【完結】人形と皇子

かずえ

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第七章 冠婚葬祭

152 それぞれの誓い  成人

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 神主さんが棒を振って、何かおまじないをとなえている。なんだっけ?祝詞のりとだっけ?神様の言葉だからよく分からない。これで神様に報告してくれているんだから、俺たちには分からなくて当たり前か。分からない方がありがたい感じがする。
 俺と緋色ひいろは前に結婚の儀式をやっているから、もうしなくていい。だから、お客さんと一緒に後ろから見ている。
 俺たち以外の三組が並んで頭を少し下げて、神主さんが神様に報告し終わるのを待っていた。少し高い台を設えたから、神主さんは皆の上から白い紙を付けた棒をさらさらと振る。その後ろに神様の祭壇も作った。俺たちの時も離宮に作ってたなあ。神様はいつもは神社に住んでるけど、祭壇を作って呼んだら来てくれるものらしい。報告だけだから来てくれるんなら問題ないね。神様、来てくれてありがとう。
 祝詞のりとが済んだら、巫女さんが三人出てきて、それぞれの赤い盃にお酒を注いだ。このお酒も神様のまじないが入っている特別なお酒。お神酒みきに決まった手順で口を付けておしまい。
 後は誓いだ。

「今日のき日に神の御前みまえで結婚の令を行います。私共は互いに二度と離れず、助け合い睦まじく暮らすことを誓います。幾久しく見守りください」

 半助はんすけ壱臣いちおみは、もう二度と離れないことを誓った。

「今日のき日に神の御前みまえで結婚の令を行います。私共は、互いを誰より大切に思い愛し、苦楽を共にし、明るい家庭を築きあげてゆくことを誓います。幾久しく見守りください」

 作治さくじ緋椀ひまりは、お互いを誰より大切にして愛することを誓った。

「今日のき日に神の御前みまえで結婚の令を行います。私共は互いを助け合い、より長く共に過ごせるように努力することを誓います。幾久しく見守りください」

 睦峯むつみねさいは、助け合って長生きすることを誓った。
 儀式が終わる。
 会場のあちこちで、ほうと息を吐く音が聞こえてからぱちぱちと拍手が鳴った。
 俺は、俺と緋色ひいろの誓いを思い出していた。初めての誓いは神様の前じゃ無くて、怪我をして布団で寝転んでいる時だったけれど。
 簡単に死んでは駄目だ。生きることを諦めては駄目だ、と緋色ひいろは言った。俺はうんって答えて、それが誓いになった。
 そうだ。そうだった。
 俺もさいと同じで長生きを誓ったんだった。
 死んだ後、神様の所で緋色ひいろを待っていようって思ったことが知られたら、神様にも緋色ひいろにも怒られてしまう。
 忘れちゃいけない。
 ごめんね、神様。間違えてた。
 俺は、緋色ひいろと一緒にたくさん生きます。少しでもたくさん緋色ひいろといます。
 誓います。
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