人形と皇子

かずえ

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第八章 郷に入っては郷に従え

55 ほどほどに  成人

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 それから、お出迎えの人たちを立たせて、俺たちはもう一度車に乗った。門からお城の入口まで、結構距離がある。
 
「うーん」
「どうした?」
「お城の入口でご挨拶では駄目だった?」
「ああ」

 車に乗ってから聞いてみたら、緋色ひいろが教えてくれた。

「西国の領主が膝を折る姿を、城の内外の人間に見せる必要があった。だから、あの場所でないと駄目だった」

 そうなのか。
 
「この辺りで一番偉い人より俺とお前の方が偉いと、みんなに見せなきゃいけなかったのさ」
「ふーん」

 。お城の中の人だけでなく外の人にも。が知っていないといけないことだから。

「分かった」
「おう」

 頷いていたら抱え込まれて、ぽんぽんと頭を撫でられた。
 
「ん?」
「格好良かったぞ」
「俺?」
「ああ」

 格好良かったのは、緋色ひいろだけど。真似したら、俺も格好良くなったか!俺、明日も頑張るね。

「ま、ほどほどにな」

 ふへへ、と喜んで明日も頑張ろうと思ってたら、ほどほどにって言われた。何でだ?
 力丸りきまる常陸丸ひたちまるも、疲れたらすぐに言えって言った。疲れないよ?たくさん動くわけじゃないんだから。

「ん?今日は俺たちのおうちにはいかないの?」

 車で移動したお城の入口から、中も結構歩いて案内された場所は、普通の畳のお部屋だった。ごゆっくりお寛ぎくださいませ、と着物の侍女さんが座って、頭を床につきそうなくらい下げて出ていく。
 くつろぐけどさ。でも、落ち着かない。

「今回は、全日、城泊まりだ」
「へええ」

 また、いつもと違うところをみつけた。
 一緒に来た他の人は、隣の部屋とかに案内されているらしい。
 
「失礼致します」

 すぐに、お茶を持った着物の侍女さんが入ってきて、座卓の上にお茶を二つ置いていった。

「二つ?」
「護衛は仕事中」
「あ、そう」

 緋色ひいろ常陸丸ひたちまる力丸りきまると俺の四人でお部屋にいると、もうお仕事終わりの気分になっちゃう。

「ま、適当に交代しろ。一ノ瀬たちも、やる事ないと退屈するだろ」
「とっくに遊びに行ったんじゃないっすか」
「特に荘重むらしげさま、この城好きだからなあ」

 そうなの?

「どうやって落とそうかの算段を始めるから、適当に仕事を渡しとけ」
「ん?」

 ぎゃははは、と力丸りきまるがお仕事中じゃない声で笑った。

「交代したら、俺も才蔵さいぞうんとこに挨拶に行ってこようかなあ」
「千客万来で忙しいだろう。ほどほどにな」
「分かってます。ほどほどに」

 ほどほど。さっき俺にも、ほどほどにって言ったね。ほどほどってどんな感じ?どの辺かな?

「城の修繕費ってのは、かなりな額らしいからな。流石に全壊は払えんぞ」

 あ。半壊くらいが、ほどほど?

「殿下?ちょっとも壊しちゃ駄目っすよ?」

 常陸丸ひたちまるが慌ててる。
 あれ?ほどほどってどこだ?

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