこの間まで住んでいたお屋敷では料理を全部やっていたんだって。ここでも、少しずつ任せてもろてます、って言った。
そして、この城の料理人は、なるべく早く西中国の城に行けるように準備してもろとります、って。それは、良かった。あちらの城は、広くて人もたくさんだから、信頼できる料理人が来てくれると助かると思う。
「本職は料理人なんですよ。領主の奥様なんて柄やないんですけど、殿や玉鶴さまに頭を下げられたらしゃあない。副業で頑張ります」
お仕事二つ……? あ、水瀬たちみたいな? 大変だ。ちゃんとお休み取ってね。
千代は、厨房の者に聞いとりますよって、他の人と少しだけ量の違う俺の分を緋色の隣に置いてくれた。
「緋色殿下はこちら」
って言っていたから、緋色の分も何か皆と違うところがあるのかもしれない。玉子焼きとか煮物が、俺のより甘くないのかもしれない。広末と同じで、一人ずつのことを考えて作ってある? 流石、料理人だ。
「夜は、もっといっぱい食べるね」
緋色。俺、もう少し千代のご飯を食べたいから、戻るの明日にしよう。
1,882
あなたにおすすめの小説
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。
【完結】好きな人の待ち受け画像は僕ではありませんでした
鳥居之イチ
BL
————————————————————
受:久遠 酵汰《くおん こうた》
攻:金城 桜花《かねしろ おうか》
————————————————————
あることがきっかけで好きな人である金城の待ち受け画像を見てしまった久遠。
その待ち受け画像は久遠ではなく、クラスの別の男子でした。
上北学園高等学校では、今SNSを中心に広がっているお呪いがある。
それは消しゴムに好きな人の前を書いて、使い切ると両想いになれるというお呪いの現代版。
お呪いのルールはたったの二つ。
■待ち受けを好きな人の写真にして3ヶ月間好きな人にそのことをバレてはいけないこと。
■待ち受けにする写真は自分しか持っていない写真であること。
つまりそれは、金城は久遠ではなく、そのクラスの別の男子のことが好きであることを意味していた。
久遠は落ち込むも、金城のためにできることを考えた結果、
金城が金城の待ち受けと付き合えるように、協力を持ちかけることになるが…
————————————————————
この作品は他サイトでも投稿しております。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
公爵家の五男坊はあきらめない
三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。
生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。
冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。
負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。
「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」
都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。
知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。
生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。
あきらめたら待つのは死のみ。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる