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第八章 郷に入っては郷に従え
29 間違えてはいけない 成人
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「分かった!すごく分かった」
「そうか」
「うん。ちゃんと勉強してる人に、誰かに聞いただけの事を言うのは、えーっと。うーん」
なんだろ。馬鹿馬鹿しい?違うな。うーん。あ。
「恥ずかしい?」
「そうだな」
「おかしい?」
「それもあるな」
すっきりしたので、安次嶺の方を向く。目が合わないね。ま、いいけど。
「緋色はね。すごくすごく勉強して、お仕事をしてる。たくさん考えて、皆が幸せに暮らせるように、父さまと朱実殿下のお手伝いをしてる。勉強してない安次嶺が、何か言うのはおかしい」
「あ、あ……は。申し訳、申し訳ございません……」
やっと分かった?
あ。頭を下げて謝るのは、俺にじゃなくて緋色にだよ。安次嶺は、緋色に失礼過ぎる!
「俺じゃない、緋色に謝って。それから、何か意見する時は、ちゃんと勉強してから言わないと駄目です」
俺、今色々勉強してる。新しいことを知るのって楽しい。緋色ともたくさん話せるようになるし、皆が知っているお話とか歌を聞いて、一緒に笑えるのが嬉しい。勉強、大事。たくさん勉強したら、できる仕事も増えてくる。
「ああ。それはいいな」
緋色が言った。
「やはり、俺に向かってあれだけの意見をしたからには、それなりの代替案を出してもらわねば納得はいかぬ。代替案を出せるよう、資料を渡そう。牢で存分に調べて、国の運営についての案を練り上げてくれ」
「わ、わたし、は、料理人で……」
安次嶺が震えながら、ぼそぼそと言う。
「先程も告げたが、ここはクビだ。通達を出すことも変えぬ。牢を出た後も、なかなか料理人の職を得るのは難しいと思うぞ」
「そ、そんな……。私には、料理しかできません。それに。そ、そうだ、それに、人手不足の厨房から私と公里益雄殿が抜けたら、どうされるおつもりか。本日の夕食からもう、手が回りますまい」
「そうなのか?」
緋色は、青白い顔の八代の方を向いて聞いた。
「……いえ。問題ありません」
「それは、これからも減らしたまま運営できる、ということか?」
「いえ。本日は何とかする、という意味でございます。できれば、補充は早急にして頂きたく存じます」
「分かった。早々に書類を出せ。急ぎの案件だと、兄上に伝えよう。更に減る可能性が高いからな。見習いとして余分に補充し、教育せよ。此度の味くらべで味の分からなかった者が特定でき次第、そやつらもクビにしろ」
「ひっ」
小さく息を呑む音が聞こえた。どこから聞こえたか分かったけれど、俺は何も言わなかった。他の人も、黙ったままだった。
「全ては、緋色殿下の御心のままに」
八代が立ち上がり包拳礼をして、深く頭を下げる。他の人も、一斉に立ち上がってそれに倣った。今から牢にお泊まりする公里も、安次嶺も。
「俺の御心のままに?そんなもの、どうでもいいさ。お前たちは、俺の食事を作っているわけじゃない。間違えるな!皇帝陛下、皇妃殿下、皇太子殿下と皇太子妃殿下、皇孫殿下の御心のままに、だろう?」
「は、ははっ」
「それを忘れたから、うちの食事が食べたいなどと、母上が仰ったのではないのか?」
「はっ。仰る通りにございます。誠に、面目次第もございません」
「父上も、うちの結婚式の際に出た甘酢の肉団子を気に入っていたことを知っているか?」
「い、いえ。不勉強にて、申し訳なく……」
「そういうことだ」
「ははっ」
「帰るぞ、成人」
もう終わり、と緋色が立ち上がった。うん、という間に抱っこされてしまう。ちょっと疲れたから、これでいっか。
あ、そうだ。一つ終わっていない。
「安次嶺、緋色にちゃんと謝ってない」
びくっ、と安次嶺の肩が揺れた。
「そうだったか」
「そう」
「どうでもいいけどな」
「だめ」
こういうのは、ちゃんとしないと駄目って緋椀が言ってた。子どもの見可がね、してはいけないことをうっかりした時に、またかって見逃しちゃ駄目なんだって。たくさんの失敗があっても、一つずつ対処しないと駄目だって言ってたよ。そうでないと、それがしてはいけないことだって分からないまま、大人になってしまうかもしれないから、って。
「謝罪を」
「こ、此の度は、誠に、申し訳ございませんでした……」
安次嶺が膝をついて、深く深く頭を下げた。
よし。
「緋色を大事にしない人は、許せない。でも、謝ったから今日は終わりにする」
「そうか」
「うん。ちゃんと勉強してる人に、誰かに聞いただけの事を言うのは、えーっと。うーん」
なんだろ。馬鹿馬鹿しい?違うな。うーん。あ。
「恥ずかしい?」
「そうだな」
「おかしい?」
「それもあるな」
すっきりしたので、安次嶺の方を向く。目が合わないね。ま、いいけど。
「緋色はね。すごくすごく勉強して、お仕事をしてる。たくさん考えて、皆が幸せに暮らせるように、父さまと朱実殿下のお手伝いをしてる。勉強してない安次嶺が、何か言うのはおかしい」
「あ、あ……は。申し訳、申し訳ございません……」
やっと分かった?
あ。頭を下げて謝るのは、俺にじゃなくて緋色にだよ。安次嶺は、緋色に失礼過ぎる!
「俺じゃない、緋色に謝って。それから、何か意見する時は、ちゃんと勉強してから言わないと駄目です」
俺、今色々勉強してる。新しいことを知るのって楽しい。緋色ともたくさん話せるようになるし、皆が知っているお話とか歌を聞いて、一緒に笑えるのが嬉しい。勉強、大事。たくさん勉強したら、できる仕事も増えてくる。
「ああ。それはいいな」
緋色が言った。
「やはり、俺に向かってあれだけの意見をしたからには、それなりの代替案を出してもらわねば納得はいかぬ。代替案を出せるよう、資料を渡そう。牢で存分に調べて、国の運営についての案を練り上げてくれ」
「わ、わたし、は、料理人で……」
安次嶺が震えながら、ぼそぼそと言う。
「先程も告げたが、ここはクビだ。通達を出すことも変えぬ。牢を出た後も、なかなか料理人の職を得るのは難しいと思うぞ」
「そ、そんな……。私には、料理しかできません。それに。そ、そうだ、それに、人手不足の厨房から私と公里益雄殿が抜けたら、どうされるおつもりか。本日の夕食からもう、手が回りますまい」
「そうなのか?」
緋色は、青白い顔の八代の方を向いて聞いた。
「……いえ。問題ありません」
「それは、これからも減らしたまま運営できる、ということか?」
「いえ。本日は何とかする、という意味でございます。できれば、補充は早急にして頂きたく存じます」
「分かった。早々に書類を出せ。急ぎの案件だと、兄上に伝えよう。更に減る可能性が高いからな。見習いとして余分に補充し、教育せよ。此度の味くらべで味の分からなかった者が特定でき次第、そやつらもクビにしろ」
「ひっ」
小さく息を呑む音が聞こえた。どこから聞こえたか分かったけれど、俺は何も言わなかった。他の人も、黙ったままだった。
「全ては、緋色殿下の御心のままに」
八代が立ち上がり包拳礼をして、深く頭を下げる。他の人も、一斉に立ち上がってそれに倣った。今から牢にお泊まりする公里も、安次嶺も。
「俺の御心のままに?そんなもの、どうでもいいさ。お前たちは、俺の食事を作っているわけじゃない。間違えるな!皇帝陛下、皇妃殿下、皇太子殿下と皇太子妃殿下、皇孫殿下の御心のままに、だろう?」
「は、ははっ」
「それを忘れたから、うちの食事が食べたいなどと、母上が仰ったのではないのか?」
「はっ。仰る通りにございます。誠に、面目次第もございません」
「父上も、うちの結婚式の際に出た甘酢の肉団子を気に入っていたことを知っているか?」
「い、いえ。不勉強にて、申し訳なく……」
「そういうことだ」
「ははっ」
「帰るぞ、成人」
もう終わり、と緋色が立ち上がった。うん、という間に抱っこされてしまう。ちょっと疲れたから、これでいっか。
あ、そうだ。一つ終わっていない。
「安次嶺、緋色にちゃんと謝ってない」
びくっ、と安次嶺の肩が揺れた。
「そうだったか」
「そう」
「どうでもいいけどな」
「だめ」
こういうのは、ちゃんとしないと駄目って緋椀が言ってた。子どもの見可がね、してはいけないことをうっかりした時に、またかって見逃しちゃ駄目なんだって。たくさんの失敗があっても、一つずつ対処しないと駄目だって言ってたよ。そうでないと、それがしてはいけないことだって分からないまま、大人になってしまうかもしれないから、って。
「謝罪を」
「こ、此の度は、誠に、申し訳ございませんでした……」
安次嶺が膝をついて、深く深く頭を下げた。
よし。
「緋色を大事にしない人は、許せない。でも、謝ったから今日は終わりにする」
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