【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第六章 家族と暮らす

101 むかしばなし  成人

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「一口カステラ、村次むらつぐが作ったばっかりなの」
「そうなの?これ、村次むらつぐの発案なの?」
「はつあん?」
村次むらつぐが一人で考えて作ってるの?」
「うん」
「へええ。凄いのね」
「うん!」

 村次むらつぐは凄いんだ。習った料理も美味しく作れるし、新しい料理まで作っちゃう。
 くすくすと赤璃あかりさまが笑った。

「?」
「なるが、とても誇らしそうでいいな、と思ったの」
「??」
村次むらつぐのこと、大好きなのね」
「うん、好き」
「いいね」
「うん」

 あれ?さっき何か聞こうと思ってたんだけど何だったっけ?

「なるはさ、好きじゃない人っている?」

 好きじゃない人?

「嫌いな人じゃなく?」
「あー、うん。嫌いな人でもいいわよ」
赤虎せきとら
「即答ね……」

 だって俺、あの時本当に死にたくなかった。赤虎せきとらに拐われた時。緋色ひいろと、死んでは駄目だ、生きることを諦めては駄目だと約束したばかりだったんだ。赤虎せきとらがその約束を破らせるようなことをしてきたから、約束を守らなくちゃと必死だった。
 俺がどこか痛いと緋色ひいろも痛い顔をする。緋色ひいろがその顔をすると俺は悲しい。俺が悲しいと緋色ひいろも悲しい顔をする。そんなのは駄目。緋色ひいろが悲しいと俺もまた悲しくなるんだから。そうして、悲しいが止まらなくなるんだよ。そんなのは良くない。最悪。そう、最悪だ。一番悪いってこと。
 そしてその後、赤虎せきとらは謝っていない。俺にも緋色ひいろにも。
 だから、ごめんねって言って、いいよって言うのもできない。いいよって言えないかもしれないけど。ごめんねって言ってもらわないと、いいよって言えるかどうかも分からないじゃん。

「あー、うん。だいぶ嫌いなのね」

 俺の方を見ながら少し考えてた赤璃あかりさまが言う。
 
「うん」
朱実あけみは?」

 朱実あけみ殿下?
 うーん。

朱実あけみ殿下も銃で撃ってきたけど当たらなかったし、緋色ひいろにごめんねって言ったから別に嫌いじゃない」

 好きでもないけど。
 あ、じゃあ好きじゃない人って朱実あけみ殿下?
 他に思いつかないし。

「え?なに?なんて?」
「え、と。だから、嫌いじゃないよ。好きでもないけど」
「そうじゃなくて、その前」
緋色ひいろにごめんねって言った。赤虎せきとらは言ってない」
「同じ、ことを……したの?」
「同じこと?」
赤虎せきとら、と……」
「銃で撃ったこと?でも当たってないよ。避けた」
「なんて、こと……」

 赤璃あかりさまは、手を口元に当てて少し震えた。
 当たってないから大丈夫なんだけど。
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