【本編完結】人形と皇子

かずえ

文字の大きさ
1,044 / 1,325
第九章 礼儀を知る人知らない人

1 大変  西賀国領主

しおりを挟む
「殿!殿!大変です!」
「なんや。熊か、猿か、猪か?」

 この西賀国さいかこくで大変なこと、と言えば獣被害か天候不順くらいのもの。天候が乱れとらんことは見たら分かる。なら、獣被害一択やろ。そこまで騒ぐほどのことやない。あ、いや。もしかして、なんぞ農作物の新しい病気でも出たか?いなごがようけ出たか?それなら、大問題やけど。

「ちゃいます!熊でも猿でも猪でもありません。お客さんです。皇国からの御使者やと仰る方が訪ねてこられました!」
「は?」

 なんて?

「やから、皇国からの御使者です。若様にふみを届けに来られたとかで」
「なんで?」
「なんで、て知りませんがな、そんなこと」

 あ、うん、そやな。知っとったら慌てとらんわ。

つるは今どうしとる?」

 つるは、西宗国さいそうこくの次期領主様の結婚式へ松吉まつきちと二人、名代みょうだいとして出かけて機嫌良う帰ってきた。別に、積極的に外交して来いとも言うとらんしその必要もないから、まあ楽しかったんなら良かったなと、そんな詳しい話は聞いとらん。帰った日とその次の日は休みにしたったしな。孫の亀吉かめきちも、三日も親と離れたんは初めてやったからよう甘えとったようやし。やっぱ親には敵わんなあ、じじとばばは。親がおらん間はめちゃくちゃ甘えてくれて、嬉しかったんやけどなあ。
 ほんで、つるは今日は仕事しとるみたいやけど、どこで何しとるとかそんな気にするもんやない。

「山の方、見回り行ってはります」
「ま、部屋におらんしそやろな」
「どうします?」
「どうします、ちゃうやろ。はよ、つる、呼んでこい。ほんで御使者の方をここにお通しして、丁重におもてなしや」

 あいつ、九鬼はどや、て聞いたら、九鬼の若様、話しやすいし、ええお人やったでとか言うてたから、九鬼の若様と気い合うんか、ほな良かったなとか思てたんやけど。それ聞いとっても、九鬼から御使者が来たら驚くやろけど、ひと足飛びで皇国の御使者?……あんだけ楽しそうに帰ってきたから、悪い話やないやろけど。

「そや。松吉まつきちはおるやろ。松吉まつきち呼んでこい」
「殿。若奥様も山です」
「あいつらはほんま、じっとしとらん」

 御使者はどんな風にもてなしたらええんや?一応、こっちが上座でええんか?
 皇国とのやり取りは九鬼の殿様がするから、うちらは九鬼の殿様方とさえ上手くやればええとしか先代から教えてもうとらん。その九鬼の殿様も、近年はごたごたしとったから大して行事ごともなく関わり合っとらんかった。ここんとこは、領地を安堵して税をしっかり納めることさえできとったらそれで良かったから、ますます外交からも遠ざかって、他国とのやり取りの礼儀があやふやや。
 うん。どうしたらええんか分からん。
 つる、はよ帰ってきてくれ。
しおりを挟む
感想 2,498

あなたにおすすめの小説

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。

【完結】好きな人の待ち受け画像は僕ではありませんでした

鳥居之イチ
BL
———————————————————— 受:久遠 酵汰《くおん こうた》 攻:金城 桜花《かねしろ おうか》 ———————————————————— あることがきっかけで好きな人である金城の待ち受け画像を見てしまった久遠。 その待ち受け画像は久遠ではなく、クラスの別の男子でした。 上北学園高等学校では、今SNSを中心に広がっているお呪いがある。 それは消しゴムに好きな人の前を書いて、使い切ると両想いになれるというお呪いの現代版。 お呪いのルールはたったの二つ。  ■待ち受けを好きな人の写真にして3ヶ月間好きな人にそのことをバレてはいけないこと。  ■待ち受けにする写真は自分しか持っていない写真であること。 つまりそれは、金城は久遠ではなく、そのクラスの別の男子のことが好きであることを意味していた。 久遠は落ち込むも、金城のためにできることを考えた結果、 金城が金城の待ち受けと付き合えるように、協力を持ちかけることになるが… ———————————————————— この作品は他サイトでも投稿しております。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

処理中です...