【完結】人形と皇子

かずえ

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第六章 家族と暮らす

100 素朴な疑問  成人

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「きゃー。なる、ありがと」
「うん」

 赤璃あかりさまにお土産の一口カステラを差し出すと、ものすごく綺麗な顔で笑った。
 お手紙がきてびっくりしたよ。
 一口カステラが食べてみたいです、と書いてあって、どうしたらいい?と緋色ひいろに見せてみたら、一口カステラを持って城に来いってことだろ、と嫌そうな顔をした。

「先触れの反対みたいな?」

 今から行きますってのが先触れなら、来てください、は何になるのかな?

「別に放っておけばいい」
「え?でも一口カステラ食べたいって」

 まだ朝だし、今から壱臣いちおみ村次むらつぐに聞いてみたら間に合うんじゃない?一口カステラは、村次むらつぐがいれば作れるはず。ああ、まあ、広末ひろすえ壱臣いちおみもすごい料理人だから、一回見たら大体作っちゃうけど。
 赤璃あかりさまが食べたいならお願いしてこよう。
 そして、お願いしたらあっさり作ってくれたので、昼ごはんを食べてから持ってきた。あ、もちろん、先触れは一口カステラを作れるって分かってすぐに出したよ。ふふ、俺も何だか慣れてきた。

「ふわふわで丁度いい大きさだわ。食べやすいのね」

 赤璃あかりさまは、俺が持ってきた紙袋をすぐに開けて一つ口に入れる。
 おやつの時間にはまだ早いよ。お昼ご飯食べたばかりじゃない?

「美味しい!これ、なる好きでしょ。優しい甘さだわ」
「うん、大好き」
「食べる?」
「無理」
「え?」
「妃殿下。成人なるひと殿下は昼食を召し上がられたばかりでございましょう。更に何か召し上がるには、少々時間をおいた方がよろしいかと」

 侍女の朝桐あさぎりが、珍しく口を開く。並んで座る俺と赤璃あかりさまの前にお茶を置いて、俺のお茶の蓋を外した。

「ありがと」
「はい」

 笑ってくれた。朝桐あさぎりはいつも俺のお茶を冷ましてくれるから好き。
 机の真ん中に大きな丸いお皿を置いて、赤璃あかりさまから紙袋を受け取ると中の一口カステラを綺麗に盛りつける。

「そ、そうね。私もさっきお昼ご飯を食べたのだったわ。でも今、まだ食べられるわ……」
「それは妃殿下が授乳されておられるから」
「ああ、そうね。朱音あかねに取られた分をまた、体が補充しようとしてるのかもね」

 そうかあ。朱音あかね殿下は赤璃あかりさまのおっぱいを飲むから、赤璃あかりさまは二人分のご飯を食べないと足りないんだね。

「いっぱい食べて!足りなかったら取りに行ってくるよ」
「ありがとー、なる。でも朱音あかねは小さいから食べ過ぎないように気をつけないとね」
「うん」

 喜んでもらえて良かった。
 そういえば俺たち、最近会ってないしお話もしてなかったけど、何で新しいお菓子の一口カステラのこと知ってるの?
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