666 / 1,325
第六章 家族と暮らす
101 むかしばなし 成人
しおりを挟む
「一口カステラ、村次が作ったばっかりなの」
「そうなの?これ、村次の発案なの?」
「はつあん?」
「村次が一人で考えて作ってるの?」
「うん」
「へええ。凄いのね」
「うん!」
村次は凄いんだ。習った料理も美味しく作れるし、新しい料理まで作っちゃう。
くすくすと赤璃さまが笑った。
「?」
「なるが、とても誇らしそうでいいな、と思ったの」
「??」
「村次のこと、大好きなのね」
「うん、好き」
「いいね」
「うん」
あれ?さっき何か聞こうと思ってたんだけど何だったっけ?
「なるはさ、好きじゃない人っている?」
好きじゃない人?
「嫌いな人じゃなく?」
「あー、うん。嫌いな人でもいいわよ」
「赤虎」
「即答ね……」
だって俺、あの時本当に死にたくなかった。赤虎に拐われた時。緋色と、死んでは駄目だ、生きることを諦めては駄目だと約束したばかりだったんだ。赤虎がその約束を破らせるようなことをしてきたから、約束を守らなくちゃと必死だった。
俺がどこか痛いと緋色も痛い顔をする。緋色がその顔をすると俺は悲しい。俺が悲しいと緋色も悲しい顔をする。そんなのは駄目。緋色が悲しいと俺もまた悲しくなるんだから。そうして、悲しいが止まらなくなるんだよ。そんなのは良くない。最悪。そう、最悪だ。一番悪いってこと。
そしてその後、赤虎は謝っていない。俺にも緋色にも。
だから、ごめんねって言って、いいよって言うのもできない。いいよって言えないかもしれないけど。ごめんねって言ってもらわないと、いいよって言えるかどうかも分からないじゃん。
「あー、うん。だいぶ嫌いなのね」
俺の方を見ながら少し考えてた赤璃さまが言う。
「うん」
「朱実は?」
朱実殿下?
うーん。
「朱実殿下も銃で撃ってきたけど当たらなかったし、緋色にごめんねって言ったから別に嫌いじゃない」
好きでもないけど。
あ、じゃあ好きじゃない人って朱実殿下?
他に思いつかないし。
「え?なに?なんて?」
「え、と。だから、嫌いじゃないよ。好きでもないけど」
「そうじゃなくて、その前」
「緋色にごめんねって言った。赤虎は言ってない」
「同じ、ことを……したの?」
「同じこと?」
「赤虎、と……」
「銃で撃ったこと?でも当たってないよ。避けた」
「なんて、こと……」
赤璃さまは、手を口元に当てて少し震えた。
当たってないから大丈夫なんだけど。
「そうなの?これ、村次の発案なの?」
「はつあん?」
「村次が一人で考えて作ってるの?」
「うん」
「へええ。凄いのね」
「うん!」
村次は凄いんだ。習った料理も美味しく作れるし、新しい料理まで作っちゃう。
くすくすと赤璃さまが笑った。
「?」
「なるが、とても誇らしそうでいいな、と思ったの」
「??」
「村次のこと、大好きなのね」
「うん、好き」
「いいね」
「うん」
あれ?さっき何か聞こうと思ってたんだけど何だったっけ?
「なるはさ、好きじゃない人っている?」
好きじゃない人?
「嫌いな人じゃなく?」
「あー、うん。嫌いな人でもいいわよ」
「赤虎」
「即答ね……」
だって俺、あの時本当に死にたくなかった。赤虎に拐われた時。緋色と、死んでは駄目だ、生きることを諦めては駄目だと約束したばかりだったんだ。赤虎がその約束を破らせるようなことをしてきたから、約束を守らなくちゃと必死だった。
俺がどこか痛いと緋色も痛い顔をする。緋色がその顔をすると俺は悲しい。俺が悲しいと緋色も悲しい顔をする。そんなのは駄目。緋色が悲しいと俺もまた悲しくなるんだから。そうして、悲しいが止まらなくなるんだよ。そんなのは良くない。最悪。そう、最悪だ。一番悪いってこと。
そしてその後、赤虎は謝っていない。俺にも緋色にも。
だから、ごめんねって言って、いいよって言うのもできない。いいよって言えないかもしれないけど。ごめんねって言ってもらわないと、いいよって言えるかどうかも分からないじゃん。
「あー、うん。だいぶ嫌いなのね」
俺の方を見ながら少し考えてた赤璃さまが言う。
「うん」
「朱実は?」
朱実殿下?
うーん。
「朱実殿下も銃で撃ってきたけど当たらなかったし、緋色にごめんねって言ったから別に嫌いじゃない」
好きでもないけど。
あ、じゃあ好きじゃない人って朱実殿下?
他に思いつかないし。
「え?なに?なんて?」
「え、と。だから、嫌いじゃないよ。好きでもないけど」
「そうじゃなくて、その前」
「緋色にごめんねって言った。赤虎は言ってない」
「同じ、ことを……したの?」
「同じこと?」
「赤虎、と……」
「銃で撃ったこと?でも当たってないよ。避けた」
「なんて、こと……」
赤璃さまは、手を口元に当てて少し震えた。
当たってないから大丈夫なんだけど。
1,278
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる