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第八章 郷に入っては郷に従え
73 仲良しだよ 成人
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「緋色。これ、何か入ってる。玉子焼きの中」
「ん?どれ?」
緋色は、俺がお箸で持ち上げた玉子焼きを、ひと口でぱくりと食べた。
「あー!」
「おお。旨い!」
「お、お、俺の玉子焼き……」
見せただけなのに。
見せただけなのにー。
「俺のとこにもあるだろ。そう怒るな」
緋色は、自分のお膳に乗っている玉子焼きを半分に切って、俺の口のところに持ってきてくれた。
もー。
「美味し……」
真ん中の茶色いの、ちょっとぱりぱりと硬いとこもあるけど、どちらかというとふわふわ。玉子焼きはいつも通りふわふわで、真ん中の茶色いののちょっとぱりってするところがふわふわのとこと合うし、玉子焼きの優しい味と、真ん中の茶色いのの甘辛い味が丁度よく合っててすごくいい!
「これなに?この真ん中の」
「何だろうな。ま、旨いものが入ってるんだろ」
「うまいもの」
「旨いものって名前じゃない」
「ええ。じゃあ何?」
「うなぎが入っとります」
隣の壱鷹が、ちょっと笑いながら言った。
「うなぎ」
「へええ、うなぎか」
緋色は、半分に切った玉子焼きの残りを持ち上げて、まじまじと見ている。
「俺の。俺のだよ、俺の」
食べちゃ駄目。その半分は俺の。
「ああ。はいはい」
「くっ、ふっ。ふふふっ」
壱鷹が、すごく笑っている。
「気に入って頂けて何よりです。うなぎを蒲焼きにしたものを巻くので、う巻き言います」
「う巻き」
う巻き、う巻き、と何回か口の中で言いながら、う巻きを食べた。
よし、覚えた!
「そんな真剣に覚えなくても、広末も厨房で食ってるだろ。美味しかったって言えば、すぐ作ってくれるさ」
あ、そうか。
そうだった。今日は安心だ。
「ほんまに、仲がおよろしいことで」
ん?
「広末と?」
「は?いや、ええ。そうですね。皆さま、仲がよろしいですね」
壱鷹は、びっくりするくらいにこにこし始めた。
あ。水瀬が、何も乗っていないお膳を一つ持って歩いてくる。このお城の使用人の着物着てるから、お手伝いかな。忙しそうだもんね。
「失礼致します。成人さま、こちらを」
持ってきたお膳を、俺のお膳の下に重ねてくれた。
おお。高くなって食べやすくなった。
「ありがと」
水瀬は頭を下げてから、そっと人差し指を立てて口の前に当てた。
うんうん。お手伝い、頑張ってね。
「これは気が回りませず、申し訳ない」
「ん?いいよ?」
俺がそのままでいいって言ったんだし、壱鷹は気にしなくていい。
「よう気の利く女中が……」
言いかけて、壱鷹は、はっと口を閉じた。
俺は、水瀬みたいに口の前に人差し指を当てる。なんかこれ、ちょっと格好良い。
「ほんまに、仲がおよろしいことで……」
壱鷹は、小さな声で呟いた。
うん。うちは、皆仲良し。
「ん?どれ?」
緋色は、俺がお箸で持ち上げた玉子焼きを、ひと口でぱくりと食べた。
「あー!」
「おお。旨い!」
「お、お、俺の玉子焼き……」
見せただけなのに。
見せただけなのにー。
「俺のとこにもあるだろ。そう怒るな」
緋色は、自分のお膳に乗っている玉子焼きを半分に切って、俺の口のところに持ってきてくれた。
もー。
「美味し……」
真ん中の茶色いの、ちょっとぱりぱりと硬いとこもあるけど、どちらかというとふわふわ。玉子焼きはいつも通りふわふわで、真ん中の茶色いののちょっとぱりってするところがふわふわのとこと合うし、玉子焼きの優しい味と、真ん中の茶色いのの甘辛い味が丁度よく合っててすごくいい!
「これなに?この真ん中の」
「何だろうな。ま、旨いものが入ってるんだろ」
「うまいもの」
「旨いものって名前じゃない」
「ええ。じゃあ何?」
「うなぎが入っとります」
隣の壱鷹が、ちょっと笑いながら言った。
「うなぎ」
「へええ、うなぎか」
緋色は、半分に切った玉子焼きの残りを持ち上げて、まじまじと見ている。
「俺の。俺のだよ、俺の」
食べちゃ駄目。その半分は俺の。
「ああ。はいはい」
「くっ、ふっ。ふふふっ」
壱鷹が、すごく笑っている。
「気に入って頂けて何よりです。うなぎを蒲焼きにしたものを巻くので、う巻き言います」
「う巻き」
う巻き、う巻き、と何回か口の中で言いながら、う巻きを食べた。
よし、覚えた!
「そんな真剣に覚えなくても、広末も厨房で食ってるだろ。美味しかったって言えば、すぐ作ってくれるさ」
あ、そうか。
そうだった。今日は安心だ。
「ほんまに、仲がおよろしいことで」
ん?
「広末と?」
「は?いや、ええ。そうですね。皆さま、仲がよろしいですね」
壱鷹は、びっくりするくらいにこにこし始めた。
あ。水瀬が、何も乗っていないお膳を一つ持って歩いてくる。このお城の使用人の着物着てるから、お手伝いかな。忙しそうだもんね。
「失礼致します。成人さま、こちらを」
持ってきたお膳を、俺のお膳の下に重ねてくれた。
おお。高くなって食べやすくなった。
「ありがと」
水瀬は頭を下げてから、そっと人差し指を立てて口の前に当てた。
うんうん。お手伝い、頑張ってね。
「これは気が回りませず、申し訳ない」
「ん?いいよ?」
俺がそのままでいいって言ったんだし、壱鷹は気にしなくていい。
「よう気の利く女中が……」
言いかけて、壱鷹は、はっと口を閉じた。
俺は、水瀬みたいに口の前に人差し指を当てる。なんかこれ、ちょっと格好良い。
「ほんまに、仲がおよろしいことで……」
壱鷹は、小さな声で呟いた。
うん。うちは、皆仲良し。
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